年収ランキングの常連「キーエンス」とはどんな会社なのか

年収ランキングの常連「キーエンス」とはどんな会社なのか

  • MONEY PLUS | くらしの経済メディア
  • 更新日:2019/06/25

毎月25日は、多くの企業や組織が給与の支払日に設定している日です。他人の懐事情は誰しも気になるもの。6月3日配信の本欄でも、有価証券報告書記載の従業員の年間平均給与を、東京商工リサーチが集計・発表した、2018年の上場企業の平均年収最新ランキングにどんな会社が登場しているかを取り上げました。

ランキングトップはM&AコンサルのGCAで、平均給与は2,063万円でした。しかし実は、このランキングには登場していないけれど、GCAよりも平均給与が高い会社があります。キーエンスという会社です。

東京商工リサーチのランキングから漏れてしまったのは、上場会社のうち2011年決算から連続して比較可能な企業を集計対象とし、なおかつ変則決算の会社を除外したから。キーエンスは頻繁に決算期を変更しているのですが、この点は後で触れるとして、同社の2018年3月期の年間平均給与はGCAを上回る2,110万円でした。

他の平均年収ランキングでは上位の常連となっている、このキーエンスという会社。いったいどんな会社で、どうしてこんなに高額の給与を従業員に支払うことができるのでしょうか。

平均給与は31年間で5.6倍に

キーエンスは、工場設備の自動化に使われるFA用センサーなどを製造販売している会社で、2013年辺りから驚異的な成長を遂げています。取締役名誉会長の滝崎武光氏が1972年に創業。1974年に法人化し、その10年後に上場を果たしています。

上場後初の決算となった1988年3月期の年間平均給与は372万円でした。同じ時期に高給で有名だった東京放送(TBS)は746万円、三菱商事は464万円でしたから、さほど高い水準ではありませんでした。

しかしその後じわじわと上昇、2001年3月期に1,000万円の大台に到達します。翌2002年3月期はいったん989万円に後退しますが、2003年3月期以降は毎年増え続け、2008年3月期は1,397万円。あと一息で1,400万円に達するというところでリーマンショックが起きました。

No image

この影響を半年間受けた2009年3月期は1,135万円、年間を通して影響を受けた2010年3月期は1,008万円に減ります。しかし、2011年3月期からは再び増加に転じます。2012年以降は破竹の勢いで伸び、2018年3月期についに2,000万円に到達しました。

それでは2019年3月期はというと、公表されたばかりの2019年3月期の有価証券報告書をチェックしてみたところ、前年を上回る2,110万円でした。しかも従業員の平均年齢は35.8歳です。上場初年度は27.8歳でしたので、31年間で8歳しか上昇していません。

営業利益率は驚異の5割超

このような高給が実現している根源は、いうまでもなく「業績」です。リーマンショックの影響を2010年3月期まで受けた同社の業績ですが、2011年3月期以降は右肩上がりの成長が続いています。

No image

2019年3月期の売上高は5,870億円、営業利益は3,178億円。2010年3月期比で、売上高は4.3倍、営業利益は5.7倍です。規模の大きい会社を買収したわけではなく、あくまで内部成長のみでここまで成長しているのです。

特に伸びが大きいのは海外です。この間に売上高は国内が2.8倍になっているのに対し、海外は7.9倍になっています。

驚くのは、その営業利益率の高さです。この会社は営業利益率が5割を超えているのです。上場時点で4割弱でしたので、もともと高水準ではあったのですが、この31年間は30%台半ばまで落ちたことも何度かあり、近年で5割を超えたのは2015年3月期からです。

この会社はファブレス(自社工場を持たず、外部の会社に製造を委託)とはいえメーカー。三菱電機が6.4%、日立製作所が5.4%、トヨタ自動車が8.1%ですから、メーカーでこの水準というのは驚異的です。

その秘訣は、販売を代理店に任せず、自社の営業マンが顧客の生産現場に入り込み、顧客の話を直に聞きながら売り込んでいく、いわばコンサル営業にあるようです。

決算期を何度も変更してきたワケ

さて、冒頭で宿題にしていた頻繁な決算期の変更についてですが、目的は節税です。この会社、実は決算期末が3月31日ではなく、3月20日なのです。

法人税は毎年、何らかの改正があります。改正になった場合の適用は、基本的に「●●●●年4月1日以降に始まる決算期」からになります。

3月末決算の会社なら、次の決算期は4月1日から始まりますので、次の事業年度からすぐに適用になります。一方、3月20日が決算期末だと、決算期が始まる日がわずか11日早いだけで、減税の恩典を受けるのが1期遅くなってしまうのです。

このため、減税があった年は最初3ヵ月(3月21日~6月20日)でいったん決算を締めるのです。そうすると、その先の9ヵ月間は減税の恩典を享受できます。同じ理由で2000年3月期、2005年3月期、2013年3月期、2016年3月期、2017年3月期は、最初3ヵ月と後半9ヵ月に決算期を分けています。

それなら決算期末を20ではなく31日にすれば良いと思うのですが、それをしないのがこの会社の面白いところです。

投資家への対峙姿勢は?

実はこの会社、時価総額が7兆円以上もあって、全上場会社の中でもトップ10の常連なのに、少し前まで証券アナリストが「頑固3兄弟」と呼んで揶揄する会社でした。アナリストの取材にも応じず、株主との対話にまったく関心を示さない3大企業の1つに数えられていたのです。

少し前までは、ホームページも株主との対話姿勢が感じられない作りでした。適時開示や有価証券報告書はいっさい掲載せず、決算短信も直近四半期のものしか掲載していませんでした。

有価証券報告書はEDINET(金融商品取引法に基づく開示書類に関する電子開示システム)を検索すれば過去5年分が出ますし、適時開示も東京証券取引所のホームページで見られますが、リンクを張ることすらしていませんでした。

さすがに今はごく普通の上場会社のホームページになっていますが、有価証券報告書の素っ気なさは相変わらずです。総ページは62ページ、「対処すべき課題」はわずか12行、記載内容も長年ほとんど一緒です。毎年、年間数十億円規模の設備投資を実施しているのに、設備投資計画の欄も白紙にしています。

業績予想もいっさい出さず、決算説明会も開かず、説明資料も作らないという点も変わっていません。

個人投資家にとっての投資妙味

もっともこれだけ成長していると、どんなに投資家に背を向けていようとも、投資家のほうから群がってくるわけで、株価は高水準です。

業績予想を出していないので、予想PER(株価収益率)は算定できませんが、PBR(株価純資産倍率)は4.95倍です。最低購入単価は6月21日終値ベースで681万円もします。1単元買うだけでこれだけのお金が必要なのです。

No image

取引所はバラバラだった単元株数を100株に統一する方針を掲げ、実施してきました。そこには、発注ミスを減らすことと、最低購入代金を個人投資家でも手が届く程度の価格にする、という2つの目的がありました。

キーエンスは売買単位を1995年4月に早々と1,000株単位から100株単位に引き下げています。100株単位にしてもこの水準ですから、ごく普通の個人にはまず買えません。1,000株単位の時代は、1単元買うのに1,000万円以上必要でした。

配当性向も30%以上がスタンダードになっているというのに、この会社はわずか10%。それでも投資家が、それもプロの投資家が群がってくる。それが上場会社中、最高の給与水準の会社なのです。

(伊藤歩)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
ペットボトルをコップ付き水筒に デザインは水族館の人気者たち
レゴやウイスキーは高く転売できる――小銭を稼げる小ネタ集
浸透しても継続利用者が増えないQRコード決済の課題
躍進するれいわ新選組、その公約「消費税廃止」がかなり現実的なワケ
あなたは本当の数字を知らない なぜ「アベノミクス」で景気回復が実感できないのか
  • このエントリーをはてなブックマークに追加