トヨタとマツダの新工場、米業界の大変化を象徴

トヨタとマツダの新工場、米業界の大変化を象徴

  • WSJ日本版
  • 更新日:2018/01/12
No image
No image

トヨタ自動車がマツダと共同で建設する工場の立地にアラバマ州を選んだことは、米国の自動車製造業界の大きな変化を示している。外国の自動車メーカーが製造する自動車やトラックの台数は、近くデトロイトの米ビッグスリーを上回る見通しだ。

自動車情報サイトのワーズオート・ドット・コムは、外国の自動車メーカーが2018年1-3月期(第1四半期)に米国で生産する自動車やトラックが140万台となり、初めて米メーカーに並ぶと予想している。米メーカーに10万台超(約10%)リードされていた前年同期からは大きな飛躍だ。

ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の米ビッグスリーによる生産の支配は向こう数年で完全に消え去るとみられる。トヨタやメルセデス・ベンツといった競合他社が米国で労働者を増やし、新たな工場を建設しているからだ。

既に、ビッグスリーの販売台数は海外勢を下回っている。17年の販売シェアは44%に低下した。

この変化を勢いづかせているのは数々の要因だ。日本などの外国企業――労働組合や数十年にわたる金融債務といった重荷がなく、米各州が提示するインセンティブにひかれている――は市場シェアを拡大し、リスク軽減のための現地生産を進める機会を見いだしている。一方、売上高よりも利益を優先するフォード、GM、クライスラーの経営陣は、利幅の薄い小型車やセダンの生産を縮小し、より高価なトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)に軸足を移している。

デトロイトは全米の自動車労働者の多くを擁していたため、かつては相当な政治力があったが、その影響力は失われつつある。一方で州議員や連邦議員が検討している法律は、燃費、自動運転車、1世紀にわたる自動車販売・購入のあり方に影響を及ぼしそうだ。

ドナルド・トランプ大統領は米国での製造をますます強く訴えている。16年の大統領選と政権発足初期には、自動車メーカーは米国での生産を増やし、メキシコからの大量の自動車輸入を後退させるようトランプ氏に何度も迫られた。

トヨタとマツダが10日の記者会見で16億ドル(約1780億円)の投資を発表する前にも、アジアや欧州の自動車メーカーは米南部州で大規模な拡大に乗り出している。トランプ大統領の就任後に全く新しい自動車工場の建設が発表されるのは今回が初めてだ。例えばスウェーデンのボルボ・カーは、サウスカロライナ州の工場(11億ドル規模)の始動を年内に予定している。一方、ドイツのBMWとダイムラーは同地域の既存工場を拡張している。

テネシー、ジョージア、テキサスといった州はここ数十年に、日本やドイツや韓国の自動車メーカーを誘致してきた。税優遇策の提示を惜しまないことや相対的に安い労働力、全米自動車労働組合(UAW)をはじめとする労組の脅威がないことが魅力だ。トヨタの豊田章男社長は10日、アラバマで、「もうひとつのメード・イン・アメリカのサクセスストーリー」を生み出す下地を同州が整えたと述べた。ただ、優遇措置の具体的な金額は明らかにされていない。

外国メーカーが言明した直近4件の計画だけでも、21年までに1万人の雇用が生まれ、米国の生産が数十万台増えるとみられる。日産自動車や他の外国自動車メーカーは、米国での拠点拡大を検討していることを明らかにしている。中国やインドの大手など数社は、5年以内に米国で自動車製造を開始できると述べている。

国際投資機構(OII)ナンシー・マクラーノン理事長は10日、「自動車や他部門の再興をけん引しているのは、(外国企業を米国に)引きつける能力だ」と述べた。金融危機以降、自動車製造部門では数十万の雇用が生まれたが、その多くは海外自動車メーカーや部品サプライヤーによるものだ。

ラストベルトに工場を新設する時代は去った

一方でデトロイトのメーカーは高い人件費と余剰生産能力が長年の足かせとなっており、今後数年にコストの低い国への依存を強めるとみられる。メーカー幹部は米国の労働力からの過度な影響を避けようとしている。GMとフォード・モーターは、以前は中西部の工場にほぼ頼りきっていたが、中国やメキシコ、さらにはインドからの輸入車の割合を高めつつある。

GM、フォード、クライスラーは米国の一部工場を改修すると言明したが、幹部らは国内自動車メーカーがラストベルト(さびついた工業地帯)などに工場を新設する時代は去ったと話す。

同3社は、売れ行きの鈍いセダンや小型車の代わりに市場シェア拡大を見込めるトラックやSUVを生産するため、一部工場の設備を刷新しつつある。だがトヨタやドイツのメーカーなどが計画している数十万台の増産を相殺するのは難しいだろう。工場の稼働停止はもったいないものの、国内自動車メーカーは目先の増益や在庫抑制のために生産を縮小してきた。

外国勢による投資の多くは長年にわたっており、自動車の製造と販売から稼げる場所として米市場はいまだに有望であると業界幹部が考えていることの証しである。

ボルボの米国事業の元責任者レックス・カースメーカーズ氏は昨年、「当社は米国で60年操業している。われわれの販売店や顧客に向けて米国が当社の市場だという明確なシグナルを発する必要がある」と述べた。このインタビューが行われた場所で、ボルボは近く自動車の製造を開始する。

昨年6月、BMWは21年までにサウスカロライナの自社工場で1000人の雇用を創出する計画を示した。同工場でのSUV増産に向けた6億ドルの投資の一環だ。この工場で生産するSUVは世界に出荷される。

BMWのハラルド・クルーガー取締役会会長は「米国は当社にとって依然として世界で2番目に大きな市場だ。将来的に伸びる一方だとみられるため、米国に工場を持つことが当社の戦略だ」と述べた。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
せっかく仮想通貨で儲かったのに、確定申告で一文無しに!?
「デス・バイ・アマゾン」で次に消える日本企業の名前
総崩れの「仮想通貨」マーケットで何が起きているのか
「アパレルが死んだ」とはどういう意味か
ホンダの顔、新型『シビック』が降臨!日米で「OTOKOMAE」な走りを味わってきた
  • このエントリーをはてなブックマークに追加