NPB最長記録の育成生活7年 ホークス戦力外の25歳が歩み始めた第2の人生

NPB最長記録の育成生活7年 ホークス戦力外の25歳が歩み始めた第2の人生

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  • 更新日:2018/02/15
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ソフトバンクの球団職員として第2の人生をスタートさせた伊藤大智郎【写真:福谷佑介】

昨年戦力外で球団職員に、伊藤大智郎が過ごす“いつもと違うキャンプ”

新たな一歩を踏み出した。ソフトバンクが2月1日から春季キャンプを張る生目の杜運動公園。第3クール初日、このキャンプで最多となる3万2600人のファンが訪れた2月11日の日曜日、ファンの応対に追われながら、忙しなく動き回る1人の男性の姿がキャンプ地にあった。

伊藤大智郎、25歳。2010年の育成ドラフト3位で誉高校から入団し、2011年からソフトバンクホークスのユニホームに袖を通した右サイドハンドの投手だったが、昨オフに戦力外通告を受けた。右肘のトミー・ジョン手術からの回復途上にあって、トライアウトなども受けられず、現役を引退。ソフトバンクの球団職員として採用され、12月半ばからは会社員として第2の人生をスタートさせた。

伊藤氏が所属するのは、球団の事業統括本部事業運営本部のファンサービス部。ファンクラブの運営などを行う部署で、球団とファンを繋ぐ役割を果たす部署である。この日、伊藤氏は職員として入社後初めてファンの前に立った。ファンクラブ入会ブースに立ち、新規入会を希望するファンの入会手続きを行う仕事だった。昨季まで共に汗を流したチームメートたちを横目に、これまでとは違う立場でキャンプ地に立っていた。

「もちろん複雑な気持ちはありますけど、野球と関わることが出来ているので、この仕事に就けて良かったな、と今は思えます。最初は戸惑いましたけど、最後の方になったら入会手続きも出来たので自信になりましたね」

これまでと違って見えるキャンプ地の景色。チームメートたちのグラウンド上での声や、練習に励む姿を見ながら、こう語って、顔をほころばせた。

10年ドラフトは千賀や甲斐と同期、戦力外に「1週間くらい何も出来なくて…」

2011年に入団してから、計7シーズンをホークスでプレーした。ドラフトの同期には2位で柳田悠岐、そして同じ育成で4位に千賀滉大、5位に牧原大成、6位が甲斐拓也。千賀、甲斐と目覚ましいほどの飛躍を遂げた2人がいる一方で、伊藤の背番号は「127」のままだった。目標としていた支配下契約には、最後まで手が届かなかった。7年間の育成生活は、それまでのNPBでの育成最長契約だった。

2017年10月下旬。1本の電話がかかってきた。球団事務所へ来るように言われ、翌日、来季の契約を更新しないことを告げられた。戦力外通告だった。「1週間くらい何も出来なくて、ボーッとしていましたね」。この先どうしようか……。しばらく茫然自失としていた。

球団からは職員としてホークスに留まることも打診された。ただ、現役選手としての未練も、もちろんある。「あと1年どっかで挑戦したいな、という思いもありました」。手術を受けた右肘は回復しつつある。キャッチボールも20メートルほどの距離まで投げられるようになった。続けるか、続けまいか。悩んだ。

現役生活に終止符を打ち、ソフトバンクホークスの社員として再出発することを決断したのは、家族の存在が大きかった。結婚し、子供もいる。「家族がいるんで、家族のためにはどうにかしないといけないと。自分に残ったものは野球しかない、その野球に関われる仕事があるのならば、それに携わりたいと思うようになりました」。悩んだ末に、球団職員となることを決断した。

ソフトバンクは昨季、日本人10選手が戦力外などで退団。そのうち現役を退いた5人全員をソフトバンク本社やソフトバンクホークス球団の社員として雇用した。選手のセカンドキャリアを球団がサポートしようとしているからだ。球団はこの戦力外となった選手に向けて2日間の研修も開催。初日は言葉遣いなどのビジネスマナー、2日目は基本的なパソコンの使い方を教え込んだ。

これまで知らなかった会社員の世界

その内の1人が伊藤氏で「相当ありがたいことだと思います。自分が野球以外の仕事に就いて生きていけるのかな、という不安もあったんです。でも、ここにいる人たちはみなさんが僕のことを知ってくれていて、ある程度僕の能力がいまどれくらいかというのも理解してくれている。そういう面でもありがたいです。感謝しかないです」と、球団からの配慮に感謝を示す。

会社員として働きだしてから、もうすぐ2か月が経つ。「正直パソコンは本当にしんどいですね。会社員は本当にしんどいよ、と言われる意味が少し分かりました。メンタル的にしんどいところはありますよね。グラウンドだと体力的にしんどいところはありますけど。生活リズムも全然変わりますよね。9時半から18時までが定時なんですけど、残業とかも全然あるので、働いている時間は野球やっている時に比べると遥かに長いので。会社員の人たちって、こんなに働いているのか、と思いました」。これまで知らなかった会社員の世界を知り、少なからず驚きもあったという。

「いまファンサービス部というところにいて、ファンクラブ会とかの関心を持っていただければいいな、と思いますね。僕がキッカケになって入会してもらえると、球団にも貢献出来るのかな、と思いますね」と話す伊藤氏。初めてファンの前に立ち、働いた11日は、多くのファンの来場もあって、過去に例を見ないほどの新規入会者がいたという。そして、伊藤氏も、数人のファンから声をかけられて激励を受けた。

「ファンの人が声かけてくれたりして、それはやっぱり嬉しいですね。もうファンクラブに入っててコアなファンだったんですけどね(笑)」

この先、これまでの現役生活よりも遥かに長い年月が待っている。球団のため、そして愛する家族のため――。第2の人生はまだ始まったばかりだ。

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