日本株を爆買い中の外国人投資家は、日本経済の先をこう見ている

日本株を爆買い中の外国人投資家は、日本経済の先をこう見ている

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/12/07
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いま日本株を買っている外国人は、中長期的な儲けを目指すプレイヤーたち。彼らが長い目で見て、「買い」と判断したニッポンの未来図とはどんなものか。投資先リストからその全貌が見えてきた。

不動産はまだ上がっていく

史上初の16連騰を記録した勢いそのまま、11月に入っても日本株市場は「沸騰相場」が続いている。11月1日からして日経平均株価は前日比408円高の2万2420円へと急騰し、さっそく約21年ぶりの高値を記録して見せた。

言うまでもなく、この大相場を牽引しているのは日本株市場の全取引の7割を占める外国人投資家たち。

9月の第3週まで9週連続で日本株を売り越していた彼らが、日本株の買いに急遽転じたのには明確な理由がある。ケイ・アセット代表の平野憲一氏が言う。

「外国人投資家が日本株買いに転じたのは、日本の景気回復を確信し始めたのが大きい。彼らが買いを本格化させたのは9月末からですが、これは正社員の有効求人倍率の回復が確実になってきた時期と重なるんです。

正社員の有効求人倍率が1倍を超えたのは今夏が初でしたが、その後も順調に推移し、9月には1.02倍と統計を取り始めて以来過去最高値を叩き出した。

ここ数年は一部の大手企業社員や非正規雇用者の賃金だけが上がってきたが、いよいよ日本全国の正社員にまで賃金上昇が波及し始めた。それに気が付いた外国人投資家たちが、『賃上げ↑本物の景気回復』を信じて、積極的な買いに入った」

外国人投資家による直近4週間での買い越し額は約1兆7000億円。まさに「爆買い」だが、そんな外国人投資家たちが10月から買っていた「株リスト」が本誌独自調査で判明した。

今回本誌では、アメリカや欧州を拠点にする著名機関投資家たちが買った数十銘柄がずらりと並ぶそのリストを、金融・経済のプロフェッショナルとともに分析。彼らが日本経済の行く先をどう予測しているかがまざまざと見えてきた――。

まず間違いなく言えるのは、外国人投資家たちは「日本の不動産の活況」を見越しているということだ。

「さきほど言ったように賃上げから景気回復が本格化してくれば、いよいよインフレが始まる。当然、そうなれば不動産価格は上昇していく。

しかも、株高局面ではこれまで不動産を買い控えていた人がインフレを実感するようになり、いまのうちに買っておこうという心理変化も起きる。

外国人投資家が買い増している日神不動産やTHEグローバルは、都心部でリーズナブルなマンションや戸建てを手掛ける会社。まさにいままで買い控えていた層が不動産市場に入ってくるシナリオを見越してのことでしょう。

ゼネコンの安藤ハザマに加えて、エレベーターを手掛けるフジテックが入っているのも、五輪特需後もマンションなどの不動産需要が続くと見られている証拠です」(前出・平野氏)

ようやく消費も上向く

外国人投資家の投資先にはREIT(不動産投資信託)も多く、投資先リストにはケネディクス商業リート投資法人、星野リゾート・リート投資法人などが入っている。

これも外国人投資家が不動産価格の上昇を見越しているためだが、実はそれだけではない。

「彼らが日本ではこれから消費が『大復活』すると見ていることがうかがえる」と指摘するのは、ちばぎん証券顧問の安藤富士男氏だ。

「というのも、ケネディクス商業リート投資法人は、ショッピングセンター、スーパーや、スポーツジム、家電量販店など生活密着型の商業施設に投資するREIT。

いま日本では消費不況で商業施設は苦戦が続くと見られていますが、外国人の見方は違う。これからは景気の波が本格化して消費が盛り上がり、こうした商業施設こそ大復活すると見ているわけです。

ホテル、旅館などの観光施設に投資する星野リゾート・リート投資法人が買われているのも、訪日観光客によるインバウンド消費がさらに盛り上がることを視野に入れているからでしょう。

実際、今年は訪日客消費が初めて年間4兆円を超える勢いで、政府目標である2020年までに8兆円も現実味を帯びてきた」

リストにはライオン、大塚家具など、内需銘柄も目に付く。まさに歯ブラシから高級家具まで、旺盛な消費が日本全国で巻き起こる未来予想図が外国人投資家の頭の中に描かれている形である。

そうして景気が上向けば、次には積極経営に転じた日本企業の設備投資が盛り上がる――。そんな経済の好循環を見越した投資先も多く見当たる。

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「たとえば投資リストにはネットワンシステムズが入っていますが、これは好景気で資金的な余裕ができる日本企業が、デジタル時代に対応したIT投資や『働き方改革』に対応した人材関連投資を活性化させていくと見ているからでしょう。

ネットワンシステムズはまさにITシステム構築や在宅勤務支援サービスなどを手掛けている。

同じく千代田化工建設がリストに入っているのも、攻めの経営に打って出る日本企業が海外を中心に工場やプラントなどへの設備投資を増やしていくと考えているから」(前出・安藤氏)

意外なのは、これまで設備投資を主導してきた自動車・電機メーカーはリストに入っていないこと。むしろ旺盛な投資でこれからの日本経済を牽引すると見られているのは、「半導体企業」だ。SBI証券客員マーケットアナリストの藤本誠之氏は言う。

「今後、世界的に自動運転化やIoT化(モノのインターネット化)が進展する中で、必ず使用される半導体のニーズは高まっていく。また、これから爆発的に広がるであろう仮想通貨市場でも、その技術的土台には半導体が使われている。

そうして世界的に半導体需要が沸騰する過程で、外国人投資家は技術力の高い日本メーカーがその中心的存在になると見ている。

たとえばルネサスエレクトロニクスは、自動車、通信機器、家電の制御などに使われるマイコンと言われる半導体で高い競争力を持ち、特に自動車向けマイコンでは世界トップシェア。

また、アドバンテストは半導体検査装置が主力で、同じく世界トップの会社です」

言い方を換えれば、日本経済の主役はこれまではトヨタなどの完成品メーカーだったが、これからは「黒子」だった部品、素材メーカーに取って代わられる――。外国人たちはそんな未来の業界地図を見通しているのだ。

モノづくりが復活する

マーケットバンク代表の岡山憲史氏も言う。

「これから世界的に電気自動車(EV)の覇権争いが始まりますが、すでに日本の完成品メーカーは出遅れが鮮明になっています。

一方で、EV時代に必要とされる素材分野では、圧倒的な技術力を持つ日本企業に脚光が当たり始めている。

たとえば東芝機械はEVに欠かせないリチウムイオン電池向けのセパレーター(絶縁材)製造装置を作っているが、ここへきて世界中から需要が急増しているため、急遽増産を検討し始めた。そのセパレーターで世界首位の旭化成も、2020年までに生産能力を2倍に引き上げる方針です」

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ほかにも、外国人投資家の買いリストには、カネカ、積水樹脂、日本精工などが並ぶ。

「ベアリング国内トップの日本精工はアジアでも絶好調で、売上高の海外比率は約65%。2019年度に売上高1兆円を目指す強気な経営計画を出したばかりです。

カネカや積水樹脂の製品もすでに自動車、住宅、社会インフラまで幅広い産業で使われていて、ともに中期経営計画でアジアのみならず、欧州や米州でも積極的に攻めていく方針を掲げている。

いまは日本のみならず、アジアも欧米も景気が上向いてきている。こうした部品・素材企業が、国内はもちろんアジアを中心とした海外の需要も取っていく。その好業績が日本経済を牽引し、景気回復のエンジンになっていく。外国人投資家たちはそう洞察しているのでしょう」(経済・金融アナリストの津田栄氏)

日本の新聞やテレビは「日の丸製造業」の悲観論ばかりを報じるが、むしろ外国人投資家たちは、キラキラと輝くモノづくりの将来像を見通しているのである。

一方、外国人がこの10月に「売っていたリスト」も判明している。

「ただ、その売られた銘柄を見ると大きく値上がりしたから売却したという『利食い売り』がほとんど。本当に懸念していればすべて売り払っているはずですが、そうではなくて一部だけ売っている。

つまり、外国人投資家は全体としては日本株を大量に買い、大きく値上がりした銘柄については一部だけ利益確定しながら儲けているというイメージです。彼らはまだまだ強気なんです」(前出・藤本氏)

儲けやすい相場になる

逆に言えば、懸念は「北朝鮮有事」くらい。

「実際、石川製作所と豊和工業が買われていますが、石川製作所は機雷を扱う会社で、豊和工業は国内唯一の小銃メーカー。外国人投資家は今後も北朝鮮との緊張関係が続くと懸念し、こうした銘柄を『リスクヘッジ』で保有しているのでしょう」(前出・安藤氏)

その有事さえ回避できれば、ほかには目立ったリスクは見当たらない。日本経済はそのままグイグイと成長軌道に乗っていく――。そう考えられているわけだ。

「外国人投資家たちは、日本銀行の中曽宏副総裁が10月5日のロンドンでの講演で、『日本経済の実情を不必要なまでに控えめに、すなわち悲観的に見るべきではない』と語ったことにも注目していました。

中曽氏は日本企業が人手不足への対応を加速させることが将来的な賃上げにつながると語り、外国人たちも脱デフレ期待を一層高めた。

投資リストには、冷凍食品、日本酒など多くの食品関連会社を傘下に持つヨシムラ・フードHD、道路舗装工事の佐藤渡辺など知る人ぞ知る銘柄も並ぶ。

これから脱デフレが日本全国で起こり、大企業から中小企業まで、全国民が景気回復を実感するようになると見られている」(前出・岡山氏)

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すでに10月末から本格化してきた企業の中間決算発表は、増益ラッシュの様相を呈してきた。当然、株価もまだまだ上がる公算大だ。株式評論家の渡辺久芳氏も言う。

「外国人投資家たちが買っている銘柄リストに挙がっているのは業績好調な企業が中心です。いよいよ日本株市場が金融緩和策に頼る『金融相場』から、企業業績と好景気に裏付けられた『業績相場』に移ったことがはっきりしたといえます。

今後1年から1年半は業績相場が続き、その間に日経平均株価が3万円に到達する可能性は高いでしょう。

業績相場というのは当然、業績のいい銘柄が買われる相場なので、個人でも値上がりする銘柄を探すのが比較的簡単。業績予想がいい銘柄を素直に買えば儲かるので、その意味でも今後1年くらいは個人投資家が大きく資産を増やせるチャンスと言っていいでしょう」

投資をする人にも、しない人にも嬉しい話、かもしれない。

「週刊現代」2017年11月18日号より

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