夏のメダリストも驚く、複合・渡部暁斗の「五輪でも動じない」メンタル

夏のメダリストも驚く、複合・渡部暁斗の「五輪でも動じない」メンタル

  • Sportiva
  • 更新日:2018/02/14

私の子供の頃からの夢はオリンピックの金メダルだった。

近づくことはできても、遂にその夢は達成できなかった。だからなのか、金メダルを目指す選手の考え方、プロセス、課題へのアプローチなど、その選手の成長の過程に興味がある。

私は2月3日に2018ノルディック複合ワールドカップ(W杯)白馬大会、個人第13戦に渡部暁斗選手を取材した。

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W杯白馬大会で優勝後、記者の質問に答える渡部暁斗

この日、前半のジャンプは風が安定せず、何度も競技が中断し、スタート位置が変わる不安定なコンディションだった。そんな状況での38番目、最後に飛ぶ渡部選手は、本人がいいタイミングで風が吹いてくれたと言うように、130.5mの大ジャンプ。ライバルのヤン・シュミット選手(ノルウェー)に1分以上の差をつけ、後半のクロスカントリーに入る。

そしてクロスカントリーでも盤石の走りで優勝。最後は地元の声援を背に、悠々とゴールした。これでW杯を4連勝(翌日の第14戦は3位)。W杯年間総合優勝も視野に入れて、平昌五輪でも金メダルを目指す。

レース後、渡部選手と話すことができた。好調の秘密はどこにあるのか……。

4年前から大きく変えたのはジャンプだという。課題だったジャンプを大きく改善するため、まずは肉体改造から取り組み、体の使い方を修正してきた。それが結果的にクロスカントリーの走りにも好影響を与え、総合力が上がったと渡部選手は語る。

今シーズンの渡部選手は前半のジャンプでトップに立ち、そのまま後半のクロスカントリーで逃げ切るのが必勝パターンだ。平昌五輪のメダル争いも前半のジャンプがカギとなるだろう。ノルディック複合はジャンプ次第で後半の展開は大きく変わる。

ノルディック複合、いやジャンプ自体を初めて取材して、私が驚いたのは、こんなにも風の影響を大きく受ける競技なのか、ということだった。

競泳は極めて”安定した”環境で競技が行なわれる。屋外プールで競技することもあるが、五輪や世界選手権は原則、屋内プールで行なうことが決まっている。さらに国際大会の行なわれるようなプールは今やどこも泳ぎやすい。水が軟水、硬水で違いがあるなどという話もあるが、ハッキリ言ってあんまり関係ない。

競泳競技の結果を左右するものは、選手がその日まで積み重ね、磨いてきた技術、体力と最後にそれをレースで出し切れるかどうかのメンタルだけだ。そのため、競泳は番狂わせの少ない競技だと思う。

一方のノルディック複合は、ジャンプ時の風がその成績に大きく影響し、ジャンプの結果如何では試合の流れが変わる。

なかば「運」といえるものに自分の4年間の努力が左右されることを、選手たちはどう自分の中で消化しているのだろうと思った。

さらに、私は金メダルを目指すと公言している渡部選手が驚くほど自然体でいることにも驚いた。そのことを問うと淡々と語ってくれた。

「金メダルが獲れなくても、死ぬわけではありません。今回ダメだったら、また4年後を目指せばいい。この4年間、最大限の準備をしてきたつもりですが、金メダルが獲れるかどうかはやってみなければわからない。そこには一種の諦めもあって、諦めているからこそ、すべてを懸けてチャレンジできるんです」

また、平昌五輪後にW杯シリーズが続くことにも触れ、「平昌五輪はW杯とは別物と考えて挑むが、平昌五輪後もまだ大会はあるぞ、という気持ちで五輪に臨みたい」と話した。

かつて2012年ロンドン五輪で金メダルを目指していた時、私は「すべてを懸けて、そこに挑む」という感じだった。五輪以降の大会なんてとても考えられなかった。

渡部選手のコメントからは、どんなに頑張っても自然の環境には逆らえない、つまり風には抗(あらが)えず、偶発的なものが競技へ影響することを受け入れ、そこに一種の諦めともいえる気持ちがあって、だからこそ、それ以外のところでベストを尽くし挑んでいくという考えが伝わってきた。

ノルディック複合という競技で、シーズンを通して世界中で戦うことをライフワークとしている渡部選手の「平昌五輪がすべてではない」という価値観は新鮮だった。W杯を戦いながら、その途中に4年に1度の大舞台、平昌五輪があると考えられるところに、自然体でいられるしなやかさあるのかな、と私は推測した。

彼の安定したメンタルを感じたコメントが、もうひとつあった。

記者がしきりに、五輪前最後の実戦、地元白馬での大会で、地元の歓声に特別なものを感じましたか?と尋ねた質問に渡部選手はこう答えた。

「白馬が特別ということはなく、大会時の歓声はどの国でも嬉しいものです」

渡部選手の最初の登場は2月14日だ。

彼は本番までに、まだまだ状態は上げられると話した。ジャンプもクロスカントリーも細かい動作をビデオでチェックし、精度を上げていきたいという。すべてを懸けて挑む平昌五輪。風も歓声も味方につけて、自然体のまま金メダルまで辿り着いてほしい。

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