「ウジ虫」が負傷した兵士を救うために戦争地帯へ投入される見込み

「ウジ虫」が負傷した兵士を救うために戦争地帯へ投入される見込み

  • GIGAZINE
  • 更新日:2019/01/12
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byThe U.S. Army

ハエの幼虫であるウジ虫といえば「不潔」「生ゴミや死体にたかる」といったイメージを持たれており、人々から忌避されがちです。しかし、そんな悪いイメージの強いウジ虫をシリアやイエメンなどの戦争地帯に送り込み、「傷口をきれいにするために」利用する試みが進行中だと報じられています。

Maggots to be sent to war zones by government to clean wounds and save limbs

https://www.telegraph.co.uk/news/2019/01/10/maggots-sent-war-zones-government-clean-wounds-save-limbs/

実はウジ虫を利用して傷口をきれいにする治療法は新しいものではなく、「マゴットセラピー」とも呼ばれる古くはアボリジニの人々も使っていた伝統的な治療法。ウジ虫の多くはヒトにたかった場合、死んでいる組織だけを食べて生きた組織は食べないため、腐ってしまう可能性のある死んだ部分だけを除去することができます。

薬品などの物資が限られている戦場においては、ウジ虫を使って傷口を清潔に保つことで感染症を予防し、感染症によって死亡したり手足を切断したりするリスクを軽減することができるとのこと。第一次世界大戦をはじめとする近代戦争においても、「傷口にウジ虫がたかっている方が傷の治りが早い」ということが経験的に知られていました。

1928年になるとアメリカの科学者らによってウジ虫による傷口の治療が有効であると実証され、1940年代に至るまで北米地域を中心にマゴットセラピーが行われてきました。さまざまな抗生物質が生み出された結果としてマゴットセラピーの重要性は低下しましたが、今日の先進国の病院でもウジ虫を使った傷口の治療が行われています。

実際に傷口へウジ虫を投入し、マゴットセラピーを行っている様子を撮影した画像がこれ。クリックすることでモザイクが外れた画像が表示されますが、虫や傷口を見るのが苦手な人は注意してください。

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先進国の病院でも活躍するウジ虫ですが、今のところ戦争や紛争が続く戦場で意図的に投入されたことはないとのこと。イギリス政府は医療用のウジ虫の実用化にむけてのプロジェクトを進め、戦地や紛争が起こっている地帯で安全かつ清潔なウジ虫を繁殖させる野外病院用の実験室を開発するとしました。

マゴットセラピーによる治療中の様子は一見おぞましいものですが、効果は非常にめざましいものがあります。実験室で無菌状態のまま繁殖して飼育されたウジ虫は、直接または小さな袋に入れた状態で傷口へと投入されます。ウジ虫は壊死(えし)した組織を食べて取り除くだけでなく、唾液から抗菌物質が分泌されるため、細菌の繁殖を防いで感染症から守ってくれるとのこと。

ヤケドから床ずれ、銃創まであらゆるケガの治療にウジ虫は有効であり、十分な医療体制が整っていない戦地において傷が重症化するのを防ぎます。オーストラリアのグリフィス大学の研究者でこのプロジェクトに携わるFrank Stadler博士は、「人々を健康に保つことは、時によって命を守ること以上に重要です。たとえば親が戦争の後遺症で働けなくなったり子どもが障害者になったりすれば、家族が大きな悪影響を受けます」と述べ、ウジ虫による治療が多くの人々を救うだろうと考えています。

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byCarsten ten Brink

もちろんマゴットセラピーでは感染症の危険性を減らすため、ウジ虫は再利用されることなく破棄されます。Stadler氏によると、2020年までに戦場の野戦病院において医療用の清潔なウジ虫を繁殖可能にする、封じ込め型実験室のプロトタイプを作りたいとのこと。プロトタイプ実験室におけるウジ虫の繁殖が成功すれば、1日あたり250もの傷をウジ虫によって治療できるそうです。

野戦病院で活用可能な実験室は1つあたり10万ドル(約1080万円)の費用がかかると見られており、兵士が負傷する危険の高いシリアや南スーダンでの投入が望まれています。Stadler氏は「医薬品や現場における手術の費用等を考えれば、ウジ虫の繁殖室の費用はそれほど高くありません」と話しました。

2021年の終わりまでには、Stadler氏の研究チームは「隔離された環境にあっても自動で繁殖を行うスターターキット」を作るとしており、面倒な作業なしでも安全なウジ虫を安定的に生産できる体制を整えたいとしています。

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byrawpixel.com

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