混浴スキャンダルの創業者が、保育事業に復帰画策ってマジ?

混浴スキャンダルの創業者が、保育事業に復帰画策ってマジ?

  • アゴラ
  • 更新日:2017/11/14
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約10年ぶりに考えさせられた「会社は誰のもの?」問題

新聞記者時代の20代の頃、当時はビジネスに興味関心もまったくなかった私にとって、「会社は誰のものか?」という命題を初めて突きつけられたのが、ライブドアによるニッポン放送買収劇であり、村上ファンドによる敵対的買収だった。

2006年6月、31歳の誕生日を迎えるひと月前に本社社会部に配属された私は、村上ファンド事件の取材班に組み入れられ、村上氏逮捕と前後しての約3週間、村上氏と接点のあった経営者らの取材に日夜奔走した。

しかし、当時の私は「会社は誰のものか?」と問われても、ビジネスの知見がほぼ皆無だったので「会社が誰のものって言われても、社長以下、社員とかのものなんじゃないの?」という庶民感覚しか持ち合わせていなかった。

もちろん、その問いに対する正解は「会社は株主のもの」だ。市場原理と離れたところで仕事をしていたとはいえ、経営の基本中の基本を知らなかった若かりし頃の自分の無学ぶりは黒歴史でしかないが、その後、運動部記者時代にパ・リーグの改革派経営者らの考えに触れることでビジネス的な考えに刺激を受けて自分自身が変わり始める。

やがて記者から異業種のマーケティングの世界に転職。企業広報やネット選挙コンサルの業務経験を積み、現在もアゴラ編集長の傍ら、零細のPR会社を経営するようになった身としては、10年前の自分とは打って変わって「会社は株主のもの」という常識がようやく腹落ちするようになった。

自分ごとの前置きが長くなった。実はこのニュースを聞いて、「会社は誰のものか?」という問いに対して「株主のもの」と反射的に答えるには久々に複雑な心境に陥った。ここ数か月、経済メディアで取り上げられている保育事業者「JPホールディングス」(JPHD)のお家騒動だ。

保育最大手のJP、重大セクハラで辞任の元社長が「復帰」画策…社内で3千人規模の反対運動(ビジネスジャーナル)

ありきたりなテレビドラマ級?JPHDのお家騒動に唖然

JPHDの筆頭株主で、2年前に経営を離れた創業者の山口洋氏が会社側に臨時株主総会を提案し、事実上、現経営陣の解任につながる要求をつきつけている。そして、異様なのは、山口氏が社長を退任した当時の理由に「体調不良」とされていたのが、実は、社内調査でセクハラ行為があり、山口氏も調査に認めていたと会社側が公表してお家騒動のボルテージが一気に上がった。

それだけでも、驚くことだが、さらに22日の臨時株主総会を翌週に控えたこのタイミングで、週刊ポストが、創業者のセクハラ疑惑の「証拠」として、社長時代に浴衣姿の2人の女性社員と一緒に露天風呂で“混浴”している様子を撮った写真を掲載している。

仰天!東証一部上場企業株主総会で創業者のセクハラを告発│NEWSポストセブン

山口氏は、ポストの取材に対し、「入浴を強要した事実はない」とセクハラの意図を否定しているが、現在、山口氏と会社側で繰り広げられている委任状争奪戦の合間に、このような“あからさま”なネタが飛び出してきた事態が、ありきたりなテレビドラマを彷彿とさせる展開で唖然としている。

百歩、いや百万歩譲って、山口氏がいう通り、女性社員とノリで「仲良く」混浴していたとしよう。ここでポイントなのは、社長という優越的地位にある人間が、女性社員とともに社会的にあられもない行為をし、その様子をまた撮られていたこと自体は取材に認めていることだ。そして、セクハラの意図がなかったにせよ、取材に対して悪びれも無く「何が問題なのか分からない」とコメントしている。会社側の意見書を見るまでも無く、社会的常識として、このような人物が、保育事業の元締めとして相応しかったのか、適格性が問われるのではないか。

たしかに会社は山口氏のものかもしれないが…

今回の臨時総会の開催要求について、山口氏のスポークスマンは、経営復帰の意図はなく、株主として自らの意向に沿った会社統治を実行するためと説明している模様だが(出典:ビジネスジャーナル)、恥も外聞もなく、経営の関与を強めようとする執念は尋常には思えない。

しかし、ここで厄介なのは山口氏は筆頭株主でもあることだ。経営学の授業で「JPHDが誰のものか?」という問いを出せば、会社はたしかに「山口氏のもの」なのだ。

それでも何か今回ばかりは釈然としない。そう思って色々と調べていたら、かつて山口氏が在籍した証券会社の系列シンクタンクに興味深いレポートがあった。ずばり「会社は誰のものか?」と題したそれは、ロンドン駐在の研究員が2015年、イングランド銀行のチーフエコノミストでもあるアンディ・ハルデーン理事の見解を中心に、従来の企業統治に対する異論を模索したものだ。

大和総研「会社は誰のものか?新たなコーポレート・ガバナンスモデルの模索」

株主重視の企業統治スタイル。米英では、長く成功を修めてきたものの、経営陣の莫大な報酬や、反倫理的行動、短期的利益追求などの弊害が顕在化してきた。レポートでは、株主重視のモデルについて「絶対視する必要はない」というハルデーン氏の考えを次のように集約している。

株主を企業の中心に置くガバナンスモデルに対する課題は増えつつある。これらを克服するための取り組みも徐々に行われてはいるが、対症療法に過ぎない。根本的な対応をするには、 モデル自体の見直しは避けては通れない。そのためには、企業が従業員や顧客、取引先といったより広範な利害関係者に目を向け、企業利益をより平等に分配するように会社法の改正をするべきではないか。(下線部は筆者)

アメリカほどではないにせよ、ヨーロッパの資本主義の“本場”であるイギリスですら、「会社は誰のものか?」に対する見直しを模索する動きがあるわけだ。ましてや、英米のように、株主の権利をむき出しに行使することへの抵抗感が強い日本社会において、山口氏がセクハラ醜聞を抱えたまま正面突破で事実上の“経営復帰”をしたところで、子どもを預ける親御さんをはじめとする顧客や社会に共感を持たれるのだろうか。

親御さんたちは株主の判断をどう見るか?

会社側の発表では、すでにほとんどの施設長を含む、3,000人を超える大半の従業員が創業者の経営復帰に反対の署名を出しているという。

もちろん、それでも目下の委任状争奪戦を経て、一般株主が臨時株主総会で山口氏側を支持する可能性もあるが、まだ常識人であろう現経営陣と比べ、どちらに舵取りを任せたほうが企業のブランド価値を落とさず、成長への道筋をより描くことができるのだろうか?ほかの株主たちの判断がどう出るかもまた社会的に注視されそうだ。ニュースを見ている人のなかには当然、施設に子どもを預ける親御さんたちもいる。

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