徴用工問題:個人の慰謝料請求権、韓国政府に補償義務があることを韓国政府が隠蔽

徴用工問題:個人の慰謝料請求権、韓国政府に補償義務があることを韓国政府が隠蔽

  • Business Journal
  • 更新日:2019/11/29
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「Getty Images」より

韓国のメディアは26日、元徴用工問題の解決策として文喜相国会議長が提案した法案の詳細を伝えた。

法案は、すでに運用されている元徴用工支援財団を「記憶人権財団」に改組して、日韓両国の政府や企業、個人が自発的に寄付する基金とし、そこから元徴用工や遺族など1500人に対して慰謝料などの名目で計約3000億ウォン(約280億円)を支給するという内容だ。

さらに、慰安婦問題をめぐって2015年末に締結された日韓合意に基づいて日本政府が「和解・癒やし財団」に拠出した10億円の残金も基金に組み入れ、併せて元慰安婦支援も行うとしている。

文議長は今後、関係者らの意見を聴取した上で法案に反映し、早ければ年内にも発議する方針と報じられている。

昨今の日韓関係悪化の発端は、この元徴用工問題だ。2012年に李明博大統領(当時)が竹島に上陸したときから悪化したとの見方もあるが、その後は両国が関係改善に向けて歩み寄る姿も見せていた。だが、18年10月に韓国大法院が元徴用工や遺族の起こした損害賠償請求を認める判決を出して以降、加速度的に関係が悪化した。

この裁判を受けて日本政府は、1965年に締結された日韓請求権協定に反するとして、判決に従う必要がないとの見解を示し、各企業も支払いを拒否。これに対し原告側は対抗措置として、該当する日本企業の韓国内の資産を差し押さえ、それらを売却して賠償金に充当するための手続きを進めている。

そして今年8月、日本政府は輸出手続きで優遇対象とする「ホワイト国」から韓国を除外した。これは、安全保障上の問題であって徴用工問題に対する対抗処置ではないというのが日本政府の見解だが、韓国はそうは受け取っていない。

ホワイト国除外への対抗措置として同月、韓国は軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定した。歴史問題が経済問題、そして軍事問題にまで発展した格好だ。GSOMIAについては、結局、条件付きで延長されたが、問題は何も解決していない。

韓国は、GSOMIAを今後も継続していくためには日本が韓国を再度ホワイト国に戻すことが条件としている。一方の日本は、韓国が国際法違反の状態を解消すること、つまり元徴用工問題で日本側に賠償を命じた判決の無効化を求めている。

こうしてみると、それぞれは別問題ではなく、明らかに密接に関連していることがわかる。日韓関係を改善するためには、元徴用工の問題の解決が不可欠であり、両国ともそれを認識している。だからこそ、文議長は苦肉の策ともいえる提案をしているのだ。

韓国内でも反発の声

日本側でも、超党派でつくる日韓議員連盟の河村建夫幹事長が、文議長の提案について「解決策はこれだけだ」と評価しているという。さらに河村氏は安倍晋三首相に、「文議長がいろいろ努力している。韓国側も『日韓請求権協定の根幹を崩さない』と言っている」と、この法案の趣旨を説明したところ、安倍首相は「きちんと日韓の間の約束を守ったものなら進めばいい」と静観する姿勢を示したと報じられている。

日本政府は、元徴用工らの請求権は日韓請求権協定で「最終的に解決された」との立場であり、韓国側で問題解決を図るべきとの考えを崩していない。そのため、文議長の提案に日本側が表立って協力することはないだろう。

日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長も25日の記者会見で、文議長の提案について、「経済界が直接、お金を使うことは一切ない」と語り、日本の経済界としてはこの問題に立ち入らない姿勢を示した。

さらに、この法案は、韓国の元徴用工支援者側の反発も予想される。というのも、支援者たちは日本政府による謝罪と賠償を最重視しているため、単に慰謝料が支払われるだけでは解決に至らないとみられるからだ。

しかも、韓国内の一部の弁護士からは、文議長が提案する基金による慰謝料支払いによって元徴用工問題を解決するならば、日本の政府と企業に対する個人の請求権が消滅することを認めてしまうとの懸念が指摘されている。

日韓請求権協定では、韓国が日本から借款を受けることで請求権をすべて放棄し、歴史問題を包括的に解決しようとした。しかし後年、国家が個人請求権を消滅させることはできないとの見解では、両国が一致している。ただし、この個人の請求権を韓国政府が補償するというのが、この協定の肝となる部分だ。韓国政府は、その補償を一切行わず、国民にも知らせていないため、問題がこじれる原因となっている。

だが、法律で基金の設立を認可し、「和解・癒やし財団」の残高をその基金に組み入れるならば、日韓合意によって慰安婦問題が“最終的かつ不可逆的に解決”したことを国内で認めたことになるとの指摘があがっているのだ。韓国内では、朴槿恵政府時代に締結された日韓合意を無効であるとして撤回するように動いている。そのため、残高を基金に組み入れることには強い反発が出るだろう。

韓国のネット上でも、「日本の責任ある反省と謝罪を受けないといけないのに、なぜ被害者に慰謝料を支払えば解決すると思っているのか」「文大統領の提案は売国行為だ」「被害者への心からの謝罪と歴史認識のあらためがなければ真の解決はない」といった批判的な声が殺到している。

日韓どちらの国でも、国民からは好意的に受け入れられていない様子の文議長の提案だが、“政治的に”進められていくのか、注意深く見守っていきたい。

(文=姜英順/ジャーナリスト)

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