独裁政権が始まったベネズエラ。国民の生活は窮乏し、隣国への移民が絶えない

独裁政権が始まったベネズエラ。国民の生活は窮乏し、隣国への移民が絶えない

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2017/08/15
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photo by alexandersr via pixabay(CC0 Public Domain)

7月30日に、多くのラテンアメリカ諸国が「民主政治を冒涜する」として投票結果を承認しない声明を出していたにも関わらず、強行に議員選挙を実施し、三権を超越した最高権力機関となる憲法制定議会が発足し、マドゥロ大統領の事実上の独裁体制が確立したベネズエラ。

そんなベネズエラだが、いまや庶民の生活は惨憺たる有様になっている。

現在の南米ベネズエラの悲惨な状態を正確に伝えている小谷孝子さんの手記がある。

彼女はベネズエラに38年在住されたが、現在のベネズエラの経済危機、治安の悪化そして物資不足などから遂に帰国を余儀なくされたという。(参照:https://venezuelainjapanese.com/2016/12/31/kodani/

彼女は手記の中で、<「国有化された生産工場は原料の輸入が出来ず製造不能に陥り、輸入品も市場から消え、未曽有の食糧難になった」>と伝えている。更に、彼女は<「日本の国土の約4倍に住む3千万人の国民の殆どが今、食物にも事欠くほどの極限状態に追い込まれている。赤子に与えるミルクもなく、お米やパスタのとぎ汁を与え、子供は腹を空かせて今日も泣き寝入る。幼児や病人用のおしめがあると聞いて早朝から何時間も並んでも手に入るとは限らない」><「ガンや糖尿病等全ての薬、風邪薬さえ見つからず、病人や怪我人で溢れる公共病院はレントゲンや各検査器具は壊れ殆ど使用不可能でシーツやガーゼさえない」>

以上は、彼女の手記のほんの一部である。筆者が彼女の手記に触れているのは、日本ではベネズエラの窮状を殆ど理解していないからである。しかも、これがベネズエラ全土で起きているという事態の深刻さである。

◆国民の8割近くが平均8キロ強も痩せ細った!

カルロス・アンドレス・ペレス元大統領の政権時に計画大臣を務めたリカルド・ハウスマンが現状のベネズエラについて『BBC Mundo』のインタビューに答えた一部を以下に抜粋しよう。(参照:「BBC」)

●米国を襲った経済恐慌(1929-1933)時、国民一人当たりの所得は28%減少したが、現在のベネズエラでは同所得は50%以上の減少をしている。
●2012年から2016年までOPECに加盟している国はどの国も経済成長している。唯一、逆に経済が後退したのはベネズエラだけである。その理由は指導者によるものである。
●2012年に比較して、2016年には輸入は75%減少しており、今年も減少を続けている。
●2016年11月のアンケートによると、74%の国民が平均8.6キロ体重が減った。
●2007年から2015年までで、農作物の生産は33%の減少。
●2005年の外国での債務は250億ドル(2兆7500億円)であったのが、現在1500億ドル(16兆5000億円)以上になっている。
●ベネズエラが世界で原油の埋蔵量が最大の国だというのを15年前に彼らは知らされた。しかし、2012年からベネズエラの原油生産量は増えるのではなく、逆に減少している。

現在のベネズエラは外貨を稼ぐのに、その96%は原油の輸出に依存している。しかし、原油価格の下落、そして負債を原油の提供で相殺しているような現状では外貨が増えることはない。今年に入ってからも、ボリバル通貨に対してドルレートは470%上昇しているのだ。即ち、ボリバル通貨は紙くず同然の価値でしかないというわけだ。(参照:「iProfesional」)

◆隣国に逃げ始めたベネズエラ人

その様な窮状にあって、ベネズエラから隣国のコロンビア、ブラジル、更にペルーやエクアドルに移民するベネズエラ人が絶えることがないという。仕事や食料を求めての移民である。その中でも、ベネズエラから移民が最も多いのはコロンビアである。ベネズエラの景気が好調の頃はコロンビアからベネズエラへ移民が流れていた。しかし、今はその逆で、一日に平均して2万5000人がベネズエラからコロンビアに入国しているという。

2000kmある両国の国境の中でも、移民の入国が集中しているのはコロンビアのククタ市とベネズエラのサン・アントニオ市を結ぶ国境である。両市の間には全長315mのシモン・ボリバル橋があり、その橋を歩いて渡れば国境を通過したことになる。コロンビアに入国して、そのまま滞在するのか、単に食料を買ってベネズエラに戻るのか不明とされている。(参照:「BBC」)

デニス・リベロさんは主人と子供一人連れて国境を通過。『BBC Mundo』の取材に彼女は<「食べたいものを食べて満足するためにコロンビアに行くのです」>と答えたという。

マドゥロ政権に対して抗議運動に参加していたヘススとマンブレの二人は<「エンジョイするための旅行ではない。逃げる為だ」>と告白した。

ガストン・サモンさんは<「ベネズエラでは昼食と夕食が食べれるかどうか分からないままに朝食を食べていた」>と語った。

ヘネシスさんは<「ベネズエラではコンドームもなくなっている」>と笑みを浮かべながら答えたという。(参照:「BBC」)

ネイダ・コントゥレラさんは<「私の子供の為に、これをやっているのです。ベネズエラでは子供の未来はありません」>と語って、人生の集約が僅かに二つのトランクにまとめられたことに悲しさを覚え、信じられないという表情を取材班に表わして、彼女の主人と二人の子供を連れて橋を渡った。最終目的地はパナマだという。

フィゲロアさんは15年間タクシーの運転手を勤めたそうだが、治安が悪くなり、経済危機となって廃業したという。<「夜は戒厳令を敷かれたような生活だった」>と語った。ベネズエラに乗り入れる外国のフライトを中断させている航空会社が多く、移動もバス、タクシー、歩行が主体になっているという。(参照:「Portfolio」)

サントス大統領の政権下にあるコロンビア政府は事態を重く見て、8月3日から20万人のベネズエラ人を対象に特別滞在許可証を発行しているという。この滞在許可証で<コロンビア全土で働くことや勉学をすることが可能になる>としている。(参照:「BBC」)

ペルー、エクアドル、ブラジルでもベネズエラからの移民に対して各政府は同様の対応をしているという。

その一方で、マドゥロ大統領は今も政権にしがみついている。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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