在来線なのに新幹線の車両で運行する博多南線のナゾ

在来線なのに新幹線の車両で運行する博多南線のナゾ

  • @DIME
  • 更新日:2017/08/13
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博多南線列車の行先表示器は、行先のみ表示。

JR西日本の在来線で、異色の路線がある。それは博多南線。山陽新幹線の回送列車が走る博多―博多総合車両所間、約9キロを在来線として旅客線化したものである。JRの特急では唯一列車愛称がないほか、史上最短距離の在来線特急となった。

博多南線の開業により、沿線から福岡市内中心部への所要時間が大幅に短縮されたほか、博多南駅周辺は町から街へ発展した。

■山陽新幹線の回送線から博多南線へ

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博多総合車両所で休む700系。

博多総合車両所は、山陽新幹線の全通に向けて、国鉄時代の1974年に開設された。車庫は福岡県春日市と筑紫郡那珂川町にまたがっており、事務所などは那珂川町に所在する。那珂川町にとっては“初の鉄道”なのに、回送列車しか運転されないので、誰も乗れない“遠い存在”だった。

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西鉄バス那珂川自動車営業所は、国道385号線沿いに所在する。

山陽新幹線全通後、福岡市の人口は増加の一途をたどるとともに、隣接の春日市と那珂川町もベッドタウンとして発展する。しかし、博多総合車両所周辺の主要交通機関は路線バスのみ。加えて通勤にマイカーを使う人が多く、国道385号線の交通量も増え、朝夕は渋滞が発生した。その時間帯の博多総合車両所周辺―福岡市中心部(博多・天神方面)間は、約1時間を要してしまう。

事態を重く見た福岡市、春日市、那珂川町は、1984年より国鉄に山陽新幹線回送列車の営業運転を要望した。それが実現すると、博多総合車両所周辺―福岡市中心部間の所要時間が大幅に短縮されるほか、周辺道路の渋滞も解消され、地域交通の改善につながるのだと。

しかし、国鉄は首をタテに振ることなく、1987年4月1日に分割民営化。山陽新幹線はJR西日本の管轄となり、福岡市、春日市、那珂川町は引き続き要望を続けたほか、1988年2月に「新幹線回送列車有料乗車実現期成会」を発足した。

JR西日本は検討を始め、ついに回送線の旅客線化を決定。運輸省(現・国土交通省)に旅客線開業に向けての手続きを済ませたあと、博多南駅の設置及び地上設備の改良を進めた。

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博多南駅の駅舎。

1990年4月1日に「博多南線」という在来線で、博多―博多南間(営業キロは8.5キロ)を開業。同区間を最高速度120km/hで運転し、約10分で結んだ。列車のほとんどは山陽新幹線に直通し、〈こだま〉として運行されるので、小倉方面への足も改善された。現在は一部の列車が、山陽新幹線内〈ひかり〉で運行されている。

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Yahoo!地図より。

博多南線の開業により、通勤通学の足が大幅に改善されただけではなく、春日市と那珂川町の人口も大幅に増加した。JR西日本も列車の増発、博多南駅のホームを一部拡幅、車両の8両編成統一(以前は4・6・8両編成の運転だった)により、輸送力の増強や安全性の向上を図っている。

■特定特急料金は開業時から変わらず

博多南線の特徴は、先述した在来線扱い、開業当時から全車自由席及び禁煙車(当時の新幹線や特急などは、禁煙車が少なかった)のほか、特定特急料金100円で乗車できること。例えば、博多―博多南間は運賃200円、特定特急料金100円の計300円だ。なお、グリーン車に乗る場合は、グリーン料金も加わる。

消費税率の改定で運賃は2度値上げされたが、特急料金は据え置き。税抜き価格を計算すると、消費税3%時は97.1円、5%時は95.2円、8%の現在は92.6円に“値下げ”されている。

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現在、博多南線の列車は、すべて8両編成で運転。

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博多南駅の左側は博多総合車両所、右側の高架は九州新幹線。

さて、博多から700系7000番代(レールスター車両)の博多南行きに乗ってみると、新幹線電車は“ゆっくり”走っている。JR西日本御自慢のサルーンシート(4~8号車の座席)にのんびりくつろぐ余裕もなく、終点へ。たった300円で快適な座席に坐れるのだから、沿線にお住まいの方がうらやましい。

■2018年10月1日、「那珂川町」から「那珂川市」へ

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駅ビルの敷地内に、バスターミナルを整備。博多南駅が春日市にあるのに対し、博多南駅停留所は那珂川町に設けられた。

博多南線の開業で那珂川町が大きく飛躍した。春日市とともに宅地開発が進められたほか、2004年には3階建ての駅ビルを開業し、“町から街”へ発展したのだ。開業当初の人口は約37,000人だったが、2016年2月26日に総務省から2015年国勢調査の速報値が発表され、ついに市制施行の最大要件となる5万人を超えた(2017年6月末時点の人口は50,260人)。博多南駅周辺を歩いても、市の雰囲気が感じられる。

これに伴い、那珂川町は2018年10月1日に「町」から「市」へ格上げされる予定だ。その大きな立役者のひとつは、「JR西日本」といえるだろう。

取材・文/岸田法眼

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