前原・枝野、両氏いずれも信用できないシンプルな理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/08/11

また、この人たちか…

民進党代表選に前原誠司元外相と枝野幸男前幹事長が出馬表明した。知名度はあるが、新味はない2人の一騎討ちになりそうだ。これで党を立て直し「自民党に代わる政権政党」になれるのだろうか。

2人の名前を聞いて、多くの人は「また、あの人か」と思ったに違いない。前原氏も枝野氏も民主党時代から「党の顔」といえる存在である。それだけ「古い民進党」を象徴している。

蓮舫代表の辞任を受けた今回の代表選は「解党的出直しのチャンス」と言ってもいいくらいではないのか。たとえば、若い論客の玉木雄一郎衆院議員あたりが代表になれば「変わった感」は出ただろう。だが、玉木氏は出馬を断念してしまった。

民進党が解体の危機にあるのは長島昭久衆院議員や藤末健三参院議員、細野豪志衆院議員らの相次ぐ離党が象徴している。外相経験者の松本剛明衆院議員が2015年に離党したあたりから、党にあいそをつかす動きが漂っていたが、ここへきて有力議員の離党が一段と加速した。

続投に意欲を見せていた蓮舫代表が一転して突如、辞任に追い込まれたのは、なぜだったか。幹事長の受け手がいなくなったからだ。舞台裏では有力議員が後任と目された幹事長候補に「受けないように」と説得して回っていた、とささやかれている。

党内の会議でも民進党解体を求める声が出ていたという。こうした動きを正面から受け止めるならば、新しい代表候補は「党が存続の危機にある」という認識が立候補の出発点でなければならないはずだ。

経済政策の世界標準を理解していない

ところが、枝野氏は出馬表明の会見で「国民に寄り添う本格政党として十分でなかった」と認めつつ、理由について「政権運営が至らなかったことに加えて地域基盤が十分でなかった」と述べている(https://thepage.jp/detail/20170808-00000007-wordleaf)。そんな支持基盤の話ではない。このあたりに有権者とのズレがある。

前原氏はといえば、同じく出馬表明の会見で「自公に代わる受け皿を作る。選択肢を作らなければならない」と述べたうえで「失敗したアベノミクスではなく、新たな国民の不安を取り除く。そういう政策でなければならない」と強調した(https://thepage.jp/detail/20170807-00000013-wordleaf)。そう、政策に問題があるのだ。

そこで政策を見よう。

まず経済政策である。枝野氏は「自民党政権は自己責任を強調して自由競争を過度にあおる政治を進めてきた」と批判したうえで、自分は「多様性を認め、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う」政治を目指すと強調した。

具体的に何をするのかといえば「介護職員や保育士、看護師などの賃金を底上げして可処分所得を押し上げ、そうした分野の雇用を増やす」。それが「低賃金労働者の賃金を上げて、消費の拡大につながる。これこそが民進党の経済対策、景気対策」と主張している。

介護職員や保育士、看護師の賃金引き上げは私も賛成だ。だが、それが「経済全体の消費拡大につながる」というのは大風呂敷である。それは個別サービス分野の話であって、マクロ政策ではない。

前原氏は何を言っているか。「(もはや)成長が前提ではなくなった。この20年間、国民の所得は減り、貯蓄は減り、貯蓄がない世帯が増えた。自己責任型社会では成り立たない」と述べたうえで、子育て支援の充実と実質的な教育無償化を進める考えを示した。一人あたり国民所得はたしかに民主党政権時代に低迷したが、安倍晋三政権になった2012年以降は4年連続で増加している(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/hitoriatarigdp20161222.pdf)。

枝野氏と前原氏に共通するのは、財政政策と金融政策、規制改革の組み合わせがマクロ経済政策の世界標準であることをまったく理解していない点である。両氏には主要国首脳会議(G7)や20カ国・地域首脳会議(G20)の共同声明を一度、しっかり熟読されることをおすすめする。

そこでは景気を回復させるために「財政、金融政策と規制改革を軸にした構造政策」を総動員する、と繰り返し語られている。これはアベノミクスそのものだ。アベノミクスとは実は名ばかりで、中身は世界で常識の政策体系である3本柱を語っているのだ。

私が出演しているテレビの『そこまで言って委員会NP』で最近、ご一緒した民進党議員は、財政破綻を避けるため消費増税と金融引き締めの必要性を訴えていた。これに蓮舫民進党が提出した特区廃止法案を加えると「増税+金融引き締め+規制改革断念」というマクロ政策になる。

そんなマクロ政策が本当に実行されたら、日本経済はデフレ脱却どころか再び、デフレに舞い戻るのは確実だ。G7やG20の共通認識とは真逆だから、日本は各国からも批判を浴びるだろう。枝野、前原両氏は会見で消費増税について明言を避け、態度をはっきりさせなかった。隠れ増税派でないことを願うばかりだ。

「9条改正」を認めていたのに

首を傾げざるをえないのは、憲法についての認識である。枝野氏は「立憲主義を破壊し、専守防衛を逸脱した集団的自衛権の一部行使容認はとうてい認めることはできない。これを前提にした9条の改訂は党綱領に反するものとして徹底的に戦う」と述べた。

だが、枝野氏は2013年9月、雑誌『文藝春秋』に寄稿した論文で個別的および集団的自衛権の行使に賛成し、かつ国連平和維持活動(PKO)への参加も容認する私案を発表している(https://www.cataloghouse.co.jp/yomimono/140104/index1.html)。

私案は戦争放棄や戦力の不保持を定めた9条を維持したうえで、新たに9条の2を追加し、その第1項で個別的自衛権を認めるとともに「内閣総理大臣は自衛権に基づく実力行使のための組織の最高指揮官」という言い方で自衛隊の合憲化にも踏み込んでいる。

続けて第2項では「他国の部隊」に急迫不正の武力攻撃がなされたときについても、自衛権の行使を認めた。つまり集団的自衛権の行使である。9条の3では国連PKOへの参加を認めたうえで、PKO活動が武力攻撃されたときは必要最小限の自衛措置をとることができるとした。これは「駆けつけ警護」の容認である。

わずか4年前、これほど明確に9条改正と自衛権の行使を認めておきながら、いまになってなぜ集団的自衛権の行使に反対するのか。「9条改訂に徹底的に戦う」などと言えるのか。自分自身が明言していた話なのだ。

現行9条を維持したうえで条文を追加し自衛隊の合憲化を唱えた枝野私案は、安倍晋三自民党総裁(首相)が5月3日に提案した改憲内容とも重なっている。個別的および集団的自衛権を明記する点は、むしろ安倍提案の先を行っているほどだ。

「流れ解散」が見えてきた

前原氏はどうかといえば、記者の質問に答える形で奇妙な説を唱えた。次のようなものだ。

「去年の代表選で憲法が交付された後に自衛隊ができた。したがって自衛隊というものを(憲法に)書き込むべきだという加憲の話をした。その考えに変化はない」「ただ、我々は安保法制に反対した。理由は憲法違反だからだ。したがって憲法違反の安保法制を前提として(憲法に)自衛隊を書くのは、憲法違反の安保法制を正当化させる意味をもつということだ。私は、その論にはまったく立たない」

安保法制を違憲と考えるのは、自衛隊を違憲とみているのも一因だろう。少なくとも日本共産党はそうだ。そうであるなら、自衛隊をしっかり合憲化すれば安保法制の根本問題はなくなる。

前原氏は自衛隊を憲法に書き込むべきだと思っているのだから、その根本問題を正したうえで、問題があるなら安保法制について議論すればいい。

前原氏はもともと憲法改正に賛成している。自身の2016年1月25日付ブログは「憲法改正は必要だ」と明言したうえで、こう記している(http://www.maehara21.com/kojitsu/憲法改正を考える/)。

「『平和を愛する諸国民の公正と信義に進退して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』という(前文)はあまりに現実離れし、思想主義にすぎないか」「少なくとも(9条の)第2項は『読んで字のごとく』に見直すべきではないかと思います」

「読んで字のごとく」の意味は不明だが、9条2項の見直しが必要と訴えている。本心は憲法改正に賛成なのに、反対の体を保つために苦肉の言い訳をしているように聞こえる。そういう姿勢が有権者に信頼されないのだ。

いずれにせよ、両氏のいずれかが民進党の代表になるのは間違いだろう。そんな民進党に国民の支持が集まるかどうか。失敗すれば、いよいよ「流れ解散」が現実味を帯びてくる。

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