村野作品なくなる?名建築の行方注目 北九州・福岡ひびき信金本店

村野作品なくなる?名建築の行方注目 北九州・福岡ひびき信金本店

  • 西日本新聞
  • 更新日:2020/10/18
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老朽化により解体された旧八幡図書館(2014年12月撮影)

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村野3点セットの地図

日本を代表する建築家、村野藤吾(1891~1984)が設計した福岡ひびき信用金庫本店(北九州市八幡東区)が、建物保存を巡って揺れている。八幡にゆかりがある村野は本店そばの旧八幡市民会館と旧八幡図書館も設計。「村野3点セット」は八幡の歴史を体現する建物として、建築を学ぶ学生や研究者らを引きつけてきたが、図書館は老朽化で4年前に解体された。同信金は分散していた本部機能を集約する方針に伴い、建物の存廃を検討。保存か建て替えか…。名建築の行方が注目される。

現在の佐賀県唐津市に生まれた村野は少年時代を八幡で過ごし、官営八幡製鉄所に勤めた経験がある。兵役後、建築家を志し、丹下健三らと並び戦後の日本を代表する建築家となった。

信金本店は、71年に前身の旧北九州八幡信用金庫の本店として完成。奥行きのあるホール棟を囲むように造られた建物は、皿倉山(標高622メートル)を背景に、重厚な茶色のたたずまいが存在感を示す。

びょうぶを思わせる構造に台形を傾けたような形の窓枠を採用し、一見すると「非合理」とも受け取れるが、北九州市立大建築デザイン学科の福田展淳教授は「デザインの一つ一つが唯一無二の存在となり、全体として人間的な温かみを生み出している」と評価する。

3点セットのうち、55年に完成した図書館の外壁には鉱滓(こうさい)を混ぜたれんがを、58年完成の市民会館には鉄さびを連想させる赤みがかったタイルを使用。いずれも鉄の街で育った村野の感性が生かされ、専門家に高く評価されていた。

市が2016年、老朽化を理由に図書館を解体したときには存続運動が起こった。市は財政難を理由に市民会館も取り壊す方針だったが、運動の高まりを受け、18年に保存を決めた。

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ひびき信金は、03年に5信金で合併して以来、本店を八幡に置いてきた。ただ、5信金の本店機能を集約するには手狭で、旧新北九州信金本店(小倉北区)に一部を分散。業務の効率性と組織の一体感を高めるため、数年内にも統合する方針だ。

ひびき信金本店の南側には市立の八幡東柔剣道場が立つ市有地が隣接している。同信金はこの土地を取得し、本店とセットで活用したい考え。組織内では過去に本店建て替え案も議論されており、市有地取得がかなわない場合、本店建物の保存は不透明になる。

6月に市へ要望書を出した井倉眞・ひびき信金理事長は「本部の集約は長年の悲願だ。本店の建物は研究者や学生の視察を何度も受け入れており、歴史的な価値は認識している。地域のためにも残したい」と話す。

福田教授は「村野氏の作品が集まるエリアは全国的にも珍しい。文化財として保存する意義は大きい」と強調している。

市は年内にも市有地売却の可否を判断する見通し。 (向井大豪、山下航)

西日本新聞

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