香港の水上レストラン無念の沈没 疑惑噴出でまさに伝説へ 「尋常ではない航路」報道も

香港の水上レストラン無念の沈没 疑惑噴出でまさに伝説へ 「尋常ではない航路」報道も

  • Hint-Pot
  • 更新日:2022/06/25
No image

在りし日の「ジャンボ」。岸から小舟に乗ってアプローチする趣向も人気だった【写真:Getty Images】

5月30日に香港外への移転が発表され、6月14日に“船出”した有名水上レストラン「ジャンボ・フローティング・レストラン(珍寶海鮮舫)」。香港の一時代を象徴する存在だっただけに、タグボートに牽引される姿が生中継されるなど大きな話題になった。しかし船主である運営企業は20日夜、まさかの「沈没」を発表。衝撃的な結末にファンが涙する一方、沈没までの経緯を追った地元メディアが「尋常ではない航路」を明らかにするなど、「ジャンボ」の伝説はまだまだ終わる気配がない。

◇ ◇ ◇

“休業”発表後は復活を目指したが…最後は海の藻屑に消える衝撃展開

その現実離れした外観などで多くのファンを持つ水上レストラン「ジャンボ・キングダム」。香港島の南、アバディーン(香港仔)の深湾に浮かぶ香港屈指の有名店は、英国王室のエリザベス女王や米俳優トム・クルーズといった世界のセレブを迎えたことでも知られている。

「ジャンボ」ファンを襲った最初の衝撃は、2020年3月の“休業”発表。後に“廃業”だったことが判明するが、ひとまずは地域再活性化策の一貫として非営利での運営方法を模索することになった。そうして2年の月日が流れ、次なる衝撃は「香港を離れる」という今年5月30日の発表だ。新たな“主人”が見つからず、さらに6月にライセンスが切れるため維持に必要な検査などを香港外で受ける必要があるという説明だった。

しかも休業の理由は、13年頃からの業績不振にコロナ禍が重なり、損失が1億香港ドル(約16億円)超に達したから。加えて、実は休業後も莫大な維持費がかかっており、新たな“主人”が見つからなかった理由もこの費用によるものが大きいという現状が明らかにされた。

この発表があったほぼ直後には、「ジャンボ」の裏手にあるキッチン船の浸水も判明。半分沈没しているその様子は、傷心のファンに追い討ちをかけた。また地元政治家からは「香港政府が資金援助すべき」などの意見もあったが、香港を離れる決定は変わらず。出発日の6月14日には複数の地元メディアが生中継を実施した他、日本を含む世界で大きく報じられたことは記憶に新しいだろう。

「きっと立派になって戻ってくる!」と、現地で多数のファンに見送られた「ジャンボ」。しかし20日夜には「南シナ海の西沙諸島付近での沈没」が発表されるという、これまたとんでもない衝撃展開になってしまった。

運営会社の発表を報じた各社の記事によると、悪天候に見舞われた18日午後から船内に水が入り、翌日に転覆。その後は完全に沈んでしまったという。幸いにも死傷者は出ていないが、1000メートル超という周辺海域の水深から船体の救出は困難とした。香港の一時代を象徴した華麗な存在は要するに、初めての“航海”で海の藻屑と消えてしまったのだ。

※25日13時55分に記事の一部を修正しました。訂正してお詫びします。

No image

豪華すぎる装飾も海の藻屑と消えた【写真:Getty Images】

18日夕方まではほぼ直線的に航行していたはずが

映画1本ができそうなドラマチックな展開の連続だっただけに、衝撃のラストでファンが言葉を失ったことは言うまでもないだろう。しかし、黙っていなかったのは地元メディアだ。

14日に旅立った「ジャンボ」は、香港企業所有のタグボート2隻に曳航されていた。そこでニュースサイト「香港01」がこの企業に問い合わせたところ、香港海域から出る際に別の遠洋曳航船に引き渡されていたことが判明。さらに引き渡しの際の「ジャンボ」には異常がなく、「完全に正常だった」というコメントも得た。

また、香港海事処(海事局に相当)は、「ジャンボ」の運営企業が13日にカンボジアまでの曳航に関する許可を申請していたと回答した。ちなみに「ジャンボ」の具体的な行先は、移転発表時からなぜか伏せられたままだった。

さらに同メディアが香港海事処の出港記録を調べると、「ジャンボ」の出発日から3日間で香港を離れた遠洋曳航船は韓国船籍の一隻のみ。その航行ルートを船の位置情報サイトで追うと、13日に香港到着、14日朝に「ジャンボ」が浮かんでいた香港仔近くを航行、同日午後5時頃に香港海域を離れて西南の方角へ向かったことが分かった。

記事はこの遠洋曳航船が「ジャンボ」を曳航したことはほぼ間違いないとしつつ、続く「尋常ではない航路」を伝えている。遠洋曳航船は香港海域を出てからほぼ直線的に航行し、18日夕方には西沙諸島近くに到達したが、19日にはいきなり逆戻りに近い方角へ航路を変更。そのまま細かくジグザグ模様を描くように航路を変え続けていた。また、昨年12月にも座礁した記録があるという。

ネット上には“陰謀論”の声も…香港が「ジャンボ」にこだわる独特の理由とは

この他の記事には“陰謀論”を匂わせる内容もある。台湾のネットメディア「蘋果新聞網」は、沈没を伝える記事内で「計画的な“事故”だったのでは」というネット上の声も紹介。また台湾のケーブルテレビ局「TVBS」は、運営企業が行き先を明かさなかったことに疑問を呈する香港市民のコメントを放送した。

「香港01」も航路に関する記事とは別にネット上の声を伝えている。「裏があるのでは」とする声の根拠としては、行き先が伏せられていたことに加え、「ジャンボ」の船体構造と老朽化から海上航行に適しているとは言いがたい事実などが挙げられているという。ただし、いずれも「憶測の域を出ない」とした。

こうした“陰謀論”が噴出する要因には、移転発表で言及された毎年平均で数百万香港ドル(数千万円)という高額の維持費がある。香港海事処が沈没に関する報告書の提出と調査のフォローアップを求めるとの意向を明らかにしているため、真相解明は今後も注目の的になりそうだ。

No image

香港仔(アバディーン)の顔的存在だった「ジャンボ」【写真:Getty Images】

また香港市民が「ジャンボ」にこだわる背景には、「香港の集合的記憶」がクローズアップされている近年の状況もある。この「集合的記憶」とは、1997年の返還からコロナ禍まで数々の波に翻弄された香港が、これまでを振り返った時に“思いの拠り所”となる建物や場所などに使われる言葉だ。

「ジャンボ」はその代表格であり、水上で輝く姿はまさに、無数のネオンに彩られていた好景気時代の香港を凝縮したようなものだった。そんな存在の沈没を香港経済の低迷と重ねる悲観的な声もある。しかし何にせよ、あの巨大で豪華な“やりすぎた船体”はもう戻ってこない。

突然の休業発表、再起を目指した2年間、涙の船出、そしてドラマチックな沈没から陰謀論によるサスペンス展開と話題満載の「ジャンボ」。“人目を引きつける”という役割を最期の瞬間まで立派に果たしたと言える。そして最後は船としてのアイデンティティを取り戻し、海底で静かな眠りについたと考えると……やはりファンの頬には涙が伝ってしまうだろう。

Hint-Pot編集部

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加