テレビ解説者・木村隆志の週刊テレ贔屓 第182回 『久保みねヒャダこじらせナイト』視聴率ではなくお金を稼げる有料コンテンツ

テレビ解説者・木村隆志の週刊テレ贔屓 第182回 『久保みねヒャダこじらせナイト』視聴率ではなくお金を稼げる有料コンテンツ

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/07/21
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テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第182回は、16日に放送されたフジテレビのバラエティ番組『久保みねヒャダこじらせナイト』をピックアップする。

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2013年から4年間にわたって放送されたあともトークイベントとして存続し、さらには、ほぼ1カ月に1度のレギュラー放送として復活。毎年1月1日に『明けましてこじらせナイト寿スペシャル』が放送されているほか、17日午後にも有料オンラインライブが行われるなど、何かと異色の番組として知られている。

なぜこの番組は有料ライブが成立するほどの人気を保っているのか。久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダインのキャラクターやトークにあらためて注目していきたい。

○■冒頭トークは新垣結衣と星野源の結婚

番組はリモート風の3分割画面からスタート。左から能町、久保、ヒャダインが並んでいる。3人はフジテレビオフィスの同じ場所にいるのだが、あえて3分割にしたのは三者三様のキャラクターとトークを楽しんでもらおうとしているからなのか。

さらに、この番組は6月19日に配信された『こじらせオンラインライブ』から、「地上波で放送可能な部分のみ抜粋したものである」ことが明かされた。つまり、「この地上波版を『面白い』と思った人は、より自由かつ過激で『もっと面白い』配信版を見てほしい」ということだろう。

最初のコーナーは、久保と能町がツイートした内容について語る「近況まとめ」。まずは能町の「私ら、3年前の番組でこんなことやってたんだな…………」というつぶやきが紹介された。かつてこの番組には、「くじを引いて出てきた俳優で勝手に妄想ドラマを作る」というコーナーがあり、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が終わったタイミングで放送したとき、「新垣結衣と星野源が結婚する」という設定の妄想物語を作っていたという。

もちろん普通の結婚で終わるはずがなく、高橋一生が新垣・星野の男女2人と不倫するほか、泉ピン子、小泉今日子、細川たかし、満島ひかり、いしだ壱成、竹内涼真、イヴァンカ・トランプらも出演して、タイトルはTBS日曜劇場の『恥を知れ!!!』だった。

しかし、新垣と星野の結婚を予言したことはどうでもいい3人は、すぐに話を脱線。久保が「『おめでとう』の概念がわからなくなっちゃって」と切り出すと、能町が「特に親しいわけではない2人が結婚すると」と呼応し、ヒャダインが「無条件に『結婚した』って装置に入り込んだら、われわれは『おめでとう』と言わなければいけないコールアンドレスポンスは絶対に存在しないと思っている」とたたみかけた。

さらに能町が「私は驚いて“おめでとう感”だけ出していくようにしている。驚くだけでなんかおめでたい感じになってくれるんですよね」と最近の対処方法を明かすと、久保とヒャダインは「それはいいライフハック」と同意。日本中が沸いた人気者同士の結婚も、こじらせ系クリエイター3人にかかると、こんな身近などうでもいい話にあっさり変換されてしまう。冒頭からクセになる人が多い理由がうかがえた。
○■古畑、熊田、B’zをイジリまくる

2つ目のツイートは、久保の「別に役者目指さないけど『古畑任三郎』の犯人役なら1回出てみたい」。久保の「役者じゃない人がイレギュラーに出てきたのが印象強いから、ああいうの憧れるなと思って」という発言をきっかけに、能町が「イチローの演技がうまかった」、久保が「ほかのバージョンも見たかった」、ヒャダインが「われわれも誰か殺害したかったですよね」と続け、最後は久保が「道具何にするかから考えて、バレないようにするトリックとかも考えるよね」と妄想ストーリーを長々と語った。

3つ目も久保の「熊田曜子のインスタ 最初必ず英語で文章書いてるんですけど その英語が全然上手じゃなくて 熊田曜子流石だなって」というツイートで、これに能町が「熊田曜子ってみんなを癒やしてくれるよね」と反応。さらに3人で熊田のインスタグラム投稿をイジった。

4つ目は能町の「2000年ってもう20年も前か~って話から『ノストラダムスからもう20年も経ったんですねー』なんて言ったら、20代から『そんなの信じてたんですか!?(爆笑)』という反応があったのよ………この世代におけるノストラダムスのあの感じ、まったく通じない!ってショックを受けて…」。

5つ目は久保の「B’zサブスク解禁! 擦り切れるほど聴きまくった一番最初のアルバム付近から再生すると、当時高校生だった私には幼すぎて聞き取れなかったアメリカ(概念的VHS画質)っぽいものがまぶたの裏に浮かび上がるよ…」。久保が“不動の脳内ビデソング”という「BE THERE」が流れたあと、「LADY NAVIGATION」の歌詞にツッコミを入れていく。ヒャダインの「何をナビされているのか…」を皮切りに歌詞への称賛、妄想、ツッコミが飛び交ったが、この歌詞イジリも3人の真骨頂であり、きっちり入れる番組構成に納得させられた。

最後のツイートは能町の「ちゃんと取りまとめるのはめんどくさいからやらないけど、ミックスナッツ総選挙をやりたい(やってほしい)。ジャイアントコーンが最下位に来るのは間違いない。アイツ、なんでいつも入ってくるんだ(いじめの構図)」。

「1位:カシュー 2位:マカダミア 3位:ピスタチオ 4位:くるみ(ここまでほぼ同率) 5位:アーモンド ~深い溝~ 6位:ピーナッツ ~すさまじい溝~ 7位:ジャイアントコーン」という能町の順位が紹介され、さらに番組スタッフ21名で集計した“ミックスナッツ総選挙”を発表。「1位:マカダミア 2位:カシュー 3位:ピスタチオ 4位:ピーナッツ 5位:くるみ 6位:アーモンド、ジャイアントコーン(同票)」だった。

久保が「ミックスナッツという枠組みにすると、とたんに人の差別意識がこんなにも浮かび上がるとはビックリしました。これ本当は武道館(ライブ)ですべきだよ。観客の『エーッ』とかがほしかった」とボヤいてコーナーは終了。「武道館ですべき」と言えるのは、こんなから騒ぎを楽しめる関係性がファンとの間に構築されていることの証だろう。
○■コロナ禍の今こそ求められる番組か

番組の約半分が過ぎたところで、ゲストの光浦靖子が登場して画面が4分割に変更。コロナ禍で留学が延期になって妹の家に居候していたこと、「5年着なかった服は5年後にヘビロテになる」という名言、光浦が芸人になったきっかけ、大久保佳代子に彼氏を寝取られたエピソードなどで盛り上がった。

さらに、久保が考えたお題による「好きな貝ベスト3」と、「こじらせリレー4コマ漫画」を披露して番組は終了。最後は久保が漫画家らしい見事なイラストと4コマ目のオチを見せて締めくくった。

やはりどんなテーマでも、言葉がポンポン飛び出すスピードは速く、しかも3人がシンクロするようにたたみかけられる。もちろん技術うんぬんもあるが、それ以上に“こじらせ”というポイントが明確であり、それに長けた3人を起用したプロデュースの妙だろう。好き嫌いのハッキリわかれる番組だが、それこそがコアなファンをつかめるコンテンツとも言える。

現在の地上波では主に、コア層(フジテレビは“キー特性”と呼ぶ13~49歳)の視聴率獲得を目指す番組と、個人視聴率全体の獲得を目指す番組に分かれているが、『久保みねヒャダ』はそのどちらでもなく、お金を払ってもらえるファンを作る番組。有料のオンラインライブやFODプレミアムがメインで、地上波の放送はその新規顧客を増やすための入り口に過ぎないという感がある。

実際、番組放送中、翌日14時に生配信される『久保みねヒャダこじらせオンラインライブ』、配信直後の未公開トークがたっぷり見られる『FODプレミアム デストピア編』、『千葉ヒャダこじらせ男子旅 仙台編・大阪編・石垣島編・ロサンゼルス編・台湾編』の告知が何度も流れた。

ただ、その告知のBGMも中島みゆきの「命の別名」やレベッカの「フレンズ」を選ぶなど曲を変えていたし、エンディングテーマに岡村靖幸w小出祐介の「愛はおしゃれじゃない」を選ぶなど、どこまでもファンを楽しませるディテールを追求している。“お金を稼げる番組”という意味では、民放各局にとって貴重なサンプルの1つであり、コロナ禍の減収に苦しむ今こそ、「こういう番組をどう増やしていくか」が問われているのではないか。
○■次の“贔屓”は…五輪開会式の裏でテレ東は大食い! 『最強大食い女王決定戦2021』

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、23日に放送されるテレビ東京系バラエティ特番『最強大食い女王決定戦2021~現女王やレジェンド、新世代が頂上決戦SP』(19:55~21:48)。

東京オリンピック開会式がNHK総合で放送される23日夜は、民放各局がお笑い、警察、爆買いの特番やアニメ映画などで対抗しているが、テレ東が選んだのは大食い。しかも、現女王のアンジェラ佐藤から、レジェンドの菅原初代とロシアン佐藤、さらに、はらぺこツインズ(小野かこ、あこ姉妹)ら新世代までトップクラスのメンバーがそろった。

このところ、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)や『ウワサのお客さま』(フジ系)などでコーナーが高視聴率を獲得しているほか、YouTubeでも人気コンテンツとして定着するなど、“大食い”が幅広い世代に浸透。今回はハンバーグ、親子丼、回転寿司など、大食いの王道メニューで対戦するだけに、ハイレベルな戦いになりそうだ。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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