電通社員の自殺、広告代理店出身者はどう見たのか

電通社員の自殺、広告代理店出身者はどう見たのか

  • ZUU online
  • 更新日:2016/10/19
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広告最大手の電通で新入女性社員が昨年過労自殺したことを受け、東京労働局と三田労働基準監督署が10月14日午後、電通本社に労働基準法に基づく強制調査、いわゆる「臨検」を行ったことが大きく報道されている。

電通の労使協定が認めていない時間外労働などの法令違反を確認した上で是正を勧告(行政指導)する方針であり、悪質性が高いと判断した場合は刑事事件として立件することも視野に入れられている。

91年にも入社2年目の男性社員(当時24才)が過労自殺し、最高裁で管理責任が認定されているにも関わらず、労働環境は改善されておらず、またも電通の問題点が露呈した。

■際限のない広告業界の時間外労働

自殺した社員の残業時間は、記録上は月100時間を超えていた。入退館記録などをもとにした遺族側の代理人弁護士による集計では、130時間に達したこともあったという。深夜残業はもとより、翌日朝まで続く勤務や休日出勤も当たり前のように行われていたことは、容易に想像できる。またこの社員は上司からパワハラも受けていたらしく、それがさらにプレッシャーになっていたようだ。

このような無茶な働き方を当たり前のようにしているのが、広告業界の実態だ。電通に限らず、また大手・中小を問わず、ほかの広告代理店でも実態は似たようなものだ。

「月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない。プロであれば自分が請け負った仕事を完遂するためには、残業時間など関係ない」などとネットに投稿した大学教授がいたそうだが、そのような考え方は広告業界にはまだ根強い。

かつては時代の先端を行くスマートなイメージが圧倒的だった広告業界だが、今も昔も旧態依然とした働き方を続けている。電通社員の中には、「自分も当然のように深夜残業をしており、過労自殺は2度目なので労基署が入ることは意外とは思わない」、「残業が月100時間を超える月もある」といった声も聞かれる。

■とにかく、手とカラダを動かせ

自殺した社員はダイレクトマーケティング・ビジネス局デジタル・アカウント部に所属しており、インターネット営業を担当していたようだ。

このような業務は、実はいまの広告業界の中でも特に人手がかかる業務だ。クライアントへの提案書から出稿結果のレポート作成、再提案の資料作りなど、ほとんどの業務は手作業で行われている。それが切れ目なく毎日続く。「デジタル」と聞こえはいいが、やっていることは超「アナログ」だ。アタマはもちろん、とにかく手を動かせ、ということだ。この部署では人員が削減されたというから、一人の社員にかかる負担は相当のものだっただろうと想像できる。

外から見た電通のイメージは、「体育会系」、「体力勝負」、「泥臭くても勝つことに徹底的にこだわる」といったものだろう。

また業界内で圧倒的な力を持っていることで、「常にナンバーワン」であることが至上命題になっている。そのためにはガムシャラに働く。その延長に、長時間残業や休日出勤といった過重労働が常識化・常態化していたのだろう。

だがこれは電通に限ったことではなく、多かれ少なかれ同業他社でも似たり寄ったりだ。他業種からは広告代理店はオーバーワークが当たり前のように見られているがその通りで、この点はイメージと実態が合致している。

■暗黙の了解事項

電通は自殺者を2人も出したことでセンセーショナルに扱われているが、これはもちろん氷山の一角だ。広告業界に身を置いた筆者の肌感覚でいえば、月の残業時間が100時間というのはまだましな方だ。月20日勤務として一日当たりの残業時間は5時間の計算だが、業界内ではまだ少ないと感じる人が多いだろう。仕事が立て込めば日付が変わるまで残業し連日タクシー帰宅(かつてのようにタクシー代も支給されにくくなっているが)、休日出勤も当たり前の世界だ。このような勤務実態は労働基準監督署ではよく知られており、広告代理店は常に目を付けられており、改善すべき点として頻繁に指摘されている。

だがオーバーワークは暗黙の了解事項であり、「当たり前」とする思考が蔓延している。このことこそが問題なのだ。

会社側の勤務記録が事実とは限らないことも怖い。会社側の総労働時間規制のルールを超えた場合も、記録上は帰宅として処理し、実際は残業(サービス残業というようより自主残業といえるもの)する場合も多々ある。

そのため過労死をした場合に遺族が労災申請できるように、会社側の記録とは別に実際の勤務時間を手帳にメモしておくといい、といった笑えないアドバイスもあるほどだ。

このような環境で自殺に至らずとも病んでいる人や自主退職する人が業界内では相当数いることは想像に難くないが、表面化することはほとんどない。これが常態化・常識化していることこそがこの業界の問題なのだ。今回はたまたま表面化・問題化しただけだと受け取る人が業界内では多いだろう。

今回の件で同業他社も非常に敏感になっている。労働時間の管理の徹底はもちろん、定期的なモニタリングや産業医によるカウンセリングを強化している。だがこれらはいずれも対処療法的なものでしかない。時間と手間ばかりがかかる業務の仕方や、長時間労働をよしとする評価の仕方を根本的に変えなければ、状況は変わらないままだ。

多くの広告代理店が「人がすべて」、「人が最大の財産」と謳っているが、いまは社員の過重労働という犠牲に支えられているのが実態だ。時代の半歩先を行かなければならないとされる広告業界だが、その働き方はまるで昭和のままで止まっているようだ。果たして、昭和が終わって30年余り経った今でも過去と同じ働き方(あるいは働かせ方)をしているこの業界に、今から大きな変革を期待できるだろうか?(戸神雷太、広告業界出身のコンサルタント)

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