突如現れた「北朝鮮は悪くない」論に耳を傾けてはいけない

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/01/12

北朝鮮の主張を鵜呑みに

朝鮮半島情勢が新年早々から動き出した。北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が新年の辞で平昌五輪への参加を表明し、9日には南北閣僚級会談が開かれた。北朝鮮の意図は何か。そして、日本の左派たちは何を言い出すのだろうか。

韓国と北朝鮮が閣僚級会談の後、発表した共同報道文によれば、双方は「五輪成功に協力する」「北朝鮮は選手団のほか高官級代表団を派遣する」「軍事当局者の会談を開く」「南北間の問題は同じ民族同士で対話と交渉で解決する」などで合意した。

最後の「同じ民族同士で問題解決」というくだりは当然、米国をけん制する狙いである。それは北朝鮮の首席代表が共同報道文の発表で記者団を会場に招き入れた後、カメラの前で語った言葉にも表れている。

首席代表は「我々の原爆や水爆、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は徹頭徹尾、米国を狙ったもので同族を狙ったものではない。中国やロシアを狙ったものでもない。朝鮮半島非核化の話を持ち出せば、今回の合意は水の泡になる」と語ったのだ。

こういうセリフを聞くと「なんだ、そうか。敵は米国だけなのか」と安心してしまう向きもあるのではないか。さらに一歩進めると、韓国では「それなら、オレたちが米国との対立を仲介しよう」という声が出る可能性がある。

日本では「北朝鮮の敵はやはり米国だ。日本が米朝のケンカに巻き込まれるのはゴメンだ」とか「日本が米国に追従すれば、日本も敵視されてしまう」という話になりかねない。それが、まさに北朝鮮の狙いである。

「安倍政権が煽っている」論の奇妙さ

北朝鮮は五輪を成功させたい韓国の足元を見て、五輪参加をエサに核とミサイル開発を事実上、容認させてしまおうと目論んでいる。それで「問題は南北で解決」「敵は米国」と釘を指し、日米韓の連携に楔を打とうとしているのだ。

実に分かりやすい構図である。これに対して日米両国は南北対話を歓迎しつつも、警戒を緩めていない。

米国のティラーソン国務長官は南北会談について「半島の非核化をめぐる対話につながるとみるのは時期尚早」と慎重だった。フタを開けてみれば、北朝鮮は非核化どころか、核とミサイル開発を中断するそぶりさえ見せなかったのだから、それは正解だった。

一言で言えば、今回の南北会談は「平昌五輪をダシにした北朝鮮の宣伝攻勢」にすぎず、問題の解決にはまったく役立たない。したがって緊張は続く。

韓国はもともと文在寅政権が「容共親北路線」なので、金正恩氏の甘言に騙されたところで自業自得である。「敵は米国」というセリフを信じて核とミサイルを容認してしまえば、後になって脅されるだけだ。

問題は日本だ。昨年12月29日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54020)で触れたように、私は元旦放送のBS朝日の討論番組に出演した。そこで、いまだに「危機は安倍晋三政権が煽っているだけだ」という意見が公然と出たのには驚いた。

番組中でも述べたが「煽り論」は数年前の同じ番組でも、当時の司会者だった鳥越俊太郎氏やジャーナリストの青木理氏が盛んに語っていた。いまでも同じだったのだ。日本上空をミサイルが飛んでいるというのに、いったい彼らはどこまでおめでたいのか。

左派系ジャーナリストたちが現実から目を背けて「悪いのは危機を煽る安倍政権」と言い募っている限り、まったく北朝鮮の思う壺である。

そもそも、彼らは「日本を脅かす脅威」など関心もなければ、考えるつもりもない。先のコラムで書いたように、彼らは「政権ケチつけ」が商売である。北朝鮮が何をしようが、とにかく安倍政権を批判する。それが仕事と心得ているのである。

左派系ジャーナリストは「安倍政権による危機煽り論」を展開することによって事実上、北朝鮮を擁護する結果になっている。

だが「煽り論」のようなお粗末な話ではなく、ここでは思考停止の左派系ジャーナリストに代わって、もう少しマシな「北朝鮮擁護論」を展開してみよう(笑)。というのは、相手の言い分をきちんと理解しなければ、真の問題である「なぜ北の核とミサイルを容認できないか」が分からなくなってしまうからだ。

あえて振り返る「北の核開発史」

まず、北朝鮮はなぜ核とミサイル開発を進めてきたか。朝鮮半島問題の専門家でジャーナリストでもあった故ドン・オーバードーファーとロバート・カーリンの名著『二つのコリア』(共同通信社、第3版、2015年、https://www.amazon.co.jp/dp/4764106825?_encoding=UTF8&isInIframe=0&n=465392&ref_=dp_proddesc_0&s=books&showDetailProductDesc=1#product-description_feature_div)によれば、話は1970年代に遡る。

1953年に休戦した朝鮮戦争の後、北朝鮮はソ連に少人数の科学者を送り込んで核に関する研究を始めた。米国の専門家は「北朝鮮が原子炉用の敷地造成を始めたのは79年ごろ」とみている。米国の偵察衛星が原子炉施設を初めて写真撮影したのは82年4月だ。

なぜ北朝鮮が核開発を進めたかについて、同書は「はっきりした情報がないため、憶測の域を出ない」としながらも、朝鮮戦争でマッカーサー将軍が原爆使用を検討した経緯に触れている。当時のアイゼンハワー大統領も原爆使用をほのめかしていた。

米国に対抗するには「核兵器が必要」と認識したのは、それがきっかけだったかもしれない。現在では「米国の脅威から金体制を守るには核に頼るしかない。核兵器は通常兵器に比べて安上がりでもある」というのが、核保有を目指す理由の通説になっている。

北朝鮮は「最初から全くの独立独歩」(同書)で核開発を進めた。その後、北朝鮮はソ連から原子炉を入手する条件をクリアするために85年12月、核兵器不拡散条約(NPT)に加盟した。だがソ連との関係が悪化し、この輸入計画は失敗に終わってしまう。

NPTは米国、ロシア、フランス、英国、中国の5カ国だけを「核兵器国」と認めて誠実な核軍縮交渉を義務付けるとともに、その他の「非核兵器国」には核兵器の製造、取得を禁止し、国際原子力機関(IAEA)の査察を義務付けた条約だ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/npt/gaiyo.html)。

一言で言えば「5大国は核を保有してもいいが、その他の国はダメよ」という条約である。

「不平等じゃないか」と言わればそれまでだが、これが第二次世界大戦を踏まえた国際政治の現実なのだ。この5大国は国連安全保障理事会の常任理事国でもある。核も国際秩序形成も5大国が既得権として握っている。

85年ごろには、米国で北朝鮮の核開発に対する懸念が強まった。韓国政府に対する米国のブリーフが韓国マスコミにリークされ「北朝鮮が90年代半ばには原爆を製造できるようになる可能性がある」という記事が世界中に流れた。

北朝鮮は当初、報道を否定したが、NPTの査察受け入れ圧力が強まると「韓国に配備された米国の核の脅威がある限り、査察は認めない」と反論した。同書はこの反論について「有無を言わさぬほど論理的で、しかも訴えるものがあった」と率直に評価している。

その後、弾道ミサイルなど核の運搬手段が進歩した結果、米国内でも「韓国を守るのに韓国内に核兵器を置く必要はない」という議論が起きる。米国は結局、北朝鮮の主張にも配慮した形で91年12月、韓国からすべての核を撤去した。

だが、北朝鮮は独自の核開発を続け、2003年にNPTを脱退し、現在に至っている。

以上を振り返っただけでも、北朝鮮が核保有を目指したのは、朝鮮戦争で戦った米国に対抗するためだったことが分かる。それが「自分たちは米国の核の脅威にさらされている。だから査察は認めない(=開発を続ける)」という理屈なのだ。朝鮮戦争はいま休戦中であるにすぎない。

ここで止めねば、さらなる危機を招く

そこで本題である。ではなぜ、北の核を認められないか。

第一の理由は「彼らはテロリスト国家である」。日本人拉致問題は言うに及ばず、彼らは実際に何度もテロを実行してきた。テロリスト国家には「核を使えば核で報復する」という脅しが効かない。

中ロはこの「脅しの原理」(相互確証破壊=MAD)を理解しているから、核による共存が可能になる。だが、何をしでかすか分からず、自国民の生命、人権などなんとも思わない独裁者には、反撃の脅しで核使用を思いとどまらせる保証がないのだ。

第二の理由は、彼らがテロリスト国家であるからこそ、核保有を認めてしまえば、別のテロリストに核が流出する懸念がある。そして第三に、北が核を持てば、韓国や日本も核を持たざるを得なくなる可能性が高い。

韓国や日本が自前の核を持たなくても、米国が再び韓国と日本に核兵器を配備せざるを得なくなるかもしれない。いくら運搬手段が発達しているとはいえ、米国がグアムから反撃するよりソウルや横田、佐世保から反撃する体制を整えたほうが抑止効果は高いだろう。

つまり、北の核を容認できない根本的な理由は世界と東アジア、とりわけ日本の安全と平和が不安定になるからだ。「盗人にも三分の理」ではないが、北朝鮮の核開発にもそれなりの理由はある。それを理解したうえで、なぜダメかを指摘しなければ説得力はない。

左派系ジャーナリストの「煽り論」は安倍政権批判の道具にすぎない。彼らこそが「安倍政権こそが悪玉」と煽っているのだ。そうした論者の言い分にいくら耳を傾けても、頭が濁るだけだ。世界と日本の平和と安全を考える手助けにはならない。時間のムダである。

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