「熱血硬派くにおくん」の影響も......80年代ファミコンへの“偏愛”から生まれた「海外インディーゲーム」の正体

「熱血硬派くにおくん」の影響も......80年代ファミコンへの“偏愛”から生まれた「海外インディーゲーム」の正体

  • 文春オンライン
  • 更新日:2019/09/23

“テトリスを抜いた”ゲーム『マインクラフト』とNintendo Switchが売れ続ける理由から続く

【写真】『ダウンタウン熱血物語』から着想 日本の学校をドット絵で再現

大ヒットした『Minecraft』をはじめ、Nintendo Switchの人気を支える「インディーゲーム」とは一体何なのか。話題を呼んだインディーゲームの作り手のうち、海外の開発者たちは、日本の「レトロゲーム」(80年代のファミコンソフトなど)の影響を強く受けているという。細部からにじみでる日本文化への“偏愛”を、ライターの河上拓氏が取材した。(全2回の2回目/#1へ)

海外では1つのハードの寿命が長い

海外のインディーゲーム開発者たちは「影響を受けたゲーム」として日本のファミコンやスーパーファミコンのソフト名を挙げることが多い。

生産国である日本と海外のその他の国とでは、一昔前のゲーム機の普及には大きなタイムラグがあった。さらに、海外では1つのハードの寿命が長い。南米やヨーロッパでは現在も数世代前のハードを遊び続けているファンが多くいる。

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©iStock.com

数年前からは「レトロゲーム」として80年代のファミコンソフトがブームとなっており、世界中に若い世代のコレクターも生まれている。

たとえば20代から30代のゲーマーたちが、40代の日本人ゲーマーと同じテンションでファミコンやスーパーファミコンについて愛情を語る場面に出くわすのは、そのような理由からだ。

彼らが大好きなレトロゲームの手触りを忠実に再現したインディーゲームが、北米や日本のNintendo Switchで久しぶりにゲームに触れた30代から40代のファミコン、スーパーファミコン世代に見事に直撃したこともNintendo Switchでインディーゲームがヒットしている要因のひとつと言えるだろう。

『ダウンタウン熱血物語』から影響を受けたロシア人

インディーゲームで開発者の個性が色濃く表われるのは『Minecraft』のような奇抜なゲームアイデアだけではない。過去のゲームへの熱烈な愛が、オマージュ色の強い独自のゲームを生み出すパターンも多い。

たとえば、今年4月にNintendo Switch版がリリースされた『The friends of Ringo Ishikawa』の開発者Vadim Gilyazetdinovはロシア在住の30代半ばの男性だ。

彼は大好きなファミコンソフト『ダウンタウン熱血物語』から着想を得た、つっぱり高校生、石河倫吾を主人公にしたゲームを完成させた。

日本で1989年に発売された『ダウンタウン熱血物語』は「熱血硬派くにおくん」シリーズの3作目のタイトル。くにおがライバル・りきと共に、他校の生徒たちと戦う、「つっぱり学園モノ」アクションだ。

日本の学校や商店などをドット絵で再現

ロシアでファミコンハードの海賊版Dendyの販売がスタートしたのは日本の10年遅れとなる92年。彼も日本人より少し遅れてファミコンのカルチャーに触れた世代だ。日本語はわからないがストーリーを想像しながら『ダウンタウン熱血物語』を夢中で遊んでいたとゲーマー向けメディア「Game*Spark」のインタビューで語っている。

『The friends of Ringo Ishikawa』は日本の学校や商店などがドット絵で再現された『ダウンタウン熱血物語』を思わせるサイドビューのフィールド上で、くにおっぽい石河倫吾となり生活していくゲームだ。

世界を自由に動きまわりながら探索するオープンワールド型のゲームのため、他校の生徒とけんかするのも、勉強やトレーニングに励むのもプレイヤーの自由。日常の生活の中でパラメーターを上げ、町を探索しながらストーリーを進めていく。日常の生活の中でイベントが発生し、物語が進行するが、情報が少なく、プレイヤーは手探りで学んでいくことになる。ゲームの難易度は少し高めなため、誰にでもおすすめできるものではないが、実際に生活しているような感覚になる作り込まれた世界は一度体験する価値があるだろう。

失業中の父親が「不良少年」キャラクターアートを担当

米テック系メディア「The Verge」のインタビュー記事によると、このゲームに登場する不良少年たちのキャラクターアートを手掛けたのは、なんと失業中だった彼の父親だという。

当時58歳だった父親はマイクロソフトのPaintを使っていちからピクセルアートを学び、それぞれのアクションのポーズをとった息子の写真を見ながらキャラクターフレームを仕上げた。

このアットホームな開発秘話からもわかるように、ゲーム作りの敷居は数年前と比べてかなり低くなっている。やる気と時間、それにパソコンさえあればUnityなどの無料開発ツールを使うことで誰でもゲームを作ることが可能なのだ。

海を渡ったファミコンソフトが、ロシアで熱狂的なファンを育て、彼が作ったインディーゲームが任天堂の最新ハードでリリースされる。そんなゲームマニアの妄想のような物語が現実となったのだ。

ちなみにNintendo Switchでオンラインプレイをする際に加入が必要なNintendo Switch Onlineではファミコンソフトを無料で遊べる『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』というサービスを行なっている。そこで『ダウンタウン熱血物語』を遊ぶことができるため、2つのゲームを比較しながらプレイすることも可能だ。

自宅を抵当に入れてゲームを作ったカナダ人兄弟

今年4月にNintendo Switch版がリリースされた『Cuphead』も日本のレトロゲームへのオマージュがちりばめられたゲームだ。1930年代のカートゥーン調のアニメがそのままゲームになったようなこのタイトルの開発にカナダのモルデンハウアー兄弟は7年の歳月を費やした。

2人は建設作業員として働きながら、2010年にゲーム作りをスタートさせた。ゲーム内のイラストはすべて手描き。セル画は、当時のアニメーターたちが使っていたものに近いツールを使って描き、背景は水彩で色付けして仕上げていった。

当初はボス戦のみのステージ構成だったが、開発途中のゲームに触れたファンの声に応えるため、横スクロールのステージを追加することを決断する。そのアニメーションを描く職人を雇う金を確保するため自宅を抵当に入れた。

異常なほどの情熱を注ぎ、発売延期を重ねた末、2017年に完成にこぎ着けたPC版とXbox One版は発売後2カ月で200万本を売り上げるヒットとなった。

4万5000枚以上のセル画を使い、1フレームずつ描かれたキャラクターたちが表情豊かにオーバーアクションな1930年代のアニメーション的な動きでゲーム画面を動きまわる。

ゲーム内容は彼らが子供の頃に夢中で遊んで着想を得たスーパーファミコンの『魂斗羅スピリッツ』、『ロックマンX』、メガドライブソフトの『ガンスターヒーローズ』などと同じくゲームオーバーを繰り返し、少しずつ敵の動きを攻略しながら進んで行く骨太なアクションゲームとなっている。

『Cuphead』はNintendo Switchへの移植に合わせて日本語版が制作された。ゲームの雰囲気に合わせてステージ名の日本語フォントも、それぞれステージごとに手書き文字で新たに制作されるなど、細部のローカライズに関しても妥協のない仕上がりとなっている。

ローカライズを得意とする日本の企業が開発に参加することで日本語版へのクオリティが格段に上がったことも現在の日本のインディーゲームシーンの盛り上がりを語る上で外せない要素といえるだろう。

ディストピアを描く南米・ベネズエラの2人組

世界各国の開発者たちが制作したインディーゲームは、世界観の設定やストーリー展開、なにげない主人公たちの会話の中に、開発者たちの価値観や文化を垣間見ることができる。

今年5月にNintendo Switch版がリリースされた『VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)』は、南米、ベネズエラ出身の2人組、Sukeban Games(スケバンゲームズ)が制作した「サイバーパンクバーテンダーアドベンチャーゲーム」だ。

PC-98風のドット絵で描かれるサイバーパンク調の世界を舞台に、バーテンダーの主人公とクセのある客との会話によって物語は進行する。話の合間に客のリクエストを受けて作るカクテルによってストーリーは変化していく。

開発者が日本の文化をこよなく愛していることは、その会社名からも窺えるが、作中にちりばめられた日本のアニメ、ゲーム文化に対するオマージュからもその愛情が伝わってくる。

しかし、世界観の設定に関しては、彼らの生まれ育ったベネズエラの現実が色濃く反映されている。ゲーム内でスマホを使って、匿名掲示板やニュースサイトを閲覧できるのだが、そこで語られる主人公たちが暮らす腐敗した政府と大企業が牛耳る都市・グリッチシティの情勢は、政情が不安定で人道危機が続くベネズエラの現状そのものだ。

世界有数のインフレ率。暴力犯罪の蔓延するディストピアで夢を持って生きる人々。日常と死が隣り合わせの都市・グリッチシティは、日本のアニメとゲームが大好きな2人の青年にとっての現実でもあるのだ。

Nintendo Switchはインディーゲーム好きにとって最高のハード

Nintendo Switchでは、今回紹介したような世界で話題になったインディーゲームが、PC版から少し遅れる形で質の高い日本語版となって続々とリリースされている。

携帯モードにすれば場所を選ばずどこでもすぐにゲームにアクセスできる手軽さは、インディーゲームのボリューム感やレトロゲーム調のゲームデザインと、とても相性がいい。筆者も他ハードですでに持っているゲームをいくつもNintendo Switch版で買い直している。インディーゲーム好きにとって現在、最高のハードといえるだろう。

しかし、いくつかの問題も抱えている。昨年、リリースされたダウンロード販売のみのゲームは485タイトル。今年もすでに300タイトル以上が発売されている。あきらかに供給過多といえる数だ。リリースの数が多すぎて誰もすべてのゲームをチェックできなくなっているのが現状だ。

この中にはNintendo Switchのみで発売されている評価が未知数のゲームも多く含まれているが、Nintendo Switch内のニンテンドーeショップではソフトによって紹介動画がないものも多く、販売ページがユーザーによる評価やレビューも掲載されない仕様のため、気になるゲームを見つけても、別のデバイスでタイトルをいちいち検索しなければそのゲームの詳しい情報や評価を知ることができない。ユーザーインターフェースのさらなる改善が今後の課題となりそうだ。

◆The friends of Ringo Ishikawa
©IP VADIM GILYAZETDINOV ©CIRCLE Entertainment

◆Cuphead
© 2019 StudioMDHR Entertainment Inc. All Rights Reserved. Cuphead™ および StudioMDHR™ はStudioMDHR Entertainment Inc. の世界各国における商標または登録商標です。

◆VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)
© SUKEBAN GAMES All Rights reserved. Published by Ysbryd Games, Active Gaming Media Inc.

(河上 拓)

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