朝鮮籍は北朝鮮人...? ある「在日コリアン」が直面した強烈な違和感

朝鮮籍は北朝鮮人...? ある「在日コリアン」が直面した強烈な違和感

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/21
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私がアイス・バケツ・チャレンジを忘れられないワケ

私には喉に魚の骨が支えたようにどうしても忘れられない出来事がある。それはいまから5年ほど前に、突如、世界中で湧いてブームになったアイス・バケツ・チャレンジというものにまつわるものである。

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アイス・バケツ・チャレンジとは筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の研究を支援するために、多くの識者、有名人がお金を寄付するか氷水をかぶるかその挙動を動画に収めてSNSでリレーしていくものだった。

なぜ在日韓国人の私がこのアイス・バケツ・チャレンジを忘れられないというのか。ALSの親戚がいたわけではない。私にとってその頃は、在日朝鮮人・韓国人に対するヘイトスピーチが吹き荒れていたその時だったからだ。

そしてその頃、世界中の識者、有名人に呼応して、日本でも多くの方々が水をかぶって、ALS患者の置かれた、健康な人間と彼らの間に横たわる不公平の是正に力を貸そうとしていた。爆発的なブームだった。

同じ時期、ヘイトスピーチは激しさを増す一方だった。だが、水をかぶっている人で、ヘイトスピーチに言及してくれた人は少なかった。私が知る限り、茂木健一郎氏くらいだったと思う。

その後しばらくして、ヘイトスピーチは看過できないものとなり、人権派の政治家、社会運動家、そしてヘイトスピーチの被害を受けた当事者が、私からすると尊敬に値するとしか表現できないような活動を積み重ねてくださり、結果、国会でヘイトスピーチ規制法が出来上がった。

活動では、与党自民党の中でも右派というような人も巻き込んで、立法化が結実した。だから私は無力感を訴えたいのではない。

無力ではなかったが、しかし、「在日」であることは、ALSと同様に可視化された不公平、不正義であることにも関わらず、両方の問には、関心を持ってもらった人の幅の広狭の差が歴然として存在していたということだ。

なぜアイス・バケツ・チャレンジに挑む方々はおなじ義侠心、正義感でヘイトスピーチに対峙してくれないのだろう。当時、そんな風に感じてしまったために、私はアイス・バケツ・チャレンジを忘れられないでいるのだ。

見えているのに見られていない人種

アイス・バケツ・チャレンジを通して見えた件は、考えるに、私達、在日朝鮮人、韓国人をまつわる象徴的な事項ではなかったかと思う。私達はいつも、大多数の日本人には、見えているのに見られていない人種である。

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戦前、強制か任意かにかかわらず渡日した私達の祖先は、そのころの国籍は日本人であったのに、多くの人々が、日本人の視界には入らないような場所にまさに漂泊者のごとく追いやられるように住み着いた。そしてまだそこに住み続いている人が居る。

しかも日本の敗戦後、その時点ですでに二、三十年と日本に住み着いている人間もいるにもかかわらず、その日本国籍は一方的に喪失され、その代わりに「朝鮮」という国籍ではなく、先祖の出身地域を属性に与えられた。

その後、スポーツ、文化、そして経済界に、少なからずの朝鮮出身者が活躍した。しかしやはり一部を除いては、そのバックボーンは公然の秘密として、陽の当たるところでは語られることはなかった。

そしてヘイトスピーチの件では、同時期に起きたアイス・バケツ・チャレンジのような支援は差し伸べられなかったということだ。そう私たちは、いつも見えているが見られていないのである。

在日コリアンというアイデンティ

ところで、私は日頃は在日コリアンを自称している。これは現在の国籍などを鑑みることなく、先祖を朝鮮半島出身者に持つという点についてアイデンティティを前面に立てた場合の呼称となる。「国籍は?」と問われれば、「韓国」と答える。

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日本国籍ではない。日本では出生地主義をとっていないので、両父母を韓国籍に持つ私のような人間は、成人の場合、私自身が日本国政府に申請をしない限り、日本国籍とはならない。

ただ、もし仮に日本国籍を取得したとしても、私は在日コリアンと名乗るだろう。日本国籍であっても、やはり私は、日本人ではない。在日コリアンというアイデンティティは変わらない。

ところで、外形的な話に戻って、国籍の話題をすれば、日本国籍ではない「在日」には、他に「朝鮮」籍がある。これは多くの人が誤解していることであるがそれは前掲のとおり、朝鮮半島出身者を意味する属性である。

北朝鮮籍という意味では決してない(テレビに頻繁に出演するような朝鮮問題の「識者」でさえ誤解していたりする)。韓国籍とも違う。これは台湾国籍が日本国内には存在しないのと同じ理屈で、日本国政府が相手国政府の存在を公式には認めていないので、その政府の公民は本邦には存在しないという理屈になる。

「朝鮮籍」の人がいまだいる理由

なぜ、「朝鮮籍」なる人たちがいまでもいるのかという疑問、そしてなぜ戦後70年もたっているのに、在日の人たちは「日本国籍」を取得しないのかという疑問、それら二つについて私なりに答えてみたい。

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一つ目の「朝鮮籍なる人がいまだいる理由」についてだが、1952年、日本が第二次世界大戦の戦勝国とサンフランシスコ平和条約を締結するまでは、朝鮮半島に由来を持つ日本列島に住む朝鮮人は、日本国籍として居をなしていた。

しかしその後、私たちの祖先は地位確定により、「日本国籍者ではない」ことが確定した。

しかし当時すでに存在した国家である大韓民国(韓国)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、(いずれも1948年建国)と、日本国政府は国交がなかったため、日本国政府としては国交がない国の国籍はないという立場をとった。

そうして私たち在日には、国籍ではなく、出身の地域を示す称号として「朝鮮籍」というものが付けられた。

「朝鮮籍」の人たちは北朝鮮出身って……

では続く疑問として「朝鮮籍を使い続けている人はどういう立場の人か」という問題だが、これは本当に様々だ。

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終戦から20年後の1965年、韓国と日本が国交を樹立して、地理的に韓国地方出身の多くの人が韓国籍を韓国政府に申請し、国籍を得た。しかし北朝鮮と日本は国交を樹立していないため、北朝鮮地方出身の人たちは、北朝鮮籍を得ることはできない。

では、残りの朝鮮籍の人たちは北朝鮮地方出身か、北朝鮮政府を支持したからそのままかといえばそう簡単な話ではない。

中には韓国地方出身であっても、韓国籍を取得することで、韓国、北朝鮮という母国の分断を認めてしまうという、統一への思いから踏み切れないままの人もいる。

また、本人は北朝鮮への思いなど全くないが、家族が代々朝鮮籍であったため、その惰性で韓国籍を取得しなかった、別に強い政治的背景はない、という人もいる。人それぞれである。

日本国籍を取得しないワケ

では次に、2つ目の、在日の人たちは日本国籍を取得しないのかという疑問に答えたい。ちなみに私は日本国政府が法律用語として用いている「帰化」という語句は、自身が有する違和感から使用を避ける。

1990年代には、日本国籍を取得していない在日コリアン、法律的区分では「特別永住者」とされる人たちは60万人を超えた。しかし2020年を前にして、いまは40万人を割っている。

これはもちろん在日1世、2世の人たちが自然減しているのと同時に、それ以降の世代が、就職や結婚、出産を機に、日本国籍取得手続きをしていることによる。

ではまだ韓国籍、朝鮮籍のままの人たちはどういう事情かといえば、これまた人それぞれだろう。

私の周りを見ても、やはり自分は朝鮮半島出身で、母国はあくまで半島なのだという強い意志の人、自分の親たちの国籍の考えに引きずられているだけで強い政治的背景はない人、それに私も含め、経済的理由によるという人も少なからずいる(と思われる)。

それはどういうことかといえば、私は幸いにも明日の食事に困るという状況ではないが、小さい会社を営んでいて、ご多分に漏れず自転車操業である。このような人間が、日本国政府が言うところの「帰化申請」をしても、実は通るのは難しい。

帰化要件は、「経済的安定」が求められるのである。私についていえば、早く日本国籍を取得して、ユニークなバックボーンを持つ一市民として、多様性のある社会の実現を約束する政治家に一票で権利行使をしてみたいと思っているのだが、願いかなわずというところである。

一方で戦前に日本に来た在日の人たちの多くが貧困にあったことは想像がつくと思うが、貧困は世代をまたがって引きずられやすい。もちろん多くの人がその連鎖から抜け出してもいるが、今も貧困にある人達ももちろんいる。生活保護を受けている人も多い。

そういう人たちは、民族学校にも通わず、朝鮮半島など一度も行ったことがないというような、ルーツへのこだわりは殆どない人であっても、経済的理由により「帰化申請」は絶対に通らない。

そして就職機会が決して平等とは言えない事情があるので、在日の貧困は構造的に定着化するのである。望めば誰でも日本国籍を得られるわけではないのだ。

マジョリティ側が解決すべき問題

日本の社会で視野角にあえて入らないかのような存在である「在日」。しかし一方では、日本の帝国主義の残滓であることは間違いなく、私たちが生き続ける限り、「在日」は存在し続ける。

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そして私たちがその存在によって問題を抱えている限り、たとえばヘイトスピーチのような問題が顕在する限り、私たちは、日本社会における社会的存在なのである。

国連などの国際機関の人権規約を持ち出すまでもなく、マイノリティが背負わされる社会的問題は、マジョリティ側のほうで解決すべき問題である。この視点は日本の社会ではなかなか普遍化されない事項である。現在でも、いじめ問題では、いじめられる少数が、いじめ解決のために努力すべきと平然に指弾されたりする。

特別永住制度ができた当時は、在日は朝鮮半島にいずれ帰るという建前の元、また実際に強くその気持ちを持った私たちの祖先もいるなかで、しばらく日本に滞留する条件下での最低限の人権、生活保障といった文脈で法制度化されわけである。

解決すべきこと

以下は、きわめて私個人の意見となるが、実際にはもう「帰国」という手段は現実的ではない中、社会的課題は政府が主体的に解決しなければならない責務があることからして、日本国政府は特別永住者には積極的に日本国籍を付与する段階にきているのではないか。

もちろん、特別永住者の在日側で、あえて韓国籍、朝鮮籍、そして日朝国交回復後に取得できるであろう将来の北朝鮮籍に意味を見出す人は、日本国籍への転換はあくまで任意であるからとして断ればいい。そうして在日側の意見を一人一人聞き終えた後、特別永住者の資格制度は暫時、廃止していけばいいのではないか。

私は日本社会は、マイノリティにはおおむね冷たいと思っている。そもそも私たちは可視化さえされていないのである。その証拠に朝鮮籍は北朝鮮人だという嘘が平然と飛び交っていたりするのである。

「在日」の人を可視化させるようにする義務が、日本国政府にはあるのではないだろうか。

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