シャンシャン中国行き12月期限、結局いつ見納め?

シャンシャン中国行き12月期限、結局いつ見納め?

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2021/11/25
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2021年11月8日のシャンシャン(写真:公益財団法人東京動物園協会提供)

上野動物園(東京都)で生まれたシャンシャン(香香)が中国へ行く期限を来月末に迎えます。コロナ禍で規制があるなか、期限までにシャンシャンは日本を発つのでしょうか。

雌のジャイアントパンダのシャンシャン(香香)が中国へ行く期限の2021年末まで1カ月ほどに迫った。

パンダの保護研究で協力する東京都と中国野生動物保護協会(CWCA)の取り決めで、シャンシャンの所有権は中国にあり、「満24カ月齢時」に返還するとしていた。

「24カ月齢」は2019年6月だが、シャンシャンの日本滞在を望む声が強く、都とCWCAが協議して、返還期限を2020年12月31日に設定。上野動物園は同年10月から「Thank youシャンシャン」と題した数々の記念商品を販売した。

だが返還期限は2021年5月31日、2021年12月31日と延長を重ねた。理由は、新型コロナウイルス禍による中国の入国制限。日本に限らず、中国国外から中国の飼育施設へパンダを運ぶ場合、それまでパンダを飼育していた中国国外の施設の飼育員や獣医師がずっと同行するのが一般的だ。中国入国時にホテルへ隔離されると、それができない。

果たして、返還期限は再び延長されるのだろうか。

シャンシャンは「もう4歳」

東京都建設局公園緑地部の中田英壽動物園計画担当課長は「中国側と相談しながら、返還に向けて、いろいろなところと調整を進めています。シャンシャンはもう4歳ですし。もともと返還するという約束で繁殖研究をしています。それが将来、パンダの種が増えることにつながると思うので、寄与していきます」と話す。

シャンシャンは2021年6月12日に4歳になった。パンダが繁殖できる「性成熟」の年齢は、個体差もあるが雌が4歳前後、雄が7歳前後とされる。繁殖活動に入る前に、中国の新居に慣れる期間も必要だ。

パンダは暑さが苦手なので、気温の面でも12月は渡航に適している。中国が、感染を完全に抑え込もうとする「ゼロコロナ」政策から「ウィズコロナ」政策へ転換する動きも渡航を後押しするかもしれない。

中国メディアの10月中旬の報道によると、中国疾病対策センターのトップ、高福氏は「中国のワクチン接種率が2022年初めまでに人口の85%以上になれば、国境を開く可能性があります」と述べた。現在の接種率は約75%とみられる。

一方で、中国返還が再び延長される可能性も大いに考えられる。10月下旬~11月中旬に筆者が取材した限りでは、延長を予想する関係者のほうが多い。

理由の1つは、世界でも指折りの厳しい入国制限。中国大使館によると、中国は国外からの渡航者を原則14日以上、隔離する措置を続けている。しかも中国では10月下旬から感染が再拡大している。

中国国務院が11月6日に公表した中国各地の感染状況では、四川省などに関し「細心の注意を払う必要がある」としている。シャンシャンの移住先と予想される施設は、いずれも自然豊かな場所なので感染拡大とあまり関係ないかもしれないが、四川省にある。中国は、少なくとも、北京五輪が開幕する2022年2月までは厳しい入国制限を続けるのではないだろうか。

ただ、中国の入国制限が緩和されなくても、シャンシャンを返還する方法はありそうだ。例えば、上野動物園の職員を、上野動物園から中国の空港までシャンシャンに同行する人と、中国の空港から中国の飼育施設まで同行する人に分ける方法。後者は、シャンシャンよりも早く中国へ行く必要があり、隔離期間が14日間なら、それより前に入国する。

体への負担をなるべく避けて渡航

シャンシャンの中国返還を手がける業務は、阪急阪神エクスプレスが181万3912円(税抜き)で2020年10月2日に落札した。同社は上野動物園と神戸市立王子動物園のパンダの輸出入をすべて担当している。履行期間は2020年11月20日~12月31日だったが、東京動物園協会によると、契約は内容を変えずに延長している。

シャンシャンが中国で住む場所は、都によると11月中旬時点では決まっていないようだが、航空機の行き先は四川省・成都の空港だ。日本からの成都直行便はコロナ禍で運休中のため、チャーター機でなければ上海などで乗り継ぐ。どの航空機を使うかは未定。「中国側と相談しながら、できるだけ動物の負担にならない形で返還できるように努力します」(中田課長)とのことだ。

181万3912円には陸路(上野動物園~成田空港)・空路の輸送費や、日本と中国の空港での通関事務にかかる費用なども含まれる。「一般的に動物を航空機で運ぶ費用は、高額な順にチャーター機、貨物専用機、旅客機の客室下部となります。最近は需給逼迫と原油高で輸送費が上がっています。181万円では成都までチャーター機で行くのは難しい」(輸送に詳しい専門家)との見方もある。

シャンシャンの両親であるリーリー(力力)とシンシン(真真)は、5歳だった2011年2月に四川省・雅安から車で成都の空港へ行き、成都~上海は四川航空機、上海~成田は全日空機で運ばれた。リーリーとシンシンに関する日中のパンダ保護研究協力期間は当初、2011年2月21日~2021年2月20日だった。だが、2026年2月20日までに延長されたので、2頭の日本滞在も5年間延長されている。

中国が国外に貸与したパンダから生まれた子は、性成熟の年齢に近づくと繁殖のため中国へ渡り、生まれた国に戻っていない。コロナ禍前は2~4歳で行くケースが多かった。

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母子3頭(中央の木の上に1頭いる)。オーストリアで生まれた双子のフーフェン(福鳳)とフーバン(福伴)は、2歳の2018年12月に中国へ移住した(写真:2018年1月筆者撮影)

例外は、アドベンチャーワールドで生まれた良浜。母親の梅梅が同園で死亡し、永明は義理の父親という特殊事情があって、良浜は永明のパートナーとなり、21歳の現在も日本で暮らす。

世界のパンダの数は、野生で1864頭(中国の2015年発表時点)、飼育下で600頭以上に増えた。

そのため「もう繁殖のために子パンダが中国へ行く必要はない」という意見は、世界中のSNSなどで目にする。ただ、パンダはまだ絶滅の危機に瀕している。しかもシャンシャンは、リーリーとシンシンの間で初めて無事に生まれ育った子ども。血統の面で多様性を維持するため、繁殖が特に望まれている可能性がある。

「シャンシャンにお婿さんが来て、ずっと日本にいればいいのに」というファンの声もある。この件は今後どうなるか、筆者には分からない。上野動物園で2008年に死んだリンリン(陵陵)と、今もメキシコで暮らすシュアンシュアンは両国を行き来して繁殖に努めたが、この2頭は中国に所有権がないのでシャンシャンと事情が異なる。

中国国外の動物園が協力して、中国に所有権があるパンダで繁殖を試みた例では、サンディエゴ動物園(アメリカ)にいたガオガオ(高高)の精液を使い、スミソニアン国立動物園(アメリカ)にいるメイシャン(美香)に人工授精をしたことがある。

ほかの国のパンダも中国に行ってない

シャンシャンに限らず、中国国外で生まれたほかのパンダたちも、コロナ禍が明らかになった2020年1月以降、中国に返還されていない(表参照)。

ドイツのベルリン動物園は、2019年8月生まれの双子のモンシャン(夢想)とモンユアン(夢圓)について「おそらく来年には中国へ移ります。日にちはまだ決まっていません。すでに中国のパンダの専門家と話し合い、中国への移動を準備しています」と2021年11月11日に発表した。

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中国生まれのパンダなら、2020年1月以降に中国渡航を果たした例が1件だけある。2020年11月末にカナダのカルガリー動物園から中国の重慶動物園へ渡ったアルシュン(二順)とダーマオ(大毛)だ。

理由は繁殖ではなく、コロナ禍で主食の竹を中国から輸入できなくなったため。カルガリー動物園は、2頭の輸送に要した書類の山の写真をツイッターに投稿した。コロナ禍でのパンダの国外輸送が、いかに大変かが分かる。

中国で生まれ、神戸市立王子動物園で暮らすタンタン(旦旦)もコロナ禍で中国返還が延長されている。タンタンは2020年7月15日を期限に日本を離れる予定だった。高齢パンダをケアする設備が整った四川省・都江堰の施設で余生を過ごすほうが良いという中国側の判断だ。

タンタンは26歳で、人間なら70歳代後半の高齢。しかも心臓疾患が2021年に判明した。そのためタンタンの長距離移動を案じて、中国返還延長を切望するファンが多い。

大阪にある中国総領事館の薛剣(せつ・けん)総領事は11月4日に王子動物園を訪れ、タンタンの好物のリンゴと柿をたくさんプレゼントした。熨斗(のし)には「タンタンが神戸で幸せに暮らすように!」と手書きされている。薛総領事といえば、アメリカに対する歯に衣着せぬ物言いや、過激なツイート内容が10月下旬にNHKなどに報じられた。

一方で、タンタンのことは「病気を患っていると聞いて心配していたが、チームタンタンとタンタンファンの皆さんの暖かい愛情に包まれる中、元気そうなお姿が見られて、ホットした」(原文ママ)と11月5日にツイッターに投稿。続けて「是非、皆さんと一緒に、タンタンにスムーズな里帰りを実現させてあげたい」と述べた。

検疫が始まればシャンシャンは終日室内

都が2020年末のシャンシャンの返還期限延長を公表したのは同年12月11日。期限まで約3週間に迫った時だった。今後、2021年末の期限が延長される場合は新たな期限が、延長されない場合は返還日と観覧終了日が公表される。都は、中国側などとの調整が終われば、できるだけ早く結果を公表する方針だ。

日本から中国へパンダを運ぶ場合、健康チェックや感染症予防のために検疫する。日本の家畜伝染病予防法でパンダは検疫対象になっておらず、中国から求められた条件に合わせて検疫し輸出することになる。その条件(検疫期間など)は、相手国や時期で変わる場合がある。

筆者がシャンシャンの検疫期間を農林水産省に尋ねたところ、2020年11月末時点で「30日間」だった。だが、1年経った2021年11月17日時点では「今回はどのような条件か、実際に輸出されるかどうかも含め、こちらには何も情報が来ていない状況です」とのことだ。

検疫は、シャンシャンを室内に「隔離」して行う。もしシャンシャンが年末までに中国へ行き、検疫が30日間ならば、外で観覧できる期間はあと1週間ほどしかない。

(中川 美帆:パンダジャーナリスト)

中川 美帆

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