円安と経済の関係
円安は、日本経済に対してマイナスの影響をもたらすという意見と、メリットがあるという見解があり、どちらが正しいのか迷ってしまうかもしれません。
結論から言うと、円安は日本経済にとってメリットとデメリットの両方が存在します。
円安・円高とは?
円安は日本円の価値が下がった状態

円安とは、他の通貨に比べて日本円の価値が相対的に低下することを指します。つまり、外国通貨を基準として見た場合、日本円の価値が下がった状態を指します。例えば1ドル=80円から1ドル=100円になることです。
円安が起こる原因としては、主に日本の経済が海外の経済に比べて低迷している場合や、日本の金利が他国に比べて低い場合などが挙げられます。また、世界的な金融危機や地政学的リスクなど、国際情勢の変化によっても円安が起こるケースがあります。

円安は日本の輸出企業にとって有利です。自動車メーカーや電子機器メーカーなどが輸出品の価格が海外市場で安くなるため、需要が増加する可能性があるからです。逆に、日本の輸入企業や消費者にとっては不利であり、輸入品の価格が上昇するため、購買力が低下する可能性があります。
円高は日本円の価値が上がった状態

一方、円高とは他の通貨に比べて日本円の価値が相対的に上昇することを指し、例えば1ドル=120円から1ドル=100円になることです。

円高は、日本の輸入企業や消費者にとって有利です。輸入企業とは、海外から製品や原材料などを輸入し、国内で加工や販売を行っている企業のことを指します。例えば外国産の食品や電気製品を輸入し、国内で販売する企業が輸入企業に該当します。
つまり、円高になると輸入品の価格が安くなり、購買力が高まる反面、輸出品の価格は上昇し、売れ行きが鈍化する可能性があります。
円安のメリット
円安のメリットは、海外の人々にとって日本製品がより安価で購入しやすくなることにより、輸出業者の売上が伸びる傾向があることです。
また、海外での売上高を円に換算した際に、より多くの日本円を受け取ることができます。例えば日本からアメリカに製品を輸出して1万ドルで売却した場合、1ドル100円換算では100万円の売り上げになりますが、1ドル110円になると110万円の売り上げになります。
その他、外国人観光客が日本での滞在や旅行をよりリーズナブルな価格で楽しめるため、インバウンド消費が増加する点も円安のメリットと言えるでしょう。
円安のデメリット
円安では、輸入品の価格が上昇することがデメリットです。日本は、国内で十分に資源や食料品を生産できないため、輸入に頼っています。
石油や液化天然ガス(LNG)などのエネルギー資源はほとんど輸入に頼っていますし、自動車、電子機器などの製造に必要な金属資源、例えば鉄鉱石やアルミニウム、銅なども輸入しています。
輸入品の価格が上がると、輸入企業の利益が減少するとともに、小麦や食用油、肉類、魚介類など多くの食料品を輸入しているため、個人レベルでも物価高騰による影響を受けます。
円安が投資に与える影響
円安が投資に与える影響を「日本株」「米国株」「投資信託」「外国債券」を例にして解説します。
日本株
円安は、輸出企業の収益を向上させる要因となります。円安によって企業の収益が向上すると、株価の上昇も期待され、国内だけでなく外国投資家の投資意欲も高まります。
外国投資家が日本株を保有する際、株価の上昇に加えて、通貨変動による利益の可能性もあるのです。
例えば、円安時に購入した日本株を将来的に円高になった際に売却することによって利益を上げることができます。
しかし、円安はメリットばかりではなく、輸入企業にとっては原材料価格により製造コストが上昇し、利益の減少を招きます。それに伴う輸入企業の株価下落は否定できません。
米国株
米国株を保有することにより、米ドルなどの外貨を購入することができるため、為替変動による影響を受けることがあります。
円安が進行している場合、米国株の評価額が上昇し、外貨の評価額が日本円で見て上昇するため、利益を得られる可能性があります。
例えば、日本の投資家が1株100ドルの米国株を100株購入し、為替レートが1ドル=100円だった場合、その時点での評価額は100万円です。
1ドル=110円に変動した場合、評価額は110万円となり、日本の投資家は10万円の利益を得られます。
なお、円安の影響により米国の輸入企業は好業績・株価上昇が期待できますが、輸出企業は業績が悪化して株価下落を招く恐れがあります。
投資信託
円安になると、外国株や外国債券などの評価額が日本円で上昇するため、これらを投資先として選んでいる投資信託の株価は上がる可能性が高まります。
また、輸出企業やインバウンド関連の企業を多く組み合わせた投資信託も株価上昇が見込めるでしょう。
外国債券
外国債券とは、外国の政府や企業が発行する債券のことで、発行者の信用力に基づいて投資家に利息を支払いながら、一定期間後に元本を返済する金融商品です。
外国債券の収益は通常、為替レートや金利によって影響を受け、円安時には上昇する可能性があります。
例えば、外国債券の元本と利息を日本円に換算する際に、円安により元本・利息の日本円価値が上昇するため、収益が増加することがあります。
円安は投資家にとっては利益となりますが、逆に円高になった場合には評価額が減少するリスクもあるので注意が必要です。
円安に株式投資を始めるなら
円安に株式投資を始めるなら「輸出企業」「インバウンド関連企業」「割安な日本株」を投資先に選ぶのがおすすめです。
輸出企業の銘柄へ投資
円安が進むと、同じ製品やサービスでも海外から見ると価格が安くなるので、売上が伸びて株価が上昇することがあります。
それに加えて、多くの日本企業は決算時の予想為替レートを設定しており、円安が進むと実際の為替レートが予想よりも有利な水準になる点にも注目すべきです。
決算時には外貨建ての収益が円換算で増加するため、利益が増加する可能性があります。
インバウンド関連企業の銘柄へ投資
円安時には、海外からの訪日旅行者が増加し、インバウンド需要が拡大することが期待されます。
これにより、ホテル、レストラン、観光施設、航空会社、交通機関など直接的に旅行と紐づけられる業種だけでなく、日本の特産品や食品、文化体験などを提供する企業も注目を浴びるかもしれません。
割安な日本株へ投資
株価が割安となる理由はさまざまですが、一般的には投資家による評価の低さによって株価が下落したり、単純にまだ注目されていない企業であったりするケースが考えられます。
円安になると日本株全体が上昇する可能性があるため、財務状況や業績は悪くないのに人気がなくて割安になっている株は、安いうちに候補銘柄としてチェックしておくといいでしょう。
円安時の投資の注意点
ここからは、円安時の投資で注意すべき点を2つ紹介します。
円建て資産をすべてドル建て資産に変える
円安の場合、日本円の価値が低下しますが、逆に外貨の価値は上がるため、外貨預金や米国株などに投資することで利益を得ることが期待できます。
とは言え、すべてをドル建てに変えるのはリスクが高すぎます。為替相場の変動は予測が難しく、急激な円高が発生した場合、ドルで保有している資産が価値を失うことがあるため、ポートフォリオの分散が望ましいです。
米国株の長期積立投資を止める
長期積立投資は、積立期間が長いほどリスクを分散できるため、投資家にとっては安定したリターンを得やすい方法の1つです。
そのため、短期的な市場の変動や為替相場の変化に左右されずに投資を続けることが大切です。
円安時に米国株の長期積立投資をやめてしまうことは、短期的な思考に基づく投資行動と言えます。
投資家が為替相場の変動によって投資方針を変更してしまうと、投資家自身が本来目指している長期的な目標を達成できなくなるため、円安だからという理由で積立をやめるのは得策ではありません。
円安・円高に翻弄されない分散投資を心がけよう
円安・円高は良くも悪くも投資に大きな影響を与えます。
円安になると、外貨に対して円の価値が低くなるため、1ドルと交換するために多くの円が必要になります。例えば、1ドルを100円と交換できていたのに、120円払わないと1ドルと交換できなくなります。
したがって、外貨を円に交換する輸出企業には大きなメリット(1ドルを100円から120円に変えて20円の利益を得る)がある一方、ドルを円で買わなければならない輸入企業には大きなデメリットに。
円安が有利になる企業への投資や、日本株と米国株の組み合わせなど、分散投資が大切と心得ましょう。
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