100分並んでも見たい。大人気「怖い絵」展で恐怖を体感

100分並んでも見たい。大人気「怖い絵」展で恐怖を体感

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  • 更新日:2017/11/14

作家・ドイツ文学者の中野京子さんが2007年に発表した『怖い絵』。人間なら誰もが持つ「恐怖」を切り口に、絵画の隠された意図を読み解くスリリングな語り口が評判となり、美術書としては異例のベストセラーになりました。

その人気からシリーズ化され、今年で刊行10周年。節目の年に実現した「怖い絵」展(東京・上野の森美術館)は、スタート後わずか20日間で来場者10万人。平日も午前中から80分~60分待ちは当たり前、200分を超えることもあるという大ヒット展覧会になっています。

名画の「闇」を知識で読み解く

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ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》 1891年 油彩・カンヴァス オールダム美術館蔵 ©Image courtesy of Gallery Oldham

美術は感性を頼りに「感じる」ものと考えがちだけれど、時代背景や物語を知れば、その面白さは何倍にも跳ね上がる――。そんな想いから、『怖い絵』を執筆しようと思ったという中野さん。展覧会にはそのコンセプトがそのまま受け継がれ、会場には作品の恐怖を読み解くヒントがあちこちに散りばめられています。

作品を展示する壁には、まるでミステリーの手がかりのように意味ありげなひと言が書き込まれ、キャプションだけでなく「中野京子's eye」という書下ろしのコラム的解説も。展覧会によっては見る人の「邪魔にならない」ようにと、キャプションがやたら小さいこともありますが、そこは知識の力を重んじる「怖い絵」展。ふんだんに用意された文字情報はどれも読みやすく、本を読むように絵画の細部を理解し、じわじわと恐怖の核心に近づくドキドキ感を体験できるのです。

あまりにも残酷なジェーンの死

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ポール・ドラローシュ 《レディ・ジェーン・グレイの処刑》 1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵/Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, ©The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

メイン作品の「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、絵の前に立つと驚くほどの大きさ。同時代のドラクロワの影に隠れがちですが、当時は高く評価されていたポール・ドラローシュの作品で、その緻密なタッチ、細部まで計算し尽した構図、何よりもわずか16歳で処刑される元女王ジェーンの、散り際のはかない美しさに目を奪われます。

イングランド最初の女王の座に祭り上げられるも、政争に敗れ在位9日間で失墜したジェーン。斬首の際に首を置く台を、結婚指輪をはめた真っ白な指を伸ばして手探りしています。床の上には血を吸うために置かれた藁が。侍女が慟哭し、処刑人すら哀れみの目を注ぐ身の上なのに、少女の態度には動揺が見られません。そんなジェーンの姿を見ていると、彼女が感じた底のない絶望が伝わってきます。

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オーブリー・ビアズリー  ワイルド『サロメ』より《踊り手の褒美》 1894年 ラインブロック・紙 個人蔵

こちらは、オスカー・ワイルドが執筆した戯曲『サロメ』に、25歳で夭逝した画家ビアズリーが描いた挿絵の1枚。サロメは洗礼者ヨハネに狂おしい恋をしますが、拒まれ、踊りの褒美としてヘロデ王にヨハネの首を所望します。中野さんの解説によると、

「なぜ生きているときわたしを見なかったのか」「わたしはお前の身体に飢えていたのに」と憑かれたようにキスを浴びせるのだったが、その狂態に怖気づき、嫌悪したヘロデは、兵士たちに命じてサロメを楯で圧死させる。

『怖い絵 泣く女篇』101~102ページより引用

と、サロメまで惨殺されるという結末を迎えたとのこと。サロメは男をたぶらかす悪女のようなイメージがありますが、物語では無垢の処女として描かれています。欲望の虜になった乙女は、男性の幻想を砕く怪物にほかならない。ゆえに殺されねばならなかった......という中野さんの読み解きを思い出して、さらに背筋がぞくっとしました。

鬼気迫る吉田羊さんの音声ガイド

この「サロメ」については、ぜひ音声ガイドを聞きながら鑑賞してほしいところ。本展覧会のナビゲーターである女優・吉田羊さんがサロメに扮したセリフが素晴らしく、壮絶な色気と恋の狂気、拒絶された女の切なさがあふれていて、何度も聞き返してしまいました。

今回、音声ガイドの脚本はぜいたくにも中野京子さんの書下ろし。切れ味鋭い文体が吉田さんの迫力のあるナレーションと相まって、絵の「怖さ」がじわじわと高まります。混雑してなかなか絵のそばに行けない会場では、待ち時間に音声ガイドを聞きながら予習ができるので一石二鳥です。

入場待ち時間や混雑具合は、Twitterの「怖い絵展」公式アカウント(@kowaie_ten)に随時更新されているのでぜひチェックを。会期中無休なので、上野エリアのほかの美術館が休みになる月曜日は狙い目。なるべく並びたくないけれどひと目見たい......という人は、閉館間際の列が短くなるころを狙って、速攻で見て回るのもいいかもしれません。

「想像によって恐怖は生まれ、恐怖によって想像は羽ばたく」という中野さんの言葉通り、「怖さ」を感じるほど自分の感覚が研ぎ澄まされていくような、不思議な展覧会です。いずれにせよ、会期末にむけてますます混んでくるのは確実。気になる方はぜひ早めに、上野に足を運んでみてください。

怖い絵展

会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
会期:2017年10月7日(土)~12月17日(日)※会期中無休
開館時間: 11/14(火)15(水) 9:00~18:00/11/16(木)~ 全日 9:00~20:00
※入場は閉館の30分前まで
公式サイトはこちら

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