ビシクロブタン合成能力をもつ細菌が遺伝子操作によって誕生 - Caltech

ビシクロブタン合成能力をもつ細菌が遺伝子操作によって誕生 - Caltech

  • マイナビニュース
  • 更新日:2018/04/16
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カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究チームは、環状構造の有機分子の一種であるビシクロブタン(C4H6)を大量合成することができる細菌を遺伝子操作によって作り出すことに成功したと発表した。

ビシクロブタンはさまざまな有用物質を化学合成するときの出発材料として利用されるが、自然界にはほとんど存在せず、合成が難しかった。研究論文は科学誌「Science」に掲載された。

ビシクロブタンは環状につながった炭素原子を含む有機分子である。4個の炭素原子が2つの三角形を構成し、それらの三角形同士が1辺を共有する構造であり、四角い紙を対角線に沿って折り曲げたような形状となっている。

炭素環が不自然な角度で折り曲げられ歪んでいるため、きつく巻いたバネのように高いエネルギーをもつという性質がある。このエネルギーの高さによって、ビシクロブタンは化学反応を促進させる能力をもち、医薬、農薬、その他さまざまな材料の化学合成の出発材料として利用できる。

一方、歪みエネルギーが高いという性質は、分子構造としては不安定であるともいえる。このため、シクロヘキサン(C6H12)やシクロペンタン(C5H10)といった他の炭素環と違って、ビシクロブタンを合成できる生物学的過程が存在せず、自然界ではほとんど見つけることができない。

研究チームはこれまでに、炭素-シリコン結合、炭素-ホウ素結合など、もともと自然界には存在しない分子を遺伝子操作した細菌を使って作り出す技術を開発してきた。今回の研究では、この技術を使ってビシクロブタンを合成する細菌を作ることに成功したとする。

具体的には、シトクロムP450と呼ばれる酵素をコード化した遺伝子を大腸菌に与えた。シトクロムP450は、炭素原子3個からなる環状分子を作り出すように研究チームが定方向進化させたものである。シトクロムP450によって作られる炭素の三角形2個がビシクロブタンを構成する部品として使われる。

市販されている単純な出発材料に遺伝子操作した細菌を加えると、糖が発酵してアルコールに変わるように、通常の自然な環境条件下でビシクロブタンが合成されるという。

今回の技術のもうひとつの特徴は、右手系の分子と左手系の分子を人工的に作りわけできるという点である。

一般的に、分子にはそれを鏡に映したときの形に相当する鏡像体(光学異性体)が存在しており、右手系・左手系というように区別される。ある分子とその鏡像体は、生体に対する影響が大きく異なることが多く、右手系と左手系でまったく味覚が異なったり、一方だけが薬効や毒性をもったりすることがある。化学合成の過程では右手系と左手系の分子がランダムにできてしまい、その作り分けや分離が難しいとされる。

しかし、今回の細菌を使ったビシクロブタン合成では、あらかじめ右手系か左手系の分子のどちらか一方が選択的に作られるように酵素を遺伝子操作できることが示されている。

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