
映画を見ながら思う。たっぷり睡眠をとり、万全の状態で挑んでよかった。
女性で初めて、世界最高峰のオーケストラ指揮者に任命された、ター。多才ながら孤独で繊細。しかし見事なセルフプロデュース力で圧倒的な存在感を放ち、音楽界に君臨する。
これは片面のみから物事を見たときのターだ。この映画の恐ろしいところは、ターをひたすら映し、ターの観点から物事を見せる。ターのカリスマ性にうっとりしていると、彼女の行動がかなりいびつであることに気付けない。浮きぼりにならない限り、問題は問題とならない。
第95回アカデミー賞に作品賞、女優賞ともにノミネートされた本作。主演のケイト・ブランシェットは役で消耗するあまり、引退を検討していると話したほどだ。非常に消費カロリーの高い作品だが、鑑賞後は不思議と満たされた気分になった。(スターシアターズ・玉城愛鈴)
◇シネマQで上映中