《池袋・暴走事故》「運転免許と司法判断」を問う・関西の交通事故遺族は(2)犠牲者の意思を継ぐのは”家族” 中江美則さん

《池袋・暴走事故》「運転免許と司法判断」を問う・関西の交通事故遺族は(2)犠牲者の意思を継ぐのは”家族” 中江美則さん

  • ラジオ関西
  • 更新日:2021/10/14

東京・池袋で2019年4月、暴走した乗用車にはねられた母子ら11人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われ、禁錮5年の実刑が確定した旧通産省工業技術院・元院長の男(90)が近く刑務所に収容される。

池袋・暴走事故 関西の交通事故遺族はどうとらえたか

No image

禁錮5年・実刑判決を伝える電光ニュース(2021年9月2日・大阪市北区梅田)と事故の慰霊碑(東京都豊島区東池袋)

関西でも交通事故で最愛の家族を失った遺族が一連の推移を注視していた。

No image

長女・幸姫さんの等身大パネルと遺影(「生命のメッセージ展in札幌」2014年7月)

◆2012年4月23日、京都府亀岡市で集団登校中の児童と保護者の列に軽自動車が激突した。この暴走事故で妊娠7か月だった長女の松村幸姫さん(当時26)を亡くした中江美則さんがラジオ関西の取材に応じた。

幸姫さん含め3人が死亡、7人に重軽傷を負わせた重大事故を起こしたのは少年たち。ハンドルを握っていた少年(当時18)は居眠り運転のうえ無免許。しかし危険運転致死傷罪には問えず、刑の軽い過失運転致死傷罪での立件となった。2013年9月に懲役5年以上9年以下の不定期刑が確定した。

No image

滋賀県警察学校で講演する中江さん<2021年10月7日>

No image

コロナ禍で講演機会は減っているが、思いは伝え続ける

中江さんは、加害少年の刑法上の処分が決まった後も、被害者の会「古都の翼」を立ち上げて無免許運転の厳罰化を求める活動を続けた。その活動は2014年5月施行の自動車運転死傷行為処罰法につながった。
そして2018年、犯罪加害者の更生支援を目指す団体を立ち上げる。きっかけは、刑務所を出所したある男性との出会い。この男性は服役中に刑務所で見たテレビニュースで、事故後、加害者への怒りを訴える中江さんの姿が忘れられなかったからだという。

中江さんは当初、「犯罪者の気持ちなど理解したくもない」と思っていたが、 「犯罪者から更生したいのならば、自分の罪を心底憎んでほしい。そこから更生の資格がある」と思うようになった。更生支援団体には、ラテン語で「光」を意味する「ルミナ」と名付けて活動している。

・・・・・・・・・・・・

事故が起きたニュースに触れ、犠牲となった松永真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(当時3)、輝くような未来が待っている年齢を足しても加害者の年齢(90)に満たないことで、自分の怒りに火が付いたのを鮮明に覚えています。

この事故も無免許と何ら変わらないし、車だけじゃなくバイクも自転車も自分の足ではない宙に浮いてる状態で走らされてるんです。それなのに脚の治療をしている年老いたコントロールできない状況の者がハンドルを操作する理由が理解できなかったです。
世間の怒りを受けているのに、 「アクセルを踏み続けたことはないと記憶している」「車に何らかの異常が生じ暴走した」 などと通用するはずのない逃げ道を作って弁護人と刑事裁判に挑んできたことが、最も許せないと思いました。

No image

かつて刑務所での講演を聞き、社会復帰した元受刑者と対話する中江さん

やはり「曖昧な法律体系が犠牲者の苦しみに塩を塗り、さらに傷口を広げるんだなぁ」と感じるのです。だから周りの人達が、(被害者遺族に対しても)目をそらさず支えてあげてほしいとしか思えないのです。

味わった苦しみが大きすぎると、人の優しさや喜びが激しく沁(し)みます。 これは皮肉なことかも知れません。被害者遺族だから感じることかも知れません。

亡くなった者には希望も何もない。そこからの進化はなく、止まったままです。「死んだ」ことで一方的に人生を終わらされた犠牲者の意思を継ぐのはその家族です。

私は被害者遺族として再発防止に取り組むかために、いつも先頭に立ってきました。だからわかります。前に立つ者はいつも孤独です。

No image

更生保護に関するシンポジウムにパネリストとして語る中江さん<2021年8月8日 京都市内>

被告(現在は受刑者)の実刑が確定し、いったんは気持ちの区切りをつけることができたと思いますが、さまざま節目で遺族としての思いを発信している真菜さんの夫・拓也さんは今後、あらぬ誹謗中傷など「まだまだ二次被害があるのでは」と懸念はあります。

【二次被害】事故や犯罪による直接の被害に加え、被害者・遺族に対する心ない言動やインターネットでの悪口などによる、いわれなき誹謗や中傷。中江さんは事故後、インターネットでこうした誹謗中傷の書き込みに悩まされ、2013年に京都府警に刑事告訴し、当時15歳の少年が遺族に対する名誉毀損容疑で書類送検された。

・・・・・・・・・・・・

No image

池袋暴走事故現場に建てられた慰霊碑 (東京都豊島区東池袋4丁目)

No image

慰霊碑には未来への「つぼみ」を表現した経緯を記している

次回(10月15日・最終回)は「運転免許のあり方」を藤本尚道弁護士に聞く。

ラジオ関西

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加