父の遺産は「一軒家」のみ。母が住み続けたら子どもは相続できない?

父の遺産は「一軒家」のみ。母が住み続けたら子どもは相続できない?

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  • 更新日:2023/09/19
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2021年の司法統計によると、相続トラブルがもっとも多いのは、相続財産が5000万円以下のケース。相続財産は現金・預金だけではなく、分割が難しい土地や建物も含まれる。都市の持ち家を相続したら、該当することが多い金額だ。できることなら引き継ぎたくない借金も、もしあれば相続しなければならない。

累計115万部突破の「超基本」シリーズ最新刊で、相続専門の税理士法人「ベンチャーサポート相続税理士法人」の古尾谷裕昭代表税理士が監修した『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない 相続・贈与の超基本』は、遺産分割や節税で損をしないための基礎知識を網羅し、2024年1月1日に施行される相続税・贈与税の税制改正にも対応している。

この記事では、相続でよくあるトラブルの一つ「財産が持ち家しかなくて、分割できない!」というケースについて、『相続・贈与の超基本』から抜粋して解説したい。

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相続の対象となる財産が持ち家だけという場合、複数の相続人で所有権を分割することもできるが、持ち家を利用しない相続人の同意は得にくいのが普通だ。売却してお金に換えてから分割する方法もあるが、売りたくない、あるいは売れないということもあるだろう。

亡くなった父の遺産は、住んでいた土地と家屋のみ。高齢の母は、このまま住み続けたいので売却したくないと言う。だが、一人息子も自分の相続分がほしいという場合、持ち家、つまり土地と家屋をどう分割するのかは、難しい問題だ。

解決法の一つは、相続人のうちの1人(上記のケースでは母)が、該当の土地・家屋のすべてを相続し、そのほかの相続人(上記のケースでは一人息子)に対して代償金を支払う、というやり方だ。代償金の額は土地・家屋の評価額から算出すればいい。

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「代償分割」を選択すれば、財産である土地・家屋をそのままの形で残しながら、相続人の間で分配することができる(イラスト ハザマチヒロ)

「配偶者居住権」を活用して、被相続人の配偶者(上記のケースでは母)が持ち家に住み続けられるようにする方法もある。遺言書の記載に基づいて、または遺産分割協議で合意が得られれば、配偶者は亡くなるまでの居住権を得て、ほかの相続人(上記のケースでは一人息子)は所有権を相続する。ただし、所有権を相続した相続人は、配偶者に対して家賃を請求したり、立ち退きを要求したりすることはできない。

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遺産が土地・家屋のみの場合、お金に換えて相続人の間で分割する「換価分割」のほかに、「代償分割」と「配偶者居住権」を利用する場合がある(イラスト ハザマチヒロ)

財産の分割に関しては、親世代が元気なうちに話し合って決めておくことで、無用なトラブルを回避したい。

(構成/生活・文化編集部 上原千穂)

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