真実を明かそう。「国が年金を無駄遣いした説」は本当か?

真実を明かそう。「国が年金を無駄遣いした説」は本当か?

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  • 更新日:2018/09/25
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年金額が上がらない原因としてよく挙げられる、国が行った「グリーンピア事業」。ねんきんお財源を利用して保養基地を作るというものですが、本当にこのせいで今の年金額が上がらないのでしょうか? 今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんがグリーンピア事業について、そしてその廃止の理由などについて詳しく解説しています。

年金財源を昔いろんな施設に使ったから年金の財政が悪化して年金が上がらないのか

年金額ってなかなか上がらないですよね。この辺の理由や仕組みは有料メルマガ「学問としての公的年金講座」で随分長々と言ってきた事ではあります。

年金額は上がらないし、保険料や税金ばっかり上げて、こういう年金の事情は国が昔いろいろと年金の財源を使って無駄遣いしたのが悪いんでは? という声もよくあります。

確かに、昭和40年代から50年代にかけて、年金積立金という年金の財源を利用して大規模年金保養基地というのを作ったんですね。これをグリーンピアっていうんですけどね。このグリーンピア事業をやってたのが、年金福祉事業団といいます。

これで余計な施設とか乱立させたから財源が逼迫して、年金額が上がらないんだ! というのであればそれは誤解ですし全く年金財政に悪影響を及ぼしてません。あの平成19年に大問題になって支払ってなかった年金を1兆6,000億円くらい支払う事になった消えた年金記録問題でさえ年金財政を悪化させる事由にはなっていない。それは元々支払うはずだったのが支払われてなくて支払われたものだから、消えた年金記録問題で回復した年金額で年金財政に悪影響は及ぼさない。

結局、あの「消えた年金記録問題」とは一体なんだったのか?(hiroki参考記事)

年金財政を逼迫させてきた主な原因は結局のところは予想をはるかに超える少子高齢化と、平成に入ってからの長ーい経済の停滞が原因。よく年金の抜本改革が必要だとか言われますが、経済が成長しない中でどんなに年金制度の中身を変えても根本的な解決にはならない。

平成21年に旧民主党が選挙で大勝して掲げていた現在の満額の老齢基礎年金(40年間キチンと保険料払った人は基礎年金満額約65,000円)を超える最低月7万円を保障する最低保障年金なんていうのはオイシイ話でしたが、現実離れしたオイシイ話はこの経済停滞と人口衰退の中ではあり得ないと思ったほうがいい。

さて、国が年金積立金を使っていろいろ施設を作ったのは、年金受給生活に入った人が単に余生を送るだけじゃなくて、有意義な生活を送るのに必要な場所を提供すると共に、一般の人たちの余暇にも役立てようとしたんです。

なんでそんな事に財源使い始めたのかというと、昭和40年代~50年代の経済成長期にあわせて労働時間の短縮とか休日の増加があり、休みや自分の時間は増えたけど、余暇を有意義に過ごす保養地とかレジャー施設がありませんでした。あったのは温泉地みたいな観光地。そこで、国は当時の厚生年金保険法により年金積立金を財源に被保険者とかの福祉の向上を図るための事業ができるってなってた。

グリーンピアは昭和55年に開業されて運営は別に委託して行われてきましたが、平成17年には廃止されて民間や地方自治体に譲渡されました。もちろん、運営のあり方に全く問題がなかったわけではないでしょうけど、「赤字続きでやってらんねー!!」から廃止したのではなく、この辺も時代が変わってきたからです。民間企業が類似の事業を提供し始めたんです。東京ディズニーランド(昭和58年)とかハウステンボス(平成4年】という大きい施設もできた。

また、昭和24年4月から1ドル=360円のスゴイ円安の固定相場制でずっと来ていたのが、昭和46年8月のニクソンショックで一気に円高になっていき、昭和48年2月に変動相場制に移行し(この時点で1ドル=265円】、だんだん昭和50年代くらいから海外旅行にも行く人が増加してきた。ちなみに、昭和60年のプラザ合意の時にまた1ドル=230円くらいだったのが、一気に140円台くらいにまで円高に進んだ。海外旅行なんて昔は富裕層のみが出来るような事だったのがお手軽なものとなってきた。

だからわざわざ国が年金積立金財源を使って保養施設とか作る必要は無くなってきたから廃止したんです。

グリーンピア事業のように、年金積立金を財源として被保険者の福祉の向上を図る事業は年金福祉還元事業と呼ばれました。代表的なものとしては、年金住宅融資事業と年金福祉施設事業。

年金住宅融資事業は当時は住宅ローンやってる民間金融機関はほぼ無かったから、多くの人がこの年金住宅融資を受けました。大体累計融資件数は400万件くらいで、融資額は25兆円くらい。あ、融資は破産とかないなら返済されるものですよ(笑)。

年金福祉施設事業は被保険者の福祉の向上のために公の会館とかを建設運営する事業。昔よく見かけませんでした? 厚生年金病院とか厚生年金会館とか、健康保養センターとか、社会保険センターとか。役割としては医療施設、文化施設、健康スポーツ施設などの役割を果たす施設。今はホームページ上では何とか病院の横に旧厚生年金病院とか記載されてたり、何とかセンターの横に社会保険センターとか書かれてたりしますが。

また、年金住宅融資事業については、バブルが崩壊して経済の停滞期に入って低金利になったから民間金融機関が住宅ローンに力を入れるようになってきたんですよ。となると、公的な年金住宅融資事業は必要性が無くなってきますよね。また、年金福祉施設も民間と競合するのは新設を行うべきではなかったので廃止や民間譲渡が進みました。

というわけで、グリーンピア事業が赤字続きでやってられんわ!! という理由からやめたというのではなく、経済の変化や民間企業の活動の活発化で年金積立金を使って事業を行う必要性が無くなってきたからだったんです。だから平成17年でグリーンピア事業はすべて廃止された。

まあそこで、いろいろ施設を建設するために年金積立金から2,000億円くらい使ったけど、売却する時に40億円くらいしかならなくてものすごく損したから年金財源が足りなくなった! とか報道されたりしていましたが、厚生年金積立金120~130兆円(平成12年頃)からたったの2,000億円程度使ったくらいでは年金財政に影響を与えるものでは全くありません。120兆円から2,000億円使ったっていうのは、積立金の0.1%くらいなもんです^^;

それに、年金財源は現役世代の保険料をそのままその年の年金受給者に送るという賦課方式を取ってるから、積立金はそんなに重要ではありません。年金は今は保険料がそのまま年金受給者に向かう賦課方式(補助的に年金積立金や税金も投入してるから修正積立方式とも呼ばれる)を取っていますが、元々は完全な積立方式から始まりました。まあ、保険料を積み立てながらその間運用して、将来はその積み立てた保険料と利子収入を受け取るという事ですね。

自分で積み立てて運用したほうがいい! っていう人も沢山いますよね(笑)。だから今はキチンと国民年金保険料や厚生年金保険料を納めてる人には、確定拠出年金も上乗せ年金として利用する人も多くなってきました。

ただ、昭和48年から年金を物価や賃金の伸びで年金に反映させるようになったから、予測のつかない経済変動は積立では対応ができなくなっていってだんだん賦課方式に向かっていったんです。ちょうど昭和48年というのはオイルショックが起きて、物価が狂乱的に上がった年でした。2年間で40%くらい。40%も2年で上がってしまうと、ちんたら保険料積立やっても追い付かないですよね。

昭和25年6月に北朝鮮が突然韓国に進撃して朝鮮戦争(昭和28年休戦)が勃発し、それがキッカケで日本は好景気(特需景気という)に向かって、昭和30年頃から日本は高度経済成長期に入って、物価や賃金も非常に上がっていきました。物価だったら毎年5%超えとか、賃金なら毎年10%超えとか。

あんまり、現役世代のお給料と年金世代の年金額に差が生じてしまうと、年金の生活保障としての機能を果たさなくなってしまうから、その過程で積立方式から賦課方式へと転換していく必要があった。とはいえ今は年金受給者も4,000万人くらいいるし、年金支給も本格的な時代だから積立金やその運用収入は年金給付にのみ補助的に充てられています。

よく、年金積立金については運用によっては数兆のお金が動くから、運用がたまたまマイナスになろうもんならものすごくメディアは騒ぎますよね。この年金積立金の運用成績見て年金が支払われなくなるとかどうとかっていう議論はあまり意味がありません。

ちなみに年金積立金でいえば、現在までに平均収益率が3%ほどあり、また、今まで上げてきた累積収益は66兆円となってます。

年金積立金管理運用法人GPIF

さて、話を戻しますが福祉施設の売却損だけを見ると大損してますが、グリーンピア事業で約4,000万人~5,000万人くらいの利用者が居たから利用者の満足度から見たらだいぶ貢献したのではないでしょうか。年金福祉施設の厚生年金病院とかは地元の存続要望が強かったから、旧厚生年金病院として継続してはいますけどね。

にしても僕が高校生の時に、厚生年金病院ってなんで年金と病院が重なった名前なんだろう?とよく疑問に思ってた時がありましたね…^^;。年金と病院に何の関係があるんだろうと素朴な疑問を持っていました(笑)。

image by:akiyoko / Shutterstock.com

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