時間に追われる感覚が以前と比べて「強くなった」理由

時間に追われる感覚が以前と比べて「強くなった」理由

  • @DIME
  • 更新日:2022/08/06
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セイコーが先日実施した調査では、人々の時間のとらえ方がコロナ前に戻っていることがわかった。時間学の専門家、千葉大学大学院 人文科学研究院 教授の一川 誠氏に、ビジネスパーソンが時間を効率的に計画するポイントなどを聞いた。

セイコーの調査 約半数が以前と比べて「時間に追われる感覚が強くなった」

コロナ禍生活3年目を迎え、時間を意識する感覚や、時間に追われる感覚が戻ってきているようだ。

セイコーが2022年4月28日(木)~5月1日(日)、全国の10代~60代の男女1,200人に対して調査を行った結果が「セイコー時間白書2022」として発表された。その調査結果より、気になる一部の結果を紹介する。

●48.0%が時間に追われる感覚が以前と比べ「強くなった」

「時間に追われる感覚」について尋ねたところ、全体の66.3%が「時間に追われている」と感じ、約半数の48.0%が時間に追われる感覚が以前と比べ「強くなった」と答えている。

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●「やることが増えて時間が足りない」が前年から10pt増加

コロナ禍以降、時間の使い方で困っていることを尋ねたところ、「他人がどのような時間・リズムで生活しているかがわからない」(52.5%)がトップに。次いで「時間を自分で効率的に計画し、使うことが難しい」(51.1%)と続いた。

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前年と比較すると、「時間が足りない」と感じる人が37.8%から48.1%と10ptと、大きく増加した。

昨今、日常生活の一部が徐々にコロナ前の形に戻ってきていることから、「時間に追われる」「時間が足りない」という意識に影響があると考えられる。

「時間に追われる」感覚の心理的影響

同調査結果では、約半数が時間に追われる感覚が以前と比べ「強くなった」と答えていた。「時間に追われる」感覚を持つことは、人の心理にどのような影響があるのか。同調査にコメントを寄せていた時間学に詳しい千葉大学の一川誠氏に聞いた。

【取材協力】

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一川誠氏
千葉大学大学院 人文科学研究院 教授
専門は実験心理学。実験的手法により人間が体験する時間や空間の特性、知覚、認知、感性の研究に従事。現在は、視覚や聴覚に対して与えられた時空間情報の知覚認知処理の特性の検討を行っている。『大人の時間はなぜ短いのか』(集英社新書)、『時計の時間、心の時間-退屈な時間はナゼ長くなるのか?』(教育評論社)など著書多数。

「ビジネスパーソンにとってスケジュール管理は必要と思いますが、『時間に追われる感覚』自体は不必要と思います。時間の感じ方や生体リズムには、かなりの個人差があります。そうした個人の時間特性に対応しないスケジュール設定や時間の使い方を強いられることでフラストレーションを感じたり、心身の健康に不調をきたしたりするようなことは避けるべきです。

常に締め切りを設定されていて『時間に追われる』感覚が強すぎると、認知的柔軟性が損なわれ、エラーが多くなることが心理学ではよく知られています。エラーの少ない、質の高い仕事をしたいのであれば、時間に追われる状況より、余裕がある状況で作業するのが望ましいと思います」

質の高い結果を出すには

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たまにビジネスパーソンの間で「時間に追われたほうが、取り組みやすい」などの声も聞かれるが、やはり時間に追われるのは苦しいものだ。一川氏は、質の高い結果を出す方法について次のように述べる。

「一般的に『時間に追われる』作業の仕方はおすすめできません。締め切りに合わせて作業をすると、不測の事態によって締め切りに間に合わないことが多くなりますし、『時間が十分になかったから』という自分に対する言い訳を用意することで『やっつけ仕事』になることが多く、結果の質は下がりやすくなると考えられます。

質の高い結果を出したいのであれば、締め切りに合わせて仕事をするのは避けて、早めに仕事を進めたほうがいいと思います。というのも、目標に時間的、空間的に近づくとモチベーションも強められる(目標勾配)ため、早めに作業を始めて目標に近づけば、その分、十分な時間をかけて質の高い結果を出しやすくなるためです」

「時間が足りない」と感じる理由

セイコーの調査結果では、約6割が1日24時間では「足りない」(57.2%)と答え、前年に比べ、時間が足りないと感じる人が増えていた。人が「時間が足りない」と感じる理由はどのようなことがあるのか。

「いくつか理由があると思います。まず、技術の発展などもあり、望めばできること、可能なことが増えました。ところが、できる事柄は増えても、それらを実行できる時間は増えたわけではありません。そのため、時間が足りないという感覚が強められていると思います。

また、自分の能力を過大評価することで、時間の見積もりが甘くなる認知的バイアスがあることも知られています。それは『計画の誤謬バイアス』と呼ばれます。いつも時間が足りないと感じているということは、業務を実行する上での自分の能力を過大評価して、十分な時間を確保できていない可能性が高いと思います。過去の作業記録を見直し、実際に作業を実行するのに必要な時間を確認することをおすすめします」

有限な時間を有意義に使うためには

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そこで一川氏に、「時間が足りない」というビジネスパーソンに向けて、時間の有効な使い方をアドバイスしてもらった。

「したいこと、できることを全部できるだけの時間は、誰にもないと思います。有限な時間を有意義に使うためには、仕事の優先順位を考慮した上で、仕事の整理、取捨選択することが重要です。

時間的に余裕があるときに、本当にしなくてはいけない仕事に十分に時間を割り当てられるか、必ずしもしなくてもいい仕事に長い時間を割り当てていないか、確認してみるのです。

時間的に少し離れている事柄については、大局的な視点から『すべきこと、しなくてもいいこと』を判断しやすくなります。そこで金曜日などに、次の週の月曜日からすべき事柄を整理することをおすすめします。時間的に近すぎると、些細なことが重要に思え、大局的判断が困難になります」

「時間に追われている」「時間が足りない」と感じているなら、ぜひ実践してみよう。

「心を動かす時間」を作ろうとする心理的効果

ところで、セイコーの調査では、こんな結果も出ていた。それは「心を動かす時間を能動的に作ったか」という問いに対して、「作った」と解答した人は、30代は26.0%、40代は20.0%に留まった点だ。一方で、10代、20代は34%前後と比較的高かった。

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「心を動かす時間」、つまり感動する時間を作ろうとすることで、どのような心理的な効果が得られるのだろうか。

「心が動くような特別な出来事が体験できると、そのことは長く記憶にとどまります。そうした記憶した事柄が多いと、あとでその期間を想起した際に、『有意義な体験ができた』『充実した時間を過ごすことができた』と感じられて、自己評価を高めやすくなると期待できます。特に、自分で能動的に行動することで、そうした特別な体験ができると、さらに自己評価は高くなるようです。

他方、後で想起した際に思い出せるような特別な事柄がなかった期間は、あっという間に過ぎた空虚な期間と感じられ、自己評価を低下させかねないようです」

心を動かす時間は、能動的に行動して得ようとすることは、自己評価が高まるという。ぜひこの方法も取り入れてみよう。

出典:「セイコー時間白書2022」

取材・文/石原亜香利

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