■検証・ステップワゴンの室内装備群

空調性能が見ものです
今回のリアル試乗・ステップワゴンの第11回は、またユーティリティ編で、室内装備群の中の空調/オーディオ関連について見ていきます。
何といっても3列シート車だから、採りあげる項目もたくさんあるのです。
よろしくお付きあいくださいまし。
●空調/オーディオ
・トリプルゾーンコントロール・フルオートエアコンディショナー(プラズマクラスター技術搭載)

正式名称「トリプルゾーンコントロール・フルオートエアコンディショナー(プラズマクラスター技術搭載)」・・・長い!最廉価ステップワゴンAIRは「左右独立温度コントロール式フロント・フルオートエアコンディショナー + リヤ・マニュアルクーラー(プラズマクラスター技術搭載)」と、もっと長くなる

ほんとうは風量も回転式であればありがたい
…といっても「トリプル(triple)」なのは前席左右、2列め以降の温度調整が独立なだけで、吹出口や風量の選択は前席・2列め以降の「ダブル(double)」にとどまっています。
空調の働き自体は、「AUTO」押しで設定した温度と外気温、現在の室温を勘案し、吹出口、室温、風量、内外切り替えを自動で行う、通常のオートエアコンと同じです。
この「トリプルゾーン・・・」は、スパーダ以上に標準装備、AIRは「左右独立温度コントロール式フロント・フルオートエアコンディショナー+リヤ・マニュアルクーラー(プラズマクラスター技術搭載)」となります。

ATレバーと同じ傾斜面にあるので操作はしやすいが、ときに表示部が外光反射で見にくくなることがあったのはちょっと残念でした
操作パネルはATシフトの左にあり、パネルが上を向いていて操作はしやすいのですが、それゆえに光線の向きしだいではパネルが光り、表示が見にくいこともありました。
その表示は、Honda CONNECT画面の上部でも行われます。


















願わくは、くもり止め(デフロスター)を長時間働かせていると夏場ならガラス下端内側が、冬場なら下端外側が、ガラスを境とする内外の温度差でくもるので、現状のモード選択5つからデフロスターだけ追い出して独立させるのと、温度調整を「トリプルゾーン」にもうひとつ追加した「カルテットゾーン」の4系統にし、デフロスター風だけ外気温と近似した温度にしてほしい。いつまでもくもり知らずで走ることができると思うのです。
・Clean Air

空調パネル液晶に表示されるClean AirのPM2.5濃度

Honda CONNECT画面にも表示される
PM2.5濃度が高くなると作動、濃度を下げるデバイスです。
「AUTO」使用のときに車内のPM2.5濃度しだいで自動でONとなり、車内のPM2.5濃度を監視して空調パネル(Honda CONNECT付き車ならその画面にも)に表示されます。

Clean Airの資料

Clean Airの資料
検知する微粒子の大きさは直径0.5~2.5μm。これより大きい20~50μmが多く、全体では10~100μmにまでおよぶ花粉は検知しないものの、花粉症の原因であり、検知範囲サイズにある直径約1μmのアレルゲン物質は微粒子として間接的に検知するため、結果的に花粉もとっつかまえてくれます。ありがたし。
このClean Airは、清浄速度の調整もOFFにすることも可能です。
この空気清浄機、名称が「Clean Air」だけに、安いステップワゴンAIRも含めて全機種標準装備。
「PM」とは昼の12時から夜中の12時前のことではなく、「Particulate(微粒子)-Matter(物質)」の略称。そして「2.5」は2.5μmのことで、1000分の25ミリ(1μmは1000分の1ミリ)・・・「PM2.5」とは大気中に含まれる「直径2.5μm以下の微小粒子(状)物質、微小粒子状浮遊物質」をいうわけです。

東京都ホームページから引用の写真。いちばん左のPMは拡大したもので、実際は下線最左の汚れみたいなつぶがPM2.5だ
それがいかほどのサイズなのか、東京都のホームページから引用した写真をごらんください。
こんなちっこいものを検知するなんて! かつてうちで使っていた3代めサニーの助手席側吹出口のすぐ裏にまで、枯れてパリッパリになった木の葉がやってきていたことを思い出すと隔世の感です。
・吹出口(1列め席)
最近のホンダ車の一部のフロント空調吹出口がおもしろい。
通常ならフィンがむき出しになっているのに、ステップワゴンの吹出口のおもて面には、ひと頃のブルーバードSSSよろしく六角形のグリルが。これが固定されており、風向きを決めるフィンはその向こう側にある・・・何だか風向きをじゃまして吹き出す風を乱す気がするのですが、薄く造ってあるせいか、何の影響もありませんでした。






・シートヒーター(運転席&助手席)

シートヒータースイッチは空調パネル下に
スパーダ以上に標準、スパーダPREMIUM LINEには2列めシートにまで標準装備。スイッチは空調パネル下にあります。
温度は強・中・弱の3段階で、最初のひと押しでいきなり「強」、以降、押すごとに「中」「弱」「OFF」の繰り返し。消し忘れや低温やけどを防ぐためでしょう、ある程度の時間が経つと自動で1段低くなり、最後はOFFになるという親切設計になっています。




・後席オートエアコン

リヤオートエアコンの操作パネルは2列め席頭上にある
2列め以降、こちらはこちらで自在にコントロールできる空調がついており、内外気切り替え以外のひととおりのことはできるようになっています。
ただし前席パネルが「A/C」ボタンがONになっていないと冷風は出ず、OFFのときにファンスイッチを押してもただの風ないし温風が出るのみ・・・つまり、夏場に後席だけ涼しい思いをすることはできないということです。まあ、そのような使い方をする例は皆無でしょう。
しおりさんの操作写真を見ればおわかりのとおり、操作パネルは天井に設けられているため、腕をかなり伸ばさなければ手が届かないのが難点といえば難点。小柄なひとなら中腰を強いられるでしょう。

一部を除き、フロント並みの機能を備えている

リヤエアコンはフロント空調パネルででも操作可能
かつてのように、この種のボディが左側スライドだけだったなら操作しやすい右側壁面に設置したでしょうが、両側スライドとなるとそうもいかず。リモコンという手もありますが、何だか紛失しそうでイヤだ・・・どこかいい場所があるといいですな。
リヤ空調の操作は前席の空調パネルを切り替えて行うこともできるし、前席エアコン同様、Honda CONNECT画面上部にも状態表示されます。








・吹出口(2列め・3列め)

リヤの吹出口は、ルーフサイドにある
後席用吹出口は、2列め、3列め席の左右ルーフサイドに設けられています。





右後輪付近に垂れ落ちるエアコン除湿水
ところで前後エアコン(の中のクーラー)稼働中のステップワゴンを外から見たら、右後輪近くから除湿された水が吐き出されていました。車両構造図を見てはいませんが、このあたりにエバポレーターが設置されているようです。
<換気性能>
いつもリアル試乗で行っている、クルマのラム圧(走行風圧)による外気導入量を筆者の感覚的判断で測る換気性能。空調設定を「上半身送風」「風量OFF」、内外気切り替えを「外気導入」にし、80km/h、100km/hで走行したときの外気の自然導入量を、センター吹出口に手をあてて測るというヤツです。
今回のステップワゴンはどうか。
結論からいうと、拍手パチパチの1等賞! これにはびっくりしました。
これまで筆者は「経験的に、ラム圧の導入量はトヨタ車が多い」と書き、実際、リアル試乗の第1回2回で採り上げた「カローラクロス」「ヴォクシー」も筆者の論を立証してくれましたが、今回のステップワゴンはこれらトヨタ勢・・・いや、それ以前にも乗ったトヨタ車をも超えています。
【80km/h時】
ファン風量全7段階のうち、以下それぞれの状態で次の風量に相当。
・全窓閉じ:1.0
・運転席30mm開:1.5
・助手席窓30mm開:1.5
・両席窓 30mm開:2.0
【100km/h時】
ファン風量全7段階のうち、以下それぞれの状態で次の風量に相当。
・全窓閉じ:2.0
・運転席30mm開:3.0
・助手席窓30mm開:3.0
・両席窓 30mm開:3.5~4.0
どの状態でもラム圧量は、ただでさえ多めのトヨタ車よりなお多いのですが、特に注目は、100km/h時の両席窓30mm開時。3.5~4.0なんて、どこかの窓を閉め切っていないか、どれかが半ドアかを疑ったくらい、たくさんの風が入ってきました。
このラム圧量の豊かさが、ステップワゴン試乗第2回でもったいぶった空調関連のほめたかった点。
ホンダもちゃんとPRしたらいいのに。
ましてや4人乗り5人乗りのクルマではない、7人8人乗るクルマならなお重要なことだし、トヨタはともかく、他社はあまり熱心とはいえない(ように思えてならない)換気性能について、カタログや報道向け資料でえらそうにじまんしてもいいと思いました。
もうひとつうれしいことがありましたが、またもったいぶってそれはステップワゴン試乗の最終回で…
・Honda CONNECT

Honda CONNECT画面。試乗車には11.4インチ版が載っていたが、ほかに9インチ版、8インチ版がある
全機種Honda CONNECTは工場オプションで、オプション選択した場合のためのスタンバイ装備「Honda CONNECT for Gathers + ナビ装着用スペシャルパッケージ」が全機種標準装備。
その内容はリヤカメラ、ステアリングスイッチ、USBポート、デジタルテレビ用プリントアンテナなどで、ナビ本体は、販社オプションのHonda CONNECT対応Gathersナビ3種から選択します。
試乗車には最上級(?)の11.4インチ版がついていました。

画面下いちばん左のスイッチを押す(ジェスチャー操作も可)とモニターが上昇し、その向こう側にSDカードスロットとCD/DVDディスク挿入口が現れる
なお、モニターは左のイジェクトボタンで上昇し、その奥からSDカードスロット、CD or DVDのディスク挿入口が顔を出します。
・ステアリングスイッチ

ハンドル左スポークのステアリングスイッチ。
ハンドル左スポークにはオーディオ関連のステアリングスイッチが備えられています。
いちばん上が横向きシーソースイッチで選曲など、中段が上下シーソーの音量調整、そして最下段に通話スイッチと、最近のホンダ車で特徴のレフトセレクターホイールがあり、ホイール上下まわしでソースの選択、押して「決定」となっています。
・マルチビューカメラシステム
「車庫入れ編」で紹介したマルチビューカメラシステムを、ここではしおりさん出演でふたたび解説。
車両周囲計4つのカメラで捉えた自車まわりの様子をHonda CONNECT画面に表示、見とおしの悪い道やバックでの駐車操作/車庫入れなどで重宝します。
画面切り替えは画面内のスイッチでも行えるほか、ワイパースイッチ先端にもついています。
ではでは、各画面をしおりさん入りでどうぞ。








今回はこれでおしまい。
次回もユーティリティ編で、各部の収容場所を集めた「ストレージ編」でお逢いします。
(文:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm) 写真:山口尚志/本田技研工業/東京都ホームページ)
【試乗車主要諸元】
■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕
●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)
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山口 尚志