ラストは自分の死、小人症で末期がんのイケダが撮った愛とSEX

ラストは自分の死、小人症で末期がんのイケダが撮った愛とSEX

  • JBpress
  • 更新日:2021/11/29
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© 2021 愛について語る時にイケダが語ること

(山田敏弘・国際ジャーナリスト)

コロナ禍の2021年6月、一風変わったドキュメンタリー映画の上映が開始された。まず映画の公式サイトに掲載されている作品の説明文を紹介したい。

“池田英彦・40歳・四肢軟骨無形成症
スキルス性胃ガンステージ4・趣味:ハメ撮り
身長112センチの青年が人生最後の2年間を凝縮した
初主演・初監督作にして遺作!”

この説明文を読んで混乱した人もいると思うので、「翻訳」を試みるとこうなる。

「通称コビト症の四肢軟骨無形成症という障害をもって生まれた身長112センチの池田英彦氏が、末期がんを宣告され、人生最後の2年間で自らを主役にした映画を作るべく、女性とのセックスを記録していく――」

これだけでもう普通のドキュメンタリー映画ではないのが分かるだろう。この作品――『愛について語るときにイケダの語ること』――は単なる「下ネタ」映画ではない。自ら2年にわたってカメラを回したイケダは、20年来の親友で本作のプロデューサーでもある真野勝成氏に協力を求めた。TVドラマ『相棒』シリーズや映画『デスノート Light up the NEW world』等の脚本を手掛けてきた真野氏に、「僕が死んだら映画を完成させて、必ず公開してほしい」という遺言を残し、そして逝った。真野氏は、60時間におよぶ動画を託された。

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初主演・初監督作品にして遺作

こうして真野氏の手で完成された作品は、2021年6月に東京で公開されると大きな話題を呼び、大手新聞にも取り上げられるようになる。さらに、この映画を見て、多くの個性的な面々が応援コメント(公式サイト:https://ikedakataru.movie/)を寄せてくれた。映画監督・原一男、メディアアーティスト・落合陽一、漫画家・しりあがり寿、エッセイスト・能町みね子、作家・中村うさぎ、などである。

この『愛について語るときにイケダの語ること』は東京での公開終了後に、全国各地で上映されてきたが、再び東京に戻ってきた。11月26日からアップリンク吉祥寺で2週間の「凱旋アンコール上映」が行われることが決まったのだ。

同作品とともに東京に戻ったプロデューサーの真野氏に、ネタバレにならないよう、なるべく内容は避けて「イケダ」について話を聞いた。

知ってみたかった“普通の性風俗店”のその先

――各地で上映されてきましたが、全国は何カ所、回ったのですか?

真野 今のところ18カ所です。

――特に印象的な場所はありましたか?

真野 それぞれ印象的でした。東京も含め、どの土地でもそうなんですが、舞台挨拶の後でお客さんと直接話すと「実は自分・・・」と、自分の秘密を初対面の僕に話してくる人たちが多かった。死とか、セックスライフとか、病気のこととか、いろいろ話してくれて、それが面白かったですね。

イケダががんになって最初にやりたいと言ったのが「ハプニングバー」に行くことだったんですけど、「ハプニングバーを知ってる人いますか。行ったことある人いますか」って(観客に)聞くとかなりいるんです。意外と手を上げるし、手を上げなかった人も後で「実はあのとき手を上げなかったけど、行ったことあるんです」と話をしてくれたり。女の人も多く、「私もがんになった時にまず(ハプニングバーに)行ってみたいと思った」と言った女性がいました。

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プロデューサーを務めた真野勝成氏(筆者撮影)

――この映画が人の心を開くのでしょうか。

真野 そうですね、さらに言うと、多くの人が看取りの問題を気にしている。自分はどうやって死んで、誰に看取られるのかということをすごくみんな気にしているなと。

――そもそも、なぜこの映画は生まれたのですか?

真野 2013年に友人のイケダがスキルス性胃がん、しかもステージ4になってしまって、やり残したことがないようにいろいろやりたいと言い出した。しかも、今までやったことがないことをしたいということから始まったんです。その中でイケダが、エッチなことをいっぱいしたいと。

でも神奈川県で公務員として働きながら、イケダは20代のころから、夜のお店系はひと通り体験しています。キャバクラも大好きだし、風俗も行っていました。ただノーマルなものしか行っていなくて、だからもう少し知らない世界があるんじゃないか、冒険を死ぬまでにしたいと。それでハプニングバーに行ったりとか、そういうことをやり始めたんです。

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© 2021 愛について語る時にイケダが語ること

「善なるもの」とされる障害者が持つ“闇”を世間に晒したいという衝動

――そこからどうして映画という話に?

真野 自分の性行為をカメラに撮る、自分で撮るということをやってみたいと言い出した。アダルトビデオが大好きだったので、あれを自分もやりたいと。そして自分を映画などの形で残したいと。イケダは自分の障害のこともすごく自覚していて、しかも死ぬかもしれないし、それなら自分の性行為のハメ撮りがあれば、自分の映像を残せる映画になるんじゃないかって思ったようです。

死ぬかも、となった時にセックスに向かうというのはわかる人はわかるんじゃないかなと思うんですが、それを自分で撮ったり、映画にして出すというのはちょっと特殊なので、世に対して何かを表現したいという強い欲求が出たのだと思う。

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真野勝成氏(筆者撮影)

――何を表現したかったのだと思いますか?

真野 イケダは障害者である自分を「善なるもの」として押し込めようとする何かに対して、自分のもっている闇の部分を見せつけたいという衝動が人生の最後に爆発したのだと思います。

――障害者とセックス、そして末期がんという話が交錯して、作品としてどう受け取るべきなのか考えさせられた。

真野 障害とセックス、そして死。正直、きついですよね。その情報だけで映画を見るとびっくりしますが、逆に感動してくれる人もいます。でも、イケダと僕の性格というか、コンセンサスで絶対お涙頂戴のような、いわゆる感動ポルノにはしないと決めていました。嘘は撮ってないですし、意図的に演技を撮ったということもないですね。

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© 2021 愛について語る時にイケダが語ること

馴染みの裁縫店のおばあさんの行く末を心配

――生前のがん告知される前のイケダさんはどんな人だったのでしょう。

真野 イケダは頭もよくて、自分で自立することにはこだわっていたと思います。自分仕様の車に乗って、おしゃれもしていましたし。おしゃれな服も買って、彼の寸法に合わせて縫製する。もったいないんですよ、めちゃくちゃいい服を買ってもバサバサ切っちゃうから。

――自分で直すわけではないですよね。

真野 町田に裁縫店のおばあちゃんがいて。ずっと昔から、イケダの服をカスタマイズしてくれた裁縫店のおばあちゃんなんです。いま体崩されて、休んでいるらしいんですが。

――そのおばあちゃんは映画のことを知っているのですか?

真野 いえ、言ってないです。死んだことも知らないと思います。でも直しに来なくなったから、もしかしたらって、おばあちゃんもわかっていると思うんですけど。イケダが面白いのは、がんになってから、おばあちゃんの行く末をすごく心配していました。でもどう考えてもお前のほうが先に死ぬだろうって(笑)。

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© 2021 愛について語る時にイケダが語ること

――イケダさんの思い出話をするとよく笑いが出ますよね。

真野 いいのです。そのために僕が語り部としているので。友達だったので、培った関係性がなんでも茶化してしゃべる関係性でした。映画を見ればわかると思いますが、深刻な話ではないんです。

――映画の冒頭に映画『生きる』の話が出てくる。あれは池田さんの案ですか?

真野 あれは僕の遊びです。がんになった公務員の話だから『生きる』と同じじゃないかと。池田は『生きる』を見てないですけど(笑)。『生きる』は、公務員ががんになってみんなのためにいいことするという話ですが、池田はハメ撮りをしていたのですが。

――東京から全国を行脚して、また東京に戻ってきましたが、今後のビジョンはありますか?

真野 世界にこんなドキュメンタリー映画ないですよね。海外の評論家も絶賛してくれていることもあって、海外の映画祭にこれから出したいと思っています。でもそれにはお金が必要になりますので、ぜひご支援お待ちしています。

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© 2021 愛について語る時にイケダが語ること

『愛について語るときにイケダの語ること』

11月26日よりアップリンク吉祥寺(東京・武蔵野市)にてアンコール上映

企画・監督・撮影・出演:池田英彦

出演:毛利悟巳

プロデューサー・撮影・脚本:真野勝成
(脚本家/「相棒」「デスノート Light up the NEW world」)

共同プロデューサー・構成・編集:佐々木誠
(監督作「ナイトクルージング」「マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画」)

デザイン:三宅宇太郎/WEB制作:上田茂/題字・イラスト・テロップ:山本アマネ

Special thanks:巻来功士/制作協力:株式会社クロオビ/配給・宣伝:ブライトホース・フィルム

© 2021 愛について語る時にイケダが語ること

対象年齢18歳以上

公式サイト:https://ikedakataru.movie/

山田 敏弘

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