川辺川ダム容認 「人命と環境」両立目指せ

  • 西日本新聞
  • 更新日:2020/11/20

豪雨災害が繰り返される近年の気象環境や、現在の治水技術を総合的に考えれば、現実的な選択であろう。約半世紀にわたり賛否が割れた流域住民の「亀裂」の修復も重要な課題だ。

熊本県の蒲島郁夫知事がきのう、7月の豪雨で氾濫した球磨川流域の治水を巡り、最大支流の川辺川へのダム建設を容認する方針を県議会に表明した。

「ダムによらない治水」は知事の看板政策だった。川辺川ダム計画も12年前に反対し、その後、民主党政権が凍結した。苦渋の政策転換だろう。なぜ、こうなったのか。十分な検証と県民への説明が求められよう。

知事は国に対し、従来型でなく環境への負荷が比較的小さいとされる流水型ダム(穴あきダム)の建設を求めるという。

むろんダムの能力には限界がある。今後は「人命と環境」の両立を目指し、総合的な洪水対策を国や流域自治体と協力して進めるべきだ。

流水型ダムは治水専用で、通常は放流し、大雨時には貯留して下流の洪水被害を抑制する。全国数カ所で稼働しており、魚の往来を妨げない一方、流木で詰まるといった難点もある。一層の技術改善が必要だ。

その他の課題も山積である。現存する川辺川ダム計画は利水を含む多目的ダムを前提にしており、治水専用としての新たな計画策定が急務となる。治水か環境保護かで揺れた過去の経緯を省みれば、一段と厳格な環境影響評価は不可欠だ。

国は完成までに約10年を要するとみている。その間、豪雨被害をどう低減するのか-。

私たちは社説で、上流から下流までの地域が一体となった「流域治水」の必要性を訴えてきた。蒲島知事も今回、推進を表明した。河川の流路変更、川底の掘削、地下貯水施設の建設などを具体化せねばならない。

とりわけ重要なのは、市町村による防災計画強化のほか、4年前の熊本地震を契機に進む住民による自主防災計画づくりだろう。同じ市町村でも地形により危険の度合いが異なることを最もよく知るのは住民だ。

河川は人々に恩恵とともに災害をもたらすことは歴史が示すところだ。球磨川は流域住民にとって観光資源に限らず、暮らしを支える大きな財産だ。生態系への影響を最小限にとどめつつ、対策を進めたい。

川辺川ダムの賛否を巡り、球磨川流域12市町村の住民の間にはあつれきも生まれた。建設で一部が水没する五木村では今夏に論争が再燃し徒労感も漂っている。まずは蒲島知事がダム建設容認に至った経緯を丁寧に説明してほしい。時間はかかっても、今後の大切な礎となる。

西日本新聞

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