地方在住で「週2日限定の複業社員」を始めてみたら

地方在住で「週2日限定の複業社員」を始めてみたら

  • CHANTO
  • 更新日:2021/02/22

テレワークが一般的になり、場所や時間に縛られない働き方が叶う社会になりつつあります。毎朝、満員電車に揺られながら通勤するという“当たり前”が薄れつつある今、私たちにはどのような働き方の選択肢があるのでしょうか。

今回、紹介する新潟在住の竹内義晴さんは、本業のNPO法人しごとのみらいを運営する傍ら、東京のIT企業サイボウズで「週2限定の複業社員」として働いています。ほぼ完全リモートワークで新潟を拠点に都心企業の仕事を行う竹内さんに、複業のメリットとデメリット、また、複業を始めて感じる変化について伺いました。

「一つの仕事では補えないものが補える」

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—— 現在は「NPO法人しごとのみらい」の活動をしながら、サイボウズの社員として働いているそうですね。

竹内さん:

2010年にNPO法人しごとのみらいを立ち上げ、「もっと『楽しく!』仕事をしよう。」を活動テーマに、チームビルディングのための企業研修や講演会、コーチングやカウンセリングを行っています。

サイボウズに複業社員として入社したのが2017年。ビジネスマーケティング本部に所属し、週2日、オウンドメディア「サイボウズ式」の企画、編集、ライティングに携わっています。また、2020年6月より「妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会」にも所属し、ワーケーション事業の立ち上げも担当しています。

—— サイボウズに「複業社員」として入社された経緯について教えてください。もともと都心の企業で働くというビジョンはあったのでしょうか。

竹内さん:

「都心で働こうという」という直接的な意識はなかったのですが、当時しごとのみらいで、都市部のビジネスパーソンが地域を往来できるような地域活性化の事業を考えていました。その内容を知っていただくために「定期的に、都心と行き来する機会があるといいな」とは考えていました。

サイボウズの複業社員の採用については、SNSでの告知で知ったのですが、「チームワークあふれる社会を創る」という理念に共感しました。私が経営するNPO法人も「組織作り」をテーマにしていこともあり、言葉は違っても目指す場所は同じだと感じ、応募することにしたんです。

現在は完全リモートワークで週に2日、木曜日と金曜日をサイボウズの仕事の日と決めています。

—— 実際に複業をする中で感じるメリットについて教えてください。

竹内さん:

スキル、収入、人間関係において、「一カ所では補えないものが補える」ということでしょうか。

サイボウズでの仕事を通して、企画力やマーケティング力、ブランディング力のスキルアップを実感していますし、現在立ち上げに参加しているワーケーション事業でも、それを発揮できているように思います。

お金の面でも、複数の収入があるということの安心感が大きいです。一方の仕事が何らかの事情でストップしてしまったとき、他方での仕事があれば「収入ゼロ」にはなりません。

人との繋がりも豊かになりました。複業をしたことで、それぞれの組織での繋がりが持て、地方でも都心でも関係を広く築くことができています。

また、複数の居場所を持っていると、ある所属先での人間関係などの悩みが、他方で癒やされるということもあったりします。複業の場合は、多数の仕事が自分にとっての「サードプレイス」になりうる、ということでしょうか。

——「複業の難しさ」についてお伺いします。複業を始めて感じる困難や、やりにくさにはどのようなものがありましたか?

竹内さん:

「時間のやりくり」と「頭の切り替え」ですね。一週間の作業ボリュームの割合は、NPO法人とワーケーションが6、サイボウズが4くらい。

月、火、水曜日がNPOとワーケーションの仕事。木、金曜日がサイボウズの仕事と、曜日ごとに分けてはいるのですが、完全に分断できるというわけではないです。月曜日にサイボウズのグループウェアをチェックすることもありますし、木曜日にNPOのミーティングが入ってしまうこともあります。その場合は、「この日のこの時間、一時間別の打ち合わせで抜けます。その代わり一時間後ろに業務時間をずらします」という形で調整しています。

いかに周りとの信頼関係を築きつつ、調整しやすい環境を作っていくかも、複業を行う上では大切なポイントかもしれませんね。

—— 複業をする人には、「セルフマネジメント」も必要ということですね。

竹内さん:

自分がやっていることをしっかり見せられることも大事です。偽らず、正直でいられると、調整もしやすいし、信頼感も得られやすいですよね。私の場合、サイボウズ勤務の日は「この時間はこの業務をしていますよ」と1日のスケジューリングを作成し、「タスクリスト」として公表しています。

それから「自立心」や「目的意識を持つ」ことも、複業をする上で大切だと思っています。収入だけを目的にしていたり、与えられた仕事を待つような依存的な人は難しいかもしれません。細々とした調整業務も多数発生しますし、自分の働き方の影響で周りの人の業務が止まらないようにしながら、段取りよく仕事をしなければいけません。でも目的を明確に持っていれば「自分はこのために動いている」と気持ちの整理ができるはずです。

働きやすさを作る「質問責任と説明責任」

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—— 複業が叶う会社の特徴としてどんな点が挙げられると思いますか?サイボウズならではの働きやすさはどのような部分にあるのでしょうか

竹内さん:

サイボウズの社員に共通しているのが、「透明性」です。サイボウズでは公明正大、つまり、ウソをつかないことを大事なことと捉えていて、「質問責任と説明責任」という言葉をよく社員同士で使います。つまり「モヤモヤしたまま働かない」ということ。さまざまな働き方をする人が組織内にいることで「なんであの人だけ認められているの?」というような疑問やモヤモヤは、組織の中での歪みが生じる原因になる可能性があります。些細なことでも聞いてクリアな状態にしておきましょう、という認識が根付いています。

それから「多様な個性の尊重」。社員全員が「チームワークあふれる社会を創る」という理想に共感して入社してきているので、さまざまな環境と個性を持っているということを理解した上で、みんなが働きやすいようにしようという意識が定着しています。制度面も重要かもしれませんが、このような文化や風土が、働きやすさに直結しているんだと思います。

複業の話をするときに、「サイボウズさんだから実現できているんですよね」って言われることがあります。でも、個人的にはそろそろ「サイボウズだから」という言い方をしなくてもいいようになりたいですね(笑)。

—— そうですね。テレワークが一般的になって、今後は企業側にも多様な働き方への理解がますます求められそうですね。

竹内さん:

コロナ禍の今、ようやく、リモートワークの辛さや大変さをみんながわかってくれたようにも感じています。

オンライン会議でも、これまでは他の社員が会議室で対面している中で、自分だけがオンラインで繋がっていることが多く、PC越しに会話を差し込むタイミングを計るのが難しかったりして…。あとは社内イベントをオンラインで配信してもらったこともあったのですが、みんなが会場で和気あいあいと話したり飲んだりしている映像を見ながら、一人自宅でビールを飲む寂しさといったら(笑)。

—— それは辛いものがありますね…!リモートワークの課題は「コミュニケーション」の部分でもあったということでしょうか。

竹内さん:

そうですね。でもコロナ禍になって、ほとんどの人がオンラインで繋がるようになり、これまで感じていた不具合は解消されつつあります。全員がオンラインでのミーティングになってくると、それがスタンダードとして互いに調整できるようになってきているからでしょうね。

電気代などのリモートワークにかかる経費についても、これまでは「自腹だけどしょうがない」と割り切っていたところもありましたが、今は「通勤交通費」がなくなった代わりに、電気代などオンライン前提での手当てが出るようになりました。

—— 企業側の体制もテレワークを通して変わってきているということですね。

竹内さん:

サイボウズで複業を始めてすぐ、「これ、逆パターンもできたらいいのに」と思いました。「都心で働いて地方で複業する」ということです。

人材不足から「地方移住」を募ってはいるけれど、突然移住しても自分に適した仕事があるとは限らないですし、家庭環境も人それぞれで、仕事もすぐやめられない…「興味はあっても、すぐに移住は無理」という人もたくさんいるはず。都心部でいろいろな経験を積んだ人たちが、移住ではない形で、地方の企業でも活かせる仕組みがあればいいなと思ったんです。地方の視点と都市部の視点、両方持っているというのは貴重な人材であると言えるはずです。

2018年頃にそういった記事を、私が担当しているWEBメディア「サイボウズ式」に掲載したら、「その仕組みはいい」という肯定的な意見もたくさんあった一方で、「現実的ではないだろう」というネガティブな声も寄せられました。

—— 最近では、都心と地方の仕事をつなぐマッチングサイトもでき始めて、「都心と地方を行き来する働き方」は徐々に叶いつつありますよね。

竹内さん:

PCとネットワーク環境さえあればどこでも仕事ができる時代になりましたからね。地方自治体も「複業募集」と謳っているところも多いです。テレワークの働き方も、今後どんどん多様性が増して、私のような働き方をする人も増えてくるかもしれません。

移住でなくても、ちょっと困った時に助け合えるネットワークが他の地域にもあれば、結果的には良いと思うし、長い目で見たらそういう関係性から移住に繋がることもあるのではないでしょうか。

—— いま、地方移住や複業を検討する人に何かアドバイスをするとしたら?

竹内さん:

そういう働き方を始めるとしたら、何かしら目的はあった方が良いと思います。地方に憧れる方って「地方の方が空気は美味しいし、家賃も安いし、食べ物だって美味しいだろう」という魅力に惹かれてくる方もいると思うのですが、都心よりも不便な部分もあるわけで…。これまで当たり前にあったものがないし、人間関係も変わってくるので、「やっぱり東京のが良かった」と思うこともあるかもしれない。そう思った時に「目的」がはっきりしていれば、そこで後悔には至らないと思うんです。

それは働き方というより「生き方」ですね。「ここでこういう生き方をしたい」という目的をしっかり持っていることが、複業でも、地方移住でも大切だと思います。

テレワークの推進により、今後、自分が「どこで」「どのように」働きたいかを問われる時代になってきたように感じます。地方を拠点にフィールドを広げる竹内さんの「どのように生きたいか」という思いと、「もっと楽しく働ける仕組みを作りたい」という目的があるからこそ、柔軟な複業スタイルを実現しているように感じました。

PROFILE 竹内義晴

1971年生まれ。新潟県妙高市出身。NPO法人しごとのみらいを経営し、組織作りやコミュニケーションの企業研修や講演、ビジネスコーチ、カウンセラーとして活動する。サイボウズ株式会社の複業社員としてブランディングやマーケティングに携わる。妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会ではワーケーション事業の開発に従事。

取材・文/佐藤有香

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