新築で購入した71㎡のマンションに住んで23年。家族の成長とライフスタイルの変化に合わせてリノベした事例です。住まい手は50代の夫婦と高校生の娘の3人家族。家族それぞれがくつろげる個室と、広々とした一室空間のLDKを実現しました。キッチンとサニタリーの回遊動線も生まれ家事もスムーズに。これからもずっと住み続けたい家に生まれ変わりました。

テーブルを脇に配置し食事の支度がラクなキッチン。キャビネットのタイルにもこだわった
歳を重ね夫婦の間に起きた生活時間のズレをリノベで解決
●この家のプロフィール
Iさんの家東京都
・家族構成:夫54歳 妻52歳 長女17歳
・築年数:23年(1999年築)
・専有面積:71.44㎡
・工事費:1700万円(税・設計料込み)
・設計・施工:空間社

I邸のリノベーションは、今回が3回目。23年前に今のマンションを新築で購入し、長女が小学生になった際に和室を宿題用のフリースペースに変えたのが1回目。夫が書斎としていた部屋を子ども室仕様にし、DIYで壁を塗装するなど楽しみながらリノベしたのが2回目。その長女は現在高校2年生になりました。
「だんだん家族3人の生活時間がバラバラになってきて、とくに私たち夫婦は年齢を重ねて生活時間のズレが大きくなり、私は夜9時には寝て朝5時前に起きて散歩に出かける日々。妻は比較的夜型なので、お互いの睡眠を妨げないよう妻用の寝室を設けるのが、今回のリノベのいちばんの目的でした」(夫)。
また、せっかくなのでこのタイミングで閉鎖的だったキッチンをリビングダイニングとオープンにつなげたかった、とも。
●リビングに大容量の収納を設けてすっきりと!

今回のリノベで収納も充実。「すべて造作の扉つき。容量をオーバーしないよう気をつけています」(妻)。
地震対策も兼ねて、収納はほとんどをつくりつけに。リビングダイニングのトール収納にはたくさんの書類を集中収納させ、プリンターもここに同居させました。
●家族それぞれがくつろげる個室を用意

玄関側からLDKへ。右側には水回り、左側には収納をはさんで妻と夫それぞれの寝室があります。白の壁や扉との対比が美しい幅広の床材は、チークの突板フローリングを採用。
「私は明るめ、夫は暗めを好み、その中間を取ってチークに落ち着きました」(妻)
●キッチンとサニタリーの回遊動線で家事をスムーズに

キッチン内部。「LDに背中を向けていた以前と違い、目の前が広がって光もよく入り、気分が上がります」(妻)。

キッチンから浴室まで一気に目が届く。通路の設置で、ベランダ側から浴室への風通しも良好に。洗面室は引き戸で仕切れば脱衣室になります。
間取り(リノベーション前後)

リノベーション前

リノベーション後
壁づけで閉鎖的だったキッチンを対面式に変え、リビングダイニングとワンルームに。またリビングの一角を占めていたフリースペースを撤去してリビングを広げ、妻の個室を新設。さらに水回りとキッチンをつなぐ裏動線を設け、家事の快適化を図りました。
LDKをワンルームにして、家事ラク動線も確保!
度重なる検討の末に採用したプランは、フリースペースを撤去し、一部を妻の寝室に。また、LDKをワンルームとし、キッチンの正面にリビング、脇にダイニングを配置し、コミュニケーションがぐっと取りやすくなる間取りになりました。

LDに背を向けていたキッチンを、オープンな対面式に変更。フリースペースの撤去でリビングは広くなり、念願だった妻の寝室も実現。「室内窓のおかげでベランダからの光もよく届き、ぬいぐるみのいい居場所にもなっています(笑)」と妻。

家具をバランスよく配置したリビングダイニング。テレビやスマホ、読書、テーブルで勉強など、家族3人が思い思いに過ごしているそう。ダイニングの後方はあえてスペースをあけ、ヨガやストレッチ、テニスの素振りなど多目的に使っています。

テレビ脇の柱による凸凹は、壁をふかしてニッチ収納とし、小物を飾るのに活用しています。

さらに注目したいのは、サニタリーからキッチンへ抜ける動線の確保。廊下から洗面室を通ってキッチンに行ける動線が生まれ、くるりと回遊できるように。
洗濯機の上にはランドリーボックスを設置し、洗濯物をサッと入れられるようにしました。キッチンにいながら洗濯機にも目が届くなど、家事ラクに貢献する工夫です。
「サニタリーと私の寝室は廊下をはさんで真向かいなので、夜間雑多な片づけをして寝る際も、スッと行けるのは思った以上に快適」(妻)
この動線は浴室側への通風にも有効で、健やかな暮らしにひと役買う形に。このほか北側の2室は二重窓にして寒さをやわらげ、結露の発生を抑えるなど、住宅性能の向上にも費用をかけました。
「数々の不満は、住んでいたからこそ実感できたこと。じつはもっと広い家への住み替えも考えたのですが、愛着のあるこの家で不満が解消されて満足。これでずっと住み続けられそうです」と夫妻は語ってくれました。
家族の個室にもこれからの暮らしを快適にする工夫が

主寝室だった部屋を夫の寝室に変更。寒さと結露対策のため、窓は二重サッシに。さらに個室はすべて壁を珪藻土塗りで仕上げ、湿気を抑えています。

突きあたりは長女の部屋。お気に入りのドアは既存を再利用しました。

長女の部屋は内装を一新。「コンパクトな空間なので、PCやノートなどいろいろ広げときはダイニングで。フリースペースで勉強する習慣があったから、今も部屋にこもらないです」(妻)。3人とも収納つきベッドで収納を補っています。

アールを描いた開口がやわらかな印象の妻の寝室。「自分のペースで休めて快適です。扉の向かい側が洗面室で、さらにキッチンにつながるため、朝起きてからの一連の作業がスムーズなのもいいですね」(妻)。

内窓と既存の窓の組み合わせで、空気がこもらないのもお気に入り。
この家のデータ&使われている素材と設備
建物規模:地上8階建ての5階
素材
玄関
床:既存(タイル) 壁、天井:クロス
LD
床:チーク突板フローリング 壁、天井:クロス
キッチン
床:フロアタイル 壁:タイル、クロス、モールテックス 天井:クロス
個室、子ども部屋、廊下
床:チーク突板フローリング 壁:珪藻土 天井:クロス
洗面室
床:フロアタイル 壁:クロス、タイル 天井:クロス
トイレ
床:フロアタイル 壁:クロス、タイル 天井:クロス
設備
キッチン
TOTO
ガスコンロ:既存
食洗機:リンナイ
サニタリー
ユニットバス:TOTO
洗面ボウル:アイカ工業
洗面水栓:カクダイ
ミラー収納:サンワカンパニー
トイレ:LIXIL
設計・施工:空間社
日刊住まい編集部