まもなくクマが人里におりてくる時期です。2023年はクマの主食となるドングリの実が不作となっていて、富山県では平野部での出没、遭遇の可能性が高くなるおそれがあります。2021年、散歩中にクマに襲われけがをした男性が「まさか舗装された道にも出ると思わなかった」と当時の恐怖を語りました。
【写真を見る】クマに襲われ必死の“キック” 散歩中にクマに遭遇した男性の恐怖「もう散歩するのも嫌」
クマに襲われた男性:「クマが急に現れて、自分の方へ突進してきたものだから、これはやばいなと思って。怖かったね…」
富山市に住む78歳の男性は2021年7月、散歩中にクマに襲われ、けがをしました。
男性は、午前6時半すぎ、自宅から1キロほど離れた富山市須原の林道へ散歩に出かけました。草が生い茂った場所にさしかかったため、男性はまさにクマを警戒し、歩きながら大声を出したといいます。
クマに襲われた男性:「人の存在をアピールした方がいいという話を聞くから、そのために声を出したら急に現れてきた」
突然、やぶの中から体長1メートルほどのクマが現れ、男性に飛びかかってきたのです。男性はとっさにクマを足で蹴って抵抗しました。
記者:「足はクマに当たったんですか?」
クマに襲われた男性:「少々触った」
男性はクマを蹴った際に前足のツメで引っかかれ、全治10日のけがをしました。
クマはやぶの中へ逃げていったといいます。
ドングリ類がすべて「不作」の予想、なかには「凶作」も
富山県内では2023年はクマの出没が増えるおそれがあります。県の調査で、クマの主食となるドングリの実り具合は、ブナ、ミズナラ、コナラのすべてが不作となる予想で、なかでもブナは、県東部だけでみるとさらに実のつきが悪い「凶作」予想となっています。
2023年と同じ、すべて「不作」の評価だった2016年は、人身被害が3件発生したほか、目撃や痕跡情報は300件にのぼっています。クマの生態に詳しい専門家も警戒を強めています。
富山県自然博物園ねいの里・間宮寿賴さん:「平常年よりも特に県東部はクマの出没に注意が必要。9月下旬から10月上旬にかけてクマの出没が一気に増えてくるとクマが平野部まで多く出ることになり得るので、そのへんのクマの情報を注視していきたいなと」
出没が増えるのは9月下旬、つまりもう増えてもおかしくない時期になっています。
クマと遭遇しないためには・・・
▽クマを引き寄せる「柿の実」の撤去は今すぐに行う必要があります。
▽クマと遭遇しやすいのは山間部をはじめ、やぶに覆われた河川敷、河岸段丘崖の林などで、こうした場所の草を刈って、見通しをよくすることも大切です。
富山県自然博物園ねいの里・間宮寿賴さん:「クマがくる理由はやっぱり周辺に柿の実があったりとか。そういう食べ物がなければ一過性で通り過ぎたりするので、長時間クマがいることはないと思う。そもそもクマと出会わないために、誘引物を除去したりヤブを刈り払って見通しのいい環境を作ることで遭遇する機会を減らす方が人身事故に結びつかない」
クマに遭遇した男性は、周囲の柿の木をすべて伐採したほか、日課だった朝の散歩でも、今は山の方へ行くことはないといいます。
クマに襲われた男性:「まさかアスファルトがしてある道路に出てくると思わないものだから。山手の方はもう散歩するのは嫌になったね、怖くなってきた。
やっぱり山の方を歩く時は鈴とか撃退スプレーとか持ち歩いた方がいいと思うね」
富山県自然博物園ねいの里・間宮寿賴さんに聞いた『身を守る方法』
クマと遭遇しやすい場所へ行くときは…
①クマ用の撃退スプレーがもっとも効果あり!
②長時間作業するときは、ヘルメットをつけましょう。
③クマ鈴やラジオ、声を出すといった「音」を出すのも効果はあるのですが…
→今回取材した男性は大声を出したところ、クマと遭遇しています。
「音」を出すことは、クマの性格や親子連れであるなどの状況によって、効果がない場合もあるということです。それだけで安心するのはやめましょう。
万が一、クマと遭遇したら…
①屋内・車内に入りましょう。クマから走って逃げてはいけないとも言われますが、屋内か車内に入るほうが安全なので走って逃げてもOKです。
②逃げられない場合は、首や頭など急所を守ってその場を離れてください。