ココイチ「インド出店」でわかった、インド人に愛される「3つの鉄則」

ココイチ「インド出店」でわかった、インド人に愛される「3つの鉄則」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/09/17
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インド1号店オープン、現地の反応は

「これまで食べたことのない、クセのある味。でも予想以上に美味しかったよ」

世界第二位の人口を誇り、急速な発展を遂げているインド。その首都にあたるニューデリー郊外の街・グルガオンに店を構える「カレーハウスCoCo壱番屋」で食事を終えた現地のインド人は口々にこう話しているという。

カレーチェーン国内最大手のカレーハウスCoCo壱番屋(以下、ココイチ)が、カレーの本場・インドに1号店を出店したのは今年8月3日のこと。直営店、FC店合わせて国内外に約1500店舗を抱えるココイチのインド進出は、発表当時、大きな話題を呼んだ。

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Photo by GettyImages

同社は元々、今春にも同店の開店を予定していたが、そのタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大が世界で広がったため、一旦中止に。ここへきて8月の開店にずれ込んだそうだ。

日本のカレーといえば、欧風カレーをベースに日本独自の改良を加えた滑らかなルーに、玉ねぎ、人参、じゃがいも、それに牛や豚、鶏などの肉を具材とするのが一般的。もちろん、ココイチのカレーもそれに準じた作りになっている。

一方、インドのカレーは日本とまったく異なる。何億通りもあるスパイスの組み合わせを味わうことが重視され、地域差も大きい。また宗教の戒律から牛・豚は具材に使われず、菜食主義者も多いため、具材は野菜、特に豆が好まれるという。

カレーと一括りに言っても、双方はまったくの別物だ。にもかかわらず、報道によればココイチはインド初出店に際して「現地で受け入れてもらえると期待している」と自信をのぞかせている。

果たしてココイチに勝算はあるのか――「カレー総合研究所」代表で、カレー専門のコンサルティングを行う井上岳久氏に解説してもらった。

海外での成否を決める「知名度」

ココイチがカレーの本場であるインドで成功を収めるにあたって、まずカギとなるのは、ココイチ自体の「知名度」です。

例えば、異なる飲食業態の1つ、ラーメンで考えてみてください。ラーメンもまた、カレーと同様、ルーツこそ海外にあるものの、製法、味、食材などが日本国内で独自に発展を遂げた料理です。

そんな日本のラーメンですが、すっかり外国人にもお馴染みとなり、チェーン店、個人経営の店問わず、世界各国で店舗を拡大させています。ここで重要となるのが、日本への来訪者が多い国ほど、日本のチェーン店は受け入れられやすい、という点です。

外国人が旅行や出張で日本を訪れ、そこで街中に溢れるチェーン店の存在を知る。さらに、そこで味を知ることで、「母国でも食べたい」という動機付けが初めて生まれるわけです。つまり「知名度」ありき、とも言えます。

そしてココイチもまた、日本への来訪者が多い国ほど、海外進出も上手く行っているようです。

2019年の訪日外国人旅行客ランキング(日本政府観光局調べ)でトップ10に入るアメリカやタイではすでに、ココイチは行列ができるほどの人気チェーンとして成功を収めていると言います。

また、1位、2位にあたる中国と韓国でも、筆者の元に「ココイチみたいなカレーを食べたい」とプロデュースを要望された経験から考えるに、やはりココイチのニーズは高いと言えるでしょう。

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タイではココイチが大人気だという(Photo by GettyImages)

その点、インドの訪日外国人旅行客はランキング17位、タイの約10分の1に留まっており、インド人の中でのココイチの「知名度」はまだまだ足りない状況なのです。

今のところ、新型コロナによって渡航が制限され、外国人旅行客は見込めない状況にあります。そのため、口コミやプロモーションによっていかに現地のみで知名度を上げていくかが、今後の成否を握ることでしょう。

“新し物好き”なインドの若者にハマるか

インドにおけるココイチのカレーの印象について、筆者が体験した、とあるエピソードがあります。

これまで世界各国の5つ星ホテルに多数の生徒を輩出している、インド最高峰の料理学校。その校長が来日した際、「日本のココイチはインドで通用するか」という質問を投げかけました。すると校長は、

「ココイチは美味しい。だが、私は好き好んでは食べない」

と、コメントしたのです。しかし続けて筆者が「では、インドで広まらない?」と尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「私のような年配の人間には難しいが、若者なら話は違う。インドの若者は、新しい料理を受容することができる。つまり、彼らに『新しい食べ物』としてマーケティングすれば、ハマる可能性がある」

この校長が語るように、実際インドの若者たちは、これまでインドで伝統的に食べてこなかった料理や食材だとしても、好奇心旺盛に食べるようなのです。

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新し物好きなインドの若者たち(Photo by GettyImages)

例えば、生魚のサーモン。本来、ヒンドゥー教徒の中には肉同様、動物性食品として食べない人もおり、サーモンも伝統的に食べて来られなかったと言います。ところが若者には今、大ブームと聞いています。

インドといえば“ボリウッド”と評されるように映画が盛んな国なので作品に絡める、あるいは有名なカリスマ料理人を使う……。方法はなんであれ、若者たちに「ココイチのカレーってオシャレ、イカしている」と思わせることができれば、普及する可能性は十分にあると言えます。

インドならではのメニュー戦略も必要

知名度、若者からの支持に続く成否のカギを握る3つ目の要素が「メニュー戦略」です。

ココイチも、従来のカレーのままではインド人には太刀打ちできない、と考えているのでしょう。インド1号店では、肉や魚を含んでいないカレーソースを使ったり、牛肉と豚肉をトッピングから外し、鶏肉やヤギ肉、菜食主義者向けの肉を使わないカツを用意しているそうです。

ここで気がかりになるのが、インドのカレー文化にとって無くてはならない「スパイス」の存在です。

ココイチのような日本のカレーは、旨み、甘み、コクを楽しむもの。それに付属して五味(甘い・辛い・酸い・苦い・塩辛い)があるというのが一般的です。しかしインドのカレーは、旨み、甘みはあまり重視しません。それよりも、スパイス一個一個の味、そして複雑に重なり合った味を楽しむことを重視します。

そのため、インドでチェーン店を成功させるためには、どんな料理であってもスパイスが重要になります。あのマクドナルドですら例外ではなく、インド進出当時はなかなか人気が出ず、その後、メニューを改良し、ふんだんにスパイスを使うことで、成功したと言います。

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日本のカレー、という物珍しさである程度ニーズは得られても、長期的に考えれば、それだけでは一筋縄ではいかないはずです。インド人だけが持つスパイスの感覚にどれだけ近づけるか、そのカスタマイズが近いうちに求められるでしょう。

その上で、インドではポピュラーな豆のカレー、カリフラワーのカレーなど、これまでココイチになかったトッピングも必要かもしれません。日常的にカレーを食べるインド人だからこそ、トッピングのバリエーションは日本以上にニーズがあるはずです。

以上、ココイチがインドで成功を収めるにあたって、カギとなりうる3つの要素を挙げました。13億人という巨大マーケットに果敢に挑んだココイチですが、もしこれらをクリアできれば、チャンスは十分にあるでしょう。

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