SNSのキラキラした写真の中に、自分を見出そうとするのはもうやめた

SNSのキラキラした写真の中に、自分を見出そうとするのはもうやめた

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2021/01/14
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スマホの画面をスクロールする。

インスタグラムにも、Facebookの広告にも、きらきらとした満面の笑みで映る知り合いや、知り合いの知り合い、モデル、芸能人がでてくる。

見るたびに私の心は少し、重くなった。

学生時代、部活の先輩に「笑顔で挨拶をしない」と噂されていることを知った。

笑っているつもりだったが、当時の写真を見ると確かに無愛想な顔だった。

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大学時代、バイトで容姿について言われることが増えた。

メイクをネットで学べば、「綺麗になったね」と言われ、運動不足のためにジョギングを始めると、「痩せた」「スタイルが良い」と言われた。

お酒を多く飲んだ翌日はサラダしか食べないようになった。

容姿について、たとえそれが褒め言葉でも、自分の見た目に少しでも他人の視線が注がれることが苦痛で食事が喉を通らなくなった。

気づいた時には病院で、「あと2kg痩せたら、入院してもらう」と言われるようになっていた。

それは、ある日好きな人ができて馬鹿みたいにあっという間に治った。

その人は「賢い」「努力家」と私を褒めてくれた。

体重は一気に5kg増え、生理もまた始まった。

食べたいものを食べたいだけ食べる彼女が心の底から羨ましいと思う

画面に重ねる空虚な自分

今日も画面をスクロールする。

ヨーロッパのモデルがハイブランドの服を着こなしてこちらを見ている。

自分がモデルだったら、と頭の中で姿を重ねる。

そうしたらもっと人に、愛してもらえるのではないか。

知り合いが楽しそうな笑顔で写っている。

そこに私も一緒にいたかった、楽しかっただろうな、と隣に写る姿を思い描く。

もっとフォロワーがいた方が認められるのかな、もっとキラキラした写真を載せた方がいいのかな。

無数の写真に、空っぽの自分を重ねて、虚しく、心が重くなる。

今日も画面をスクロールする。

広告にふと、とある美術展の広告が流れてきた。

昔から絵を描くことが好きだった、美大に行きたい時代もあった。

そういえば、私の好きな画家のあの人は、最近画集を出しているのだろうか。

高校生で初めて買ったのはその人の画集だった。

名前を入れて検索する。

新しい画集が出ている。解説をふと見ると、この10年は、とある寺院の襖絵の制作に専念していると書かれていた。

10年。なんという月日だろう。一つの作品に没頭する、脈々としたエネルギーと、情熱。

画集はすぐに購入した。

画集がもたらした静寂な時間

届いた画集。美大を目指していた頃は飲めなかったコーヒーを入れて

ゆっくりとページをめくった。

変わらず在り続ける、圧倒的な作品たち。

久しぶりに時間が経つことを忘れて、緻密な筆先を目で追った。

スクロールではなく、黙々とページをめくる。

そこには空虚な自分ではなく、その作品を愛してやまなかった、高校生の自分がいた。

この数年で、SNSの画面に絡めとられていった、あらゆる自分を少し、取り戻したような気がした。

古典的なものが好きな自分。

流行よりも、長く愛せるものを見つける方が得意な自分。

内向的だが、少ない人と向き合うことは好きな自分。

古着屋で買った艶やかな花柄のワンピースを、何年も大切に着ていた自分。

画面に重ねる、どこにも存在しない自分ではなく

何かを確実に愛していた自分が、少しずつ、戻ってくる。

キラキラした写真の中に、自分を見出そうとするのはもうやめた

今日も画面をスクロールする。

キラキラとした写真たちに自分を重ね、そこに自分を見出そうとすることは、もうやめていた。

キラキラとした写真の主にも、きっと私のように悩み、混乱した時を乗り越えたからこそ

納得できる自分の姿を見つけ、その自分を愛しているから、輝いて見えるのだと思った。

自分の写真をアップロードする。

大切なワンピースと、画集を持って映る自分は、穏やかに笑っているのだった。

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Ayari

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