ミャンマーでお祝いに使える焼肉店を 日本人女性の挑戦

ミャンマーでお祝いに使える焼肉店を 日本人女性の挑戦

  • 日本食糧新聞電子版
  • 更新日:2020/03/21

民政復帰から10年。東南アジアのミャンマーでは、外国資本への段階的な門戸開放が進み、多くの外国企業が投資を加速。そうした人々の胃袋を満たそうと、外食事業の進出も相次いでいる。会社の設立や新規事業の立ち上げ、さらにはちょっとしたお祝い事にも利用してくれたらうれしいと、日本スタイルの高級飲食店なども次々と登場している。そのうちの一つ、関西出身の女性がたった一人で立ち上げた日本式焼肉店が今回の舞台だ。

日本と行き来して和牛を買い付け

同国最大都市のヤンゴン。その中心部からやや北に位置する人気のデートスポット「インヤー湖」の近くに「ジャパニーズBBQ神戸屋」はある。2012年末に開業。今年8年目を迎えた。

日系企業の現地駐在員らが大型の契約を取り付けた時の会合で利用したり、受験に合格した駐在員の子どものお祝いの席などにも活用されている。一戸建ての民家をおしゃれに改造。1階と2階に3室ずつの個室を配置した造りはゆったり感が満載で、街の騒しさを忘れて会食するにはうってつけ。今ではヤンゴンの日系社会で、すっかり知られた存在となった。

オーナーの中村弘子さんは兵庫県明石市出身の神戸育ち。大学時代に米国で学び、出身地に戻って英語教室を開くなどした。

その後、子どもの教育環境を考えシンガポールで仕事を探していた時に、初めての飲食業と出合う。まずチャレンジしてみたのが讃岐うどんの専門店。本場香川県から製麺機を取り寄せ、鰹節でだしを取った本格うどんの提供だった。

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「ジャパニーズBBQ神戸屋」オーナーの中村弘子さん(写真は本人)は、日本語・英語・ミャンマー語の3言語で定期的に顧客向け情報発信を続けている=提供写真

店のあった場所は金融街のど真ん中。物珍しさもあって、たちまち人気店に。ほどなく店を買いたいという人物が現れ、売却を決意。次に何をしようかと考えていたところ、たまたま立ち寄ったのが知人のいたミャンマーだった。

当時のミャンマーは現国家顧問のアウン・サン・スー・チーさんが国会議員に就き、3年後の総選挙に向けて民主化の機運が盛り上がっていた時期。現地社会経済の成長と将来を考えた時に必要となると考えたのが、ちょっとした特別な機会に利用ができるおしゃれな飲食店だった。

「仲間内で話し合っている時に話題に出たのが焼肉店だった。そういう店があってもいいよねと、トントン話で出店が決まった」と中村さん。その2ヵ月後には物件を借り、さらに年末にはオープン。「ここでやめたら、きっと後悔するという思いがあった」と振り返った。

牛肉など食材の調達は自らが担当。日本とミャンマーを行き来して国産和牛を買い付けている。目利きもずいぶんとうまくなった。今では、電話やメールだけで狙いどおりの肉を仕入れることができる。常連客からの評判も上々だ。

雇用するミャンマー人スタッフには、あえて日本式の「完璧さ」は求めない。「いつも大切だと教えているのは、どれだけ心を込めたかということ」。自慢のスタッフ力でミャンマー一の温かい店を目指す。それが今の中村さんの最大の目標だ。

ミャンマー人スタッフの成長がうれしい

東南アジアのミャンマーで、ちょっとおしゃれな日本式焼肉店「ジャパニーズBBQ神戸屋」を営む中村弘子さんは、開店から2年ほどたった2014年、ヤンゴンの一般大衆焼肉店で郷里の日本から遊びに来ていた実父を迎えていた。自らの店舗とは対照的な安価な店。「安くて使いやすいよね」という父の一言に、業態を変えた多店舗展開の可能性を見つけた。

ただ、最大都市とはいえヤンゴンの焼肉店供給は若干飽和気味。では、第2の都市である中部マンダレーはどうだろうかと早速、視察に行ったところ、大衆店ならば余地があると実感。「やったら、ええやないか」という父の勧めもあって決断した。

姉妹店の店舗名は「NakaNaka(なかなか)ジャパニーズBBQ」。なかなか良いの意味に、自身の名前の一字。さらにはミャンマー語の言いやすさを組み合わせた。神戸屋が国産和牛に限定しているのに対し、なかなかは豚肉が中心。牛肉も多くを米国産に切り替えて、できるだけ安価で提供することにした。

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中村弘子さんが出店した2号店「NakaNakaジャパニーズBBQ」=ミャンマー中部マンダレーで小堀晋一が1月1日写す

結果は、一気に人気店に。ミャンマー人の常連客で連日店は満席となった。人工都市の首都ネピドーはヤンゴンとマンダレーのほぼ中間にある。週末ともなるとネピドーから車を使ってわざわざ食べに来るミャンマー人の役人の姿も。富裕層から一般客までさまざまな人々が日本式の焼肉を楽しんでいる。

順調に見えた2号店だったが、昨年後半には海外特有の“災難”にも見舞われた。大家による突然の立ち退き要請である。借地借家法が存在し、借り主の強い権利が認められている日本とは対照的に、法整備の未発達な東南アジアでは少なくない事例だ。「今月末で出てってくれ」。そんな大家からの通告が当たり前に通るのはミャンマーでも例外ではなかった。

困り果てた中村さん。でも、こんなことで落胆していてはいられないと早速の物件探し。近くで移転先の確保を終え、再オープンの準備に忙しくしていたところ、再び2号店の大家から連絡が入った。「やっぱり出て行かなくていい。そのまま営業しておくれ」。案の定というか何というか。

ところが、この事態を「神様がくれたチャンスではないか」と前向きに考えたという中村さんは、一計を案じることに。ミャンマー人スタッフを集めると、あえてボールを投げてみることにした。「どうしたらよいと思う?」

近隣同士で2店舗展開となると、さすがにマンダレーでも共倒れの可能性がある。真剣勝負、よほどの緊張感がないと難しいと思った。ところがスタッフから寄せられた回答は、口々に「やりましょう」。目頭が熱くなったという中村さんは、スタッフの確かな成長を感じてやまなかった。

神戸屋、なかなか2店舗ともに従業員は多くは、南部エーヤワディー川(イラワジ川)のデルタ地域に位置するエーヤワディー地方域の出身。インフラの整備が未発達な地域で働き口は極端に少なく、出稼ぎが主要な仕事場だった。

それだけに仲の良さ、同郷の仲間を大切に思う気持ちはひときわ。助け合って仕事に励んでくれている。「緊張感を持って仕事に当たれば、伸びていくのはどこの国の人も同じ」。そんなことを中村さんは肌身で強く感じている。

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