ついに日高屋、てんやも参戦。低価格とんかつ戦争が激化する理由

ついに日高屋、てんやも参戦。低価格とんかつ戦争が激化する理由

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  • 更新日:2019/05/13
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今、低価格とんかつ業態に、日高屋、丸亀製麺、てんやと言った有名店を展開する外食各社が次々と参入し話題となっています。なぜ今「とんかつ」なのでしょうか。今回、フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが、様々な側面からその理由を分析するとともに、「低価格とんかつ業態の今」と今後の見通しを詳細に記しています。

低価格とんかつに新規参入が相次ぐわけ

外食で低価格とんかつ業態に新規参入が相次いでいる。「熱烈中華食堂 日高屋」を展開するハイディ日高が「とんかつ日高」を今年1月に出店。「丸亀製麺」のトリドールホールディングスが「豚屋とん一」を2015年から展開。「天丼 てんや」のテンコーポレーションが「とんかつおりべ」を昨年12月にオープン、などといった具合だ。

背景には、低価格とんかつ業態の急成長がある。この分野のパイオニアは、アークランドサービスホールディングスの「かつや」。1998年相模原市南区に1号店をオープンして以来、順調に店舗を伸ばし、国内367店(18年12月現在)を展開している。また、牛丼「松屋」の松屋フーズホールディングスが展開する「松のや」(松乃家、チキン亭と表記する店もある)も、190店(19年4月現在)まで増えてきた。

14年末には「かつや」は292店、「松のや」は60店だったので、それぞれ5年ほどの間に「かつや」は1.3倍、「松のや」は3倍以上に店舗数が伸びた。しかも、アークランドサービスホールディングスは、07年の上場以来、なんと12年連続の増収増益を達成している優秀な企業である。

このような先行する2つのチェーンの好調な業績が、外食各社が新規参入する呼び水になっているのだ。既に飽和状態になっていると言われる、牛丼やハンバーガーよりも伸びしろがあって、たいへん魅力的な市場と考えられている。

さいたま市大宮区の「大宮駅西口DOMショッピングセンター」地下1階に、1月30日、「とんかつ日高」の1号店がオープンした。首都圏駅前に約400店舗を広げるラーメンを核とした「日高屋」チェーンを運営する、ハイディ日高の新業態である。同社は大宮に本社があり、その御膝元だ。隣のテナントには「日高屋」が出店しており、同じ業態を出すわけにはいかない立地。

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ハイディ日高は、競合する商圏に「日高屋」を何店も出店して共倒れを防ぐために、他業態の開発を急いでおり、焼鳥の「焼鳥日高」は28店にまで増えている。「大衆酒場日高」も2店ある。

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「とんかつ日高」の立地する場所は、ダイエーの出入口となっており、フードコートもすぐ近く。主婦やファミリーが集まるスーパーに隣接する場所なので、焼鳥、大衆酒場のようながっつりと飲む業態には似つかわしくない。そうした検討がなされた結果、とんかつ業態がセレクトされた。

満を持してのとんかつ業態復活

実は同社は、大宮駅の東口で、15年に「とんかつ かつ元」を出店して話題となり、軌道に乗りかけていたが、火事に巻き込まれ16年末にやむなく閉店していた。その後、昨年7月には東口に「大衆酒場日高」をオープンした際、ランチメニューで、「かつ元」のとんかつを復活させ、閉店を惜しむファンに喜ばれていた。そうした経緯もあり、東口から西口へと立地は変わったが、満を持してのとんかつ業態の復活である。

同社・広報担当によれば「店名こそ変わりましたが、四元豚を使ったロースかつをメインに据えたメニュー。日高屋と同じくちょい飲みできることなど、かつ元と内容は変わっていません。かつ元は不運な終わり方でショックを受けましたが、もう一度チャレンジしてみようというわけなのです」と、出店の経緯を説明している。

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メインのロースかつ定食は780円。先に券売機で購入するのが、「日高屋」との違いだ。なお、かつ丼も同額である。

「四元豚」とは4種類の純粋品種の豚を掛け合わせて、味の改良を行った雑種の豚。「とんかつ日高」で使われている「麦そだち四元豚」は、チェスターホワイト、ランドレース、ヨークシャーを掛け合わせた母豚に、デュロックの雄を交配。肥育には、成長促進剤、抗生物質の使用を禁じ、大麦・小麦を中心にオレガノなどのハーブを加えた特別な飼料で育てている。一度も病気をしていない健康な豚のみを国内で流通させている。良質な飼料で育てられ、癖がなく、甘みのある脂身、サシの多い肉質で、日本人好みのやわらかい食感となっている。同業他社との差別化のポイントだ。ちなみに、日本の食用豚は三元豚が主流である。

この他、かつ丼、ヒレかつ、から揚げ、カキフライ(期間限定)、各種フライとエビフライのセットなどが販売されている。定食のセットで提供される、なめこ汁、コシヒカリのご飯への評価も高い。串揚げ、もつ煮、枝豆などのちょい飲み用メニューも揃えているが、立地的にあまり出ないかもしれない。

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ハイディ日高では、とんかつ業態も他ブランド化の一環と考えており、現状は実験段階にある。一定期間の観察の後、大衆に受け入れられると判断すれば、多店舗化に踏み切る意向だ。

「丸亀製麺」のこだわりはとんかつ業態にも

トリドールホールディングスが展開する「豚屋とん一」は、イオンモールなどショッピングセンターでよく見る業態である。フードコートにあるケースも多い。15年にイオンモールりんくう泉南に1号店をオープンして以来、順調に店舗を広げ、51店まで増えている。駅前商店街やロードサイドにはないので、目立たないが、既に十分成功した業態と言えるだろう。

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とんかつに使う豚肉は、注文を受けてから店で手切りしており、パン粉を塗して揚げている。「丸亀製麺」も店でうどんを製麺して出来立てのうどんを食べてもらう趣旨の店だが、肝要な部分で工場に頼らず、店内調理で出来立てを提供するこだわりを、このとんかつ業態でも見せている。三重県四日市市のソウルフードで、近年は東京をはじめ全国的にも人気が高まる、「とんテキ」をもう1つの看板として売っているのも「豚屋とん一」の特徴だ。

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価格は、ロースかつ定食ととんテキ定食が890円でごはんとキャベツがお代わり自由、かつ丼590円でごはん大盛り無料となっている。ショッピングセンターの飲食店の中では、リーズナブルでボリュームがある店なので人気になっている。

「とんかつおりべ」は18年12月19日、浅草に1号店をオープンしている。

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「てんや」を主力とするテンコーポレーションの新業態だ。テンコーポレーションは現状ロイヤルホールディングスに傘下にあるが、同店はクレジットカード各種に対応しており、訪日観光客のインバウンド需要も視野に入れた店である。浅草には完全キャッシュレスタイプの新業態「大江戸てんや」が、同年10月2日にオープンしているが、これは元々あった「てんや」浅草雷門店の顧客のインバウンド比率が9割に達していたからの業態転換であった。ロイヤルは日本橋馬喰町で、「ギャザリング テーブル パントリー」というキャッシュレス専門の実験店を営業しており、浅草の新業態にあたる両店は、その成果を踏まえて実用的なレストランを構築した感がある。

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メニューは、ロースかつ120g(780円)、ヒレかつ120g(1,080円)、大ロースかつ(950円)といった、3つの定食のみ。生ビール中が540円で飲める。ロース肉には脂の融点が低く、旨み、甘みのある味わい豊かな「チルドポーク うらら三元豚」を使用。ヒレ肉には抜群にやわらかな肉質の「国産赤城山麓豚」を使用している。ソースは黒胡麻のコクを活かした香り高い仕上がり。カツの旨みを引き立たせるフランス・ロレーヌ産の岩塩も用意した。米は揚げ物、肉料理との相性を考慮して、会津産コシヒカリを使用。ごはんの大盛りは無料だ。

アークランドサービスは、当初「てんや」をベンチマークした天丼、てんぷら業態「てんぷ亭」でスタートしたが上手くいかず、とんかつ「かつや」に転換した経緯がある。今度はテンコーポレーションが、とんかつに進出して、「かつや」を追いかける構図となっている。

3割を占めるテイクアウトの販売

さて、ハイディ日高の「とんかつ日高」、トリドールの「豚屋とん一」、テンコーポレーションの「とんかつおりべ」は、いずれもそれぞれ、「日高屋」、「丸亀製麺」、「てんや」という有名チェーンの多角化として登場している。

価格的には、本格とんかつチェーンの「さぼてん」や「和幸」と、オートフライヤーを活用するなど合理化を徹底したファーストフード型の「かつや」や「松のや」の中間的なゾーンで、「とんかつ日高」は「麦そだち四元豚」、「とんかつおりべ」は「チルドポーク うらら三元豚」と「国産赤城山麓豚」という素材、「豚屋とん一」は店内で切り立てを提供する鮮度の違いで、付加価値を追求している。

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かつや立川北口店

「かつや」の最も安価なかつ丼(梅)は490円(税込529円)だが、同チェーンでは会計時にもれなく翌月末まで使える100円引のクーポンが配布されるので、リピート率が高い。実質、かつ丼はワンコインでお釣りが来る。とん汁(小)120円を付けても、500円を少し超える程度だ。ロースかつ定食の690円も、リピーターにとっては同様に実質100円引である。

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かつやのかつ丼(梅)と、とん汁(小)

一方、「松のや」のロースかつ定食は491円(税込530円)、ロースかつ丼510円は、味噌汁も付いており、味噌汁が好きな人にとっては安いと感じるだろう。

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松のや新秋津店

通常のロースかつでは、「かつや」は120gに対して「松のや」は90gであり、どちらが安いかは微妙なところである。「松のや」には5時~11時のモーニングメニューで、371円(税込400円)の「朝得ロースかつ定食70g」を提供しており、これは文句なしに安い。実際に、朝からしっかり食べたい人で、「松のや」の朝の集客は上がってきている。

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「松のや」朝得ロースかつ定食70g、税込400円。サイズがひとまわり小さく、ポテトサラダが付いているところが通常のロースかつ定食と異なる

低価格とんかつが浸透してきた背景には、テイクアウトの販売が好調で3割ほどを占める点も見逃せない。女性の社会進出が加速化していることがあり、手間のかかる揚げ物はテイクアウトで済ませる傾向が強まっている。これらの外食チェーンでは、揚げ置きをせず出来立てを提供するので、スーパーのつくり置き商品よりも、揚げ立てに近い状態で食卓に並べられるから、喜ばれている。

中食としての魅力もある低価格とんかつであるが、「かつや」と「松のや」を合わせてもまだ600店に満たない。大手3社で寡占化された牛丼は4,000店もあるのだ。まだ、店舗空白地帯が多く残されており、競争が激化するのはまだ先という感覚があるので、外食各社の新規参入が相次いでいるのではないだろうか。

Photo by: 長浜淳之介(とんかつおりべを除く)

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