上場から20年で株価は500倍以上!ジェフ・ベゾスの果てしなき野望

上場から20年で株価は500倍以上!ジェフ・ベゾスの果てしなき野望

  • @DIME
  • 更新日:2017/11/13

Amazonのグローバルの年間売上高は、何と約15兆円超(日本法人は1.2兆円)に及ぶ。株価は上場から約20年で500倍以上に。14か国でeコマースを展開し、総取扱点数は2億種類を超えるとされる。同社にとって「宝の山」と言うべき存在が2002年に開始した法人向けのクラウド基盤サービス(AWS)。現在、190か国に展開し世界シェアは3割を超え、2位のマイクロソフトの3倍近くにも及ぶ。個人消費者にとっても企業にとっても、なくてはならない存在になったAmazon。「巨大帝国」を一代で築き上げたジェフ・ベゾスCEOとは、果たしてどんな男なのだろうか——。

個人資産約9兆2900億円
「片方が常に勝つようにするのが交渉だ」をモットーにする稀代の経営者

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Jeff Bezos
1964年1月12日、米ニューメキシコ州アルバカーキ生まれ。プリンストン大学でコンピューター科学と電気工学を学び、卒業後はウォール街の金融機関でエンジニアとして勤務。1990年にデイビッド・ショー率いる投資管理会社に移籍し、コンピューターネットワークの開発責任者兼上級副社長に抜擢される。インターネットに可能性を感じ、どんなものでも買えるお店「エブリシング・ストア」を実現すべく1994年にシアトルでAmazonの前身となるCadabra.comを設立。

◎天才エンジニアが率いる「テクノロジー集団」

7月27日、経済誌『フォーブス』は自社のリアルタイムランキングで、米アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏(53)が、ビル・ゲイツ氏を抜いて、世界の長者番付で1位になったと速報した。個人資産は日本円に換算すると、約9兆2900億円に及ぶ。

「アマゾンをオンラインでの書籍販売からスタートし成功したEC運営会社という程度にとらえていたら、ここまでの成長に驚くかもしれません。しかしベゾス氏が目指しているのは、創業以来一貫して『エブリシング・ストア』。すなわち、メーカーと消費者をつなぎ、世界に向けてあらゆるものを販売することです。現在も貪欲に新しいジャンルの商品、新しいサービス、人工知能などの新規事業を進め拡大し続けているのですから、アマゾンは今もって成長の半ばにいると言えます」

ベゾス氏の生い立ちから現在までを取材したノンフィクションの日本語版『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』で解説を務めた、滑川海彦さんの分析だ。

オンラインで何もかもが購入できる「エブリシング・ストア」。高速な通信回線やスマートフォンが普及している今なら誰も驚かないアイデアかもしれないが、ベゾス氏がその構想を描き起業したのはインターネットの黎明期、1994年のことだ。

「今日のアマゾンの発展を語るうえで、決して忘れてはいけない事実があります。それはベゾス氏がもともと、ウォール街でも超有名な『天才的なエンジニア』だったということ。そんな彼が後にITのテクノロジーで世界を席巻することになる『エブリシング・ストア』の最初の商品として書籍を選んだのには、もちろん理由があります。どこで購入しても品質が同じで、1種類の商品がすべて同一価値であるジャンル。そしてオンラインで大量に取り扱える……。書籍とはアマゾンが最初に手がけるのには、打って付けの商品だったのです」(以後「」内、滑川さん)

書籍のオンラインでの受注販売を始めたアマゾンは、ほどなく多くの顧客を得ることとなる。その大きな理由のひとつとして挙げられるのが、消費者の書き込みや評価がそのまま掲載される「カスタマーレビュー」の導入など、商品選びをより便利にするシステムを自社サイト内に確立したことだ。

さらにその後も、購入履歴からおすすめの本を表示する「レコメンデーション機能」や、カートに入れてから注文までのフローを簡略化する「ワンクリック注文」など、今に続く便利機能を続々開発。また米国内に専用物流センターを次々と新設するなど、1日でも早く商品が届けられるロジスティックを構築していく。同時にジャンルも拡大。多種多様な商品が用意され、買いやすく、確実に、そして早く届くECサイト——。消費者はたちまちにして心を奪われた。そして現在、アマゾンの総取扱点数は2億種類以上に及ぶという。

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◎世界の大手企業も利用。クラウドサービスの曙

eコマースで巨大化していたアマゾンにとって2002年とは、エポック・メイキングな年である。一般消費者に加え、法人を顧客にするサービスを開始したのだ。

法人向けのクラウド基盤サービス「Amazon Web Services」(AWS)とは各企業が抱える膨大なデータベースなどを、アマゾンが提供するクラウド上に安く、そして大量に預けられるいわばネット上の「巨大倉庫」である。そこではアマゾンが自身のEC等で用意しているウェブサイトやデータ解析、ビジネスアプリケーション、さらにはAIといったITリソースが利用できる。

AWSは現在、190か国に展開され世界シェアは、何と34%(※1)に及ぶ。年率にして約60%のペースで成長を続け、昨年10~12月期の決算によると売上高は35億6000ドルと過去最高を記録。アマゾンの経常利益の7割以上を稼ぎ出す「宝の山」となっている。AWSの開始当初のベゾス氏の口癖は、「開発者とは錬金術師であり、彼らが錬金術を使ってくれるようにするのが我々の仕事だ」だったという。

また、ベゾス氏の元部下は彼を「異常なまでに頭が良く、異常なまでに物知りで、ほとんどエイリアンだ」と評している。

「ベゾス氏はかねてから『我々は正真正銘、長期的です。また、正真正銘、創意工夫を重視しています』と繰り返しています。つまり彼は、2年や3年で結果を出そうとはしていない。卓越した長期的な視点の持ち主なのです。毎年、アマゾンは膨大に増え続ける売上げのほとんどを新規事業のための投資に回しています。そのため創業以来、同社の利益はほぼゼロのままなのです(上図参照)。これは、ベゾス氏が常にはるか先を見据えて『次の一手』を打ち続けていることの証左といえます」

2014年11月には世界初となる人工知能搭載スピーカー『Amazon Echo』を発売。現在、同市場での利用シェアは70%を超えるという。ライバル企業に比べ、新規事業に取り組む早さと開発費の規模が圧倒的なアマゾン。今年6月にも、米高級スーパーマーケット大手「ホールフーズ・マーケット」の買収を発表(8月に1兆5000億円超で買収)。その直後、冒頭の通りベゾス氏は長者番付1位に躍り出る。

「今や『アマゾンが進出するらしい』と噂が立つだけで、その業界のライバル企業の株価が、軒並み下がるといわれています。アマゾンはそれくらい大きな影響力を持った巨人になったということです」

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年間売上高は2015年度に、1兆4000億ドルにまで成長。約20年間、売り上げは右肩上がりにもかかわらず、巨額投資を繰り返し、利益は創業以来常にほぼゼロ。常に10年以上先という長期スパンを見据え「次の一手」を打ち続けるベゾスCEOの稀代の経営戦略の証左だ。

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今年4月、「ブルー・オリジン」の宇宙船の内部構造を一般公開するジェフ・ベゾスCEO。

揺るがぬ理念は
「顧客第一主義を世界で一番実現する企業になる」

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◎事業への投資は莫大。一方で有名な超倹約家

ベゾス氏の巨額の投資は、アマゾン本体の事業拡大だけにとどまらない。2000年、彼は航空宇宙企業ブルー・オリジン社を設立する。自社製ロケットが高度100kmまで上昇し、約10分間の宇宙旅行を乗客たちに提供するという宇宙旅行プランは来年にも開始するといわれている。だが、宇宙事業への進出の本当の狙いは観光業ではなく、はるか先にあるようだ。

「これまでのロケットは衛星打ち上げのたびに、使い捨てでしたが、ロケットを回収・再利用できれば、宇宙事業の分野で大幅なコストダウンが可能になります。実際、ブルー・オリジン社はイーロン・マスクCEO率いるSpace X社に先駆けて、2015年11月に再利用を目的としたロケットの着陸に成功しています。宇宙開発には多くのITの寵児たちが挑み苦戦しましたが、ベゾス氏なら、ものすごいことをやり遂げてしまうのではないかと感じています」

一方でベゾス氏は、無駄なお金を一切使わない大変な倹約家としても知られる。

「アマゾンの新入社員に用意されるのは、ドア用の合板木材で作られた簡素なデスクです。これはガレージで起業した当時のベゾス氏の初志を社員にも忘れないでもらいたいという哲学であると同時に、利益はすべて事業や顧客のために使い、そのほかには1円の無駄も許さないという、ベゾス氏の強い決意の啓蒙活動でもあります」

そしてもうひとつ、ベゾス氏とアマゾンを語るうえで忘れてはならないキーワードが「Customer Obsession」(顧客第一主義)という創業以来のベゾス氏の経営理念だ。

例えば2005年から導入された会員制サービス「Amazon プライム」の例を見てみよう(日本では2年後に導入)。配送料の無料など特典満載で、会費だけではとても収益を上げることなどできないであろう破格の会員制サービスには、今なお次々と特典が加わり、アメリカでの会員数は8500万人(※2)に上るという。「エブリシング・ストア」という、当時は荒唐無稽とも思えたビジョンは着実に実現へと向かっているかのように見える——。

◎史上初の時価総額1兆ドル企業も目前!?

ウォール街では目下、史上初の時価総額1兆ドルを突破するのは、どの企業なのかという予想レースが続いている。その最右翼として、アップルとともに名前が挙がっているのがアマゾンだ。総務省の資料(※3)によると、世界のeコマースの市場規模は2015年時点で約1.7兆ドル。商取引全体の規模からすれば、まだ1割にも満たない。つまり、eコマースの世界にはまだまだとてつもない伸びしろがあるのだ。

「アマゾンは目下、メーカーと消費者をつなぎ、中間業者として利益を得る〝鞘取り〟の『エブリシング・ストア』から、自社製の商品を揃え、自社のリアル店舗で販売し、世界経済でのイニシアチブをより強固にする『エブリシング・カンパニー』へと、大きく飛躍を遂げようとしています」

「顧客第一主義」により、消費者は確かに「安く」「早く」、アマゾンから商品を手にすることが可能となった。だが、一方で今年9月末、創業69年になる米玩具大手トイザラスが稼ぎ時とされる年末商戦を前に破産。その理由のひとつは、アマゾンなどのネット通販の隆盛にあるといわれる。また日本でも、アマゾンジャパンに依存する物流大手が安い配送料と物流量の増大に悲鳴を上げるに至った事実も忘れてはいけない。

ベゾス氏の経営戦略は、必ずしも穏やかな手法ばかりではない。最後に彼の経営者としての冷徹さを物語るにふさわしい発言を紹介しよう。

「片方が常に勝つようにするのが交渉だ」(ジェフ・ベゾス氏)

商取引の世界を変え、さらに変えようとする男の正体は、消費者にとって、そして経済全体にとって救いの神なのか、それとも——。

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[お話を伺ったのは]滑川海彦さん
東京大学法学部を卒業後、東京都庁勤務を経てフリーに。『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(日経BP社)では、解説を担当。IT分野の幅広い知識を生かし、TechCrunch Japanなどで著述・翻訳者として活躍。

※1=米調査会社Synergy Research調べ。表:Alison Griswold, Amazon never cared about profits’, Quartz, 2012, reproduced with permission from The Atlantic Monthly Group, Inc. Copyright (c) 2012 CCC Republication.
※2=米調査会社CIRP調べ。
※3=総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究」(平成28年)より。

文/編集部

※記事内のデータ等については取材時のものです。

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