全米で「毎日1000台」売れる車、トヨタ・カムリが大変身

全米で「毎日1000台」売れる車、トヨタ・カムリが大変身

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/11/20
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初めて新カムリを見た瞬間、比喩がいくつか湧きあがってきたので、僕の脳はちょっと戸惑った。待てよ。外観デザインをそんなに変えるとは意外。カムリはこれまで15年間アメリカでベストセラーだったのに、トヨタはその成功をフイにするだろうか?

全米で毎月平均3万台、つまり毎日1000台も販売されている。カムリはバニラアイスクリームだ。平凡かも知れないけど、市場はバニラが好きなのだ。どうしてわざわざ他の味を投入する意味があるだろう。「それが合っているなら、手放すな」という諺だってある。皮肉ではないんだ。

実は、同車の開発主査の勝又正人も「カムリは食パンだ」と言う。「特にアメリカではね。毎日食べても大丈夫、決して失望することがないのが、食パンです」

ところが、トヨタは新しい道を行くことに決めた。食パンの材料を変えてみようと。勝又によれば、SUVの人気急上昇の影響でセダンの販売台数が年々、少しずつ落ち気味だと言う。セダンであるカムリの寿命を延ばすために、思い切ってデザインを一新する必要があった。

数年前、豊田章男社長はトヨタの高級ブランド、レクサスのみならずトヨタのデザイナーにも、「もう、平凡さはいらない、もっと個性的でスタイリッシュでなくてはならない」と宣言していたのだ。ということで、外観の平凡さを捨てて、こんなに変身したということだ。なるほど。

正直に言って、新型カムリは、かなりカッコいい。従来と比べてよりワイド&ローというプロポーションがよくなっている。全体的にボディとシルエットは評価できる。だが、日本向けのグリルについては、賛否両論だ。良く言えば「トランスフォーマー」に登場するロボットに付いていればぴったりのような、ガンダムっぽいデザインだ。でも悪くいえば、目を細めて睨んでいる歯列矯正中の猫か、オキアミを飲み込んでいるクジラのようだ。

しかし、面白いことに、アメリカ仕様の中には、よりシンプルでスポーティなグリルもオファーされている。それは羨ましい。

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さて、室内もバニラ・アイスを脱する路線で、ダッシュボードはS字にインスパイアされたデザイン、これまでより高品質な素材を使ったコクピットはなかなかいい。シートにはスタイリッシュなステッチも施されているしね。デザイナーがかなり頑張ったことは、よく分かる。

室内に採用された木目調のトリムは、好きな人は好きだろうという感じ。予算をかけた部分と、節約したところが一目瞭然。たとえば、インフォテイメント・システムにはお金がかかっているが、黒いプラスチック製のカップホルダー周りは、ダッシュボードに比べて合理化されたことが分かる。

さて、エンジンだ。ホンダ・アコードを含めて、ライバル車種の多くはより小型の4気筒ハイブリッド、ターボになる傾向だが、新型カムリはアメリカでは2.5Lガソリンエンジンと2.5Lハイブリッドに加え、やはり人気のV6も揃えている。ただし日本ではCVT付きの4気筒2.5Lハイブリッドのみだ。

それでは試乗してみよう。CVTを「パーク」モードから「ドライブ」モードにシフトし、電動で音もなく動きだす。ダッシュボード上のエネルギー・フロー・モニターで状態を見る事ができる。これを見ると、何となく地球に優しいことをやっているというマインドになる。アクセルをさらに踏むと、音と振動を多少出しながらエンジンが作動する。金属的なノイズで電動の静けさが破られる。

2.5Lエンジンとハイブリッドの組み合わせによる最高出力は208hpで、アクセル・レスポンスはすばやく、加速性も充分だ。CVTはよりスムーズに変速できるようにチューニングされていて、しっかり加速してもウイーンという音と振動が低減されている。燃費は28km/Lとトヨタ側は行っているが、リアルワールドでは22km/Lを達成できれば立派。だが、「スポーツ」モードにしても、なぜかパフォーマンスや走りにほとんど違いを感じなかった。

新型カムリは静粛性が向上し、直進安定性は優れている。あらゆる路面で剛性がかなり上がった新シャシー性能が発揮され、思ったよりも動きがシャープだったが、車重が軽くなった効果もあるだろう。ステアリング操作はちょっと軽めだが手応えよく、路面からのフィードバックもいい。

今日の中型ファミリーカーの常として、トヨタ・セーフティ・システムはレーンキープ、レーン離脱警告、前方衝突警告、自動緊急ブレーキ、ACC(クルコン)を装備。このACCが作動している時のブレーキは、初期の利きがよくてレスポンスも速い。でも、ブレーキペダル剛性はもっと滑らかだといいのだが。ブレーキはちょっと唐突すぎで、止まる寸前にカックンとなる。自分で踏んでもACCが自動的に踏んでくれても、この症状は同じ。

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カムリは、日本ではさほど人気者ではないが、アメリカでは超売れっ子だ。

トヨタがバニラアイスの味の調合をどんなに変えたとしても、その人気ぶりに影響はないだろう。SUVと競争するのに、そのくらい味を変えないといけない。たとえ、価格が420万円からでもね。

事実、新しいパワートレーンも、安全性と信頼性の高いレベル、 向上した乗り心地とインテリアの質感と新しいボディ・デザインを持ってすれば、たとえノーズは賛否両論であっても、マーケットがそっぽを向くことはないだろう。勝又が言うように、カムリは「毎日乗っても、がっかりさせない」セダンだ。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話

「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

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