韓国、資金流出による通貨暴落危機を回避の見通し...米国と通貨スワップ取極締結

韓国、資金流出による通貨暴落危機を回避の見通し...米国と通貨スワップ取極締結

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  • 更新日:2020/03/26
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新型ウイルス肺炎が世界に拡大 韓国で非常経済会議を開催(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

韓国時間の3月19日夜10時、韓国銀行とアメリカの連邦準備理事会(FRB)は600億ドル規模の通貨スワップ取極を締結したことを公表した。取極の期間は最低6カ月間(2020年9月19日まで)である。FRBは以前より、イギリス、欧州、日本、スイス、カナダの中央銀行と通貨スワップ取極を締結しているが、今回、メキシコ、ニュージーランドなど韓国も含めて9カ国とも新たに締結した。

韓国の通貨であるウォンは対ドルでこのところ下落が続いていた。2019年上半期は1ドル1100~1150ウォンで推移していたレートは、7月以降、米中貿易摩擦や日本の対韓国輸出管理適正化策など貿易環境に不確実性が増したことに加え、景気も息切れが見え始めたこともあり、一時期1200ウォンを超えるウォン安となった。しかし9月には貿易環境の懸念がひとまず後退したことから持ち直し、2020年1月中旬には1ドル1150ウォンまで戻った。

ウォンの安定が崩れたのは1月下旬になってからである。新型コロナウィルス感染拡大の影響がじわじわと出始めて、2月24日以降は1ドル1200ウォンを超えるウォン安となり、ウォン安に歯止めがかからない状況となっている。韓国は1990年代に入ってから資本移動の自由化を進め、1997年のアジア通貨危機以降、自由化が一気に進んだ。その結果、欧米をはじめとする投資家が積極的であれば、韓国の株式市場や債券市場などに資金が流入してウォンが高まり、消極的になれば資金が流出しウォン安に振れる傾向が強まった。

具体的には、2008年9月のリーマンショック後の急激なウォン安があるが、そこまで深刻でないが、2011年には欧州政府債務危機、2016年には中国の金融不安などを背景に投資心理が消極的となりウォンが下落した。そして今回の新型コロナウィルス感染拡大は投資心理を大きく冷やしており、韓国から外国人の投資が流出しウォンが下がり続けている。こうなってくると韓国にとって重要なのは通貨の安定となるが、急激に韓国から資本逃避が起こった場合に備えてウォンを買い支えることが必要となってくる。

その際に必要なものはドルである。韓国は2月末現在で4092億ドルの外貨準備を有しており、中国や日本には大きく及ばないものの、その金額は世界9位である。韓国は1997年のアジア通貨危機時に外貨準備が底を尽き、ウォンが急落することになったが、当時とは状況がまったく異なり、これだけの外貨準備があればウォン防衛はたやすいようにみえる。

しかし状況はそれほど楽観的ではない。韓国は外貨準備の9割以上を外貨建ての有価証券で保有しており、アメリカ国債も多く保有している。よってウォンを買い支えるには主にドル建ての有価証券を売却してドルに換えることが必要であるが、金融市場への影響を考えれば一気に売却することは難しい。これでは、急激に外国人の投資が韓国から流出しウォンが急落する事態が発生しても、ドル売りウォン買い介入をすることでウォンを支えるためのドルが不足することになる。

ある程度相殺されるウォン安

そこで役立つのが通貨スワップ取極である。韓国は多くの国と通貨スワップ取極を結んでいたが、基本的には自国通貨と相手国通貨が交換される。しかしウォンを迅速に買い支えるといった観点からはドルを受け取ることができる通貨スワップ取極が望ましい。

実際、リーマンショック後のウォン急落時の2018年10月に、韓国はアメリカと最大300億ドルのドルの供給を受ける通貨スワップ取極を結び、実際に資金の融通を受けた。ただし、アメリカとの通貨スワップ取極は2010年の満期後延長されなかった。日本も韓国と自国通貨とドルを交換する通貨スワップ取極(ドル不足に陥った国が自国通貨を出しドルを受け取る)を締結したことがあり、2011年10月から1年間はその額が400億ドルに達したが、その後の日韓関係もあり2015年には取極が終了している。

今回の韓国とアメリカの通貨スワップ取極により、ウォンが急落する可能性はきわめて小さくなったと考えられる。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大の影響は長引くことが予想され、その間、ウォンがだらだらと低下していく可能性は否定できない。ウォン安は輸入依存度が高い韓国の物価を引き上げることとなる。

しかし、同時に主要輸入品である原油価格も低下しているので、ある程度相殺される。韓国の実体経済は今後萎縮していくことが考えられるが、通貨急落という当面のリスクは回避されたという観点から、今回の通貨スワップ取極には注目する必要があろう。

(文=高安雄一/大東文化大学教授)

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