東京3市、ごみ焼却業務をゼネコンに丸投げの15年間包括契約...中止を求め住民監査請求

東京3市、ごみ焼却業務をゼネコンに丸投げの15年間包括契約...中止を求め住民監査請求

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  • 更新日:2016/12/01
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東京都三多摩地域の清瀬市、東久留米市、西東京市のごみの焼却等を行う「柳泉園組合」では、昨年(2015年)9月の水銀汚染事故に続き、粗大ごみや不燃ごみの破砕施設での爆発事故、そして構成3市の市民が不燃ごみとして分別した「燃やさないごみ」の8割を焼却していたという不祥事が続いている。

ところが、柳泉園組合はこれら不祥事問題を横に置き、今年8月24日に「長期包括契約」【註1】を柳泉組合議会に提案した。同契約は、柳泉園組合が行っているほとんどすべての業務を、15年間にわたり焼却炉メーカー等に丸投げ的に委託する契約案である。柳泉園組合は同議会の賛同後、構成市へ同契約の提案もせず同意も得ないまま、8月31日に契約の入札公告を行った。

これに対し11月4日、3市の市民が「総額144億円、3市で毎年10億円の出費が必要になる契約が、3市の市民に説明されず、3市の議会にも提案されずに進められている」と契約の中止を求めて住民監査請求を行い、記者会見をした。

監査請求は、柳泉園組合へは清瀬市の阿部洋二氏を代表に6名で(その後11名)で、西東京市へは西東京市の森輝雄議員を代表に3名で提出し、11月いっぱいをメドにさらに賛同者を募るという。

ごみの焼却処理は自治体が運営しており、それでも各地で環境・安全上の問題が起きている。そしてこの自治体にとって難問であるごみの焼却を、環境・安全面における取り組みにもっとも後ろ向きであったごみ焼却炉メーカー・ゼネコンに丸投げするというのが、今回の長期包括契約である。

東京都の一地域で始まったこの長期包括契約の動きは、全国の自治体やごみ処理の在り方を大きく、悪い方向に変えていく恐れがある。今回は同契約について取材した。

●お金を出す市や市民に相談せず、なぜ契約?

今回の長期包括契約案によると、その目的は、本施設に搬入される一般廃棄物を適正に処理することとし、委託する事業内容は、「搬入管理」「運転管理」「維持管理」「環境管理」「情報管理」「余熱利用」」「防災管理」その他関連業務とし、ごみの焼却施設のほぼ全部を「包括」的にカバーする。その期間は、17年7月1日~32年6月30日の15年間となり、金額(予定)は144億4140万4000円と示されている。そして入札方法は、総合評価一般競争入札、いわゆるプロポーザル方式で行うとされ、価格で競う一般競争入札のかたちをとっていない。

これに対して、監査請求した阿部さんらは、

「なぜ長期にわたり民間委託が必要なのか」
「自治体の管理から民間に移したときに、ごみが減ったときは契約の見直しがあるのか」
「安全面や金額面で問題が出ることがないのか」

など一切の問題を伏せたまま契約が結ばれようとしていることが、疑問だという。

3市のごみ処理の流れとしては、市民がごみカレンダーに基づき「可燃ごみ」「不燃ごみ」「粗大ごみ」「有害ごみ」などに分別して出したごみを、各市ごとに収集し、柳泉園組合(写真2:全景模型)に運び、焼却した後の焼却灰や細かく砕いた不燃ごみを、最終処分場等に運ぶ。

最終処分場は、三多摩の25市1町でつくる「三多摩地域廃棄物広域処分組合」という。一方「容器包装プラスティック」は、資源として別の処理ルートに運ばれる。こうした「組合」は、本来市町村で担う行政サービスの一部分を共同で担うという意味で「一部事務組合」【註2】といわれ、議会や監査委員会などを持っている【註3】。

しかし柳泉園組合のようなごみの処理のためにつくられた一部事務組合は、構成自治体の負担金によってほとんど財政上は賄う。したがって、3市の市民の税金で運営されているといってよい。普段は3市が毎年の負担金を予算化し、その予算の範囲で柳泉園組合は事業活動を行っている。その意味では、構成自治体である3市は、一部事務組合のオーナー自治体といってよい。

ところが今回の契約は、15年間にわたり事業のほとんどすべてを委託するという大転換である。先の森議員は、こう指摘する。

「オーナーである構成自治体に、契約の是非を問い、了解も取ることなく契約を進めようとしているが、柳泉園組合が契約を結べば、構成自治体が毎年約10億円の負担金を支払うことになる。構成自治体に相談なく行う契約(=債務負担行為)は、自治法の違反の疑いがある」

請求人の市民が指摘するように、お金を出す自治体や市民になぜ相談し、了解をとることをしないのか。まったく不可解な対応である。

●減る一方のごみを、今の処理量を基準になぜ長期契約?

記者会見に参加した市民が特に強調したのは、構成3市では日常的にごみの減量化に取り組み、今後もごみを減らす努力を続けている。ところが長期包括契約は、これまでのごみの量を前提として契約を締結しているという点である。組合側は15年間の長期で契約を結ぶ結果、計43億円安くなるとしているが、市民らは、実際はごみの減量化によって処理するごみ量が減り、もっと安くなる可能性があると主張する。

東京三多摩地域は、ごみのリサイクル問題に生涯取り組んだ早稲田大学の故寄本勝美教授が市民とつくった「東京・多摩リサイクル市民連邦」などの活動もあり、ごみの資源化率は全国でもトップレベルをいく活動を行ってきている。その三多摩地域の市区町村のなかでも西東京市は、ほぼ毎年トップ3から外れない。清瀬市でもごみ量は減り続け、東久留米市でも来年から実施されるごみ袋の有料化によって、ごみ量が大幅に減ることが予想される。

過去の実例でも、選挙で市長など首長が変わり、ごみの半減化活動や生ごみの資源化を実施したところでは、焼却するごみ量が劇的に減った自治体がある。

今回の長期包括契約は、ごみ量は過去の10年間を基準にして、そのままの状態を続けることが想定された15年計画になっている。ごみの減量化に取り組んできた西東京市の消費者団体連絡会への取材でも、「いま取り組んでいるごみの減量化に向けての努力が、生かされない」「民間業者に丸投げ委託されれば、市民の努力によって家庭から出るごみ量が減った時には、経営上の安定性を求めるため、余力のできた焼却炉で産業廃棄物なども受け入れ燃やされることにならないか」という心配する声も聞かれた。

森市議も「構成市では4年ごとに選挙が行われ、市長が交代する可能性がある。新たな市長が生ごみの資源化など大きく政策上の転換を計ろうとしても、現状のごみ焼却のまま変更できなくなり、将来の自治権の幅まで制限されてしまう」と心配を隠さない。

●柳泉園組合は、誰の、なんのための長期包括契約を結ぼうとしているのか

監査請求人や長期包括契約の契約案の内容、柳泉園組合の助役の話を聞いていて、今回の提案には、契約を結ぶ動機も説明されず、起承転結が明確にされていないことがわかった。

長期包括契約を柳泉園組合が提案するにあたって、現状で解決すべきどのような問題を抱えていたのか、この契約によって何がどう解決されるのか。それらの点がまったく曖昧で説明されていないのである。

柳泉園組合の助役は、15年間の長期契約にすることによって「43億円」安くなるという点を強調しているが、財政上の問題で今回の契約を進めるというのならば、お金を負担する構成市に何も相談せずに進めるのは、明らかに不可解である。

しかも、その43億円安くできるという計算は、誰が行ったのか。客観的状況から成り立つ計算であれば、単に柳泉園組合が今まで経費をかけすぎていたということであり、今後は経費削減に努めればよいだけである。もし特定の企業に相談して「15年契約になれば、それだけおまけする」という確約をもらっていたのであれば、すでに落札業者は決まっているのも同然となる。

お金が安くなるという一方で、入札方法は落札価格の高低で事業者を決める一般競争入札ではなく、総合評価方式という落札事業者を柳泉園組合が実質自由に決められる方式にしている。実質、随意契約と変わらないという声もある。

入札応募条件をみると、「焼却炉の建設にかかわった焼却炉メーカー等」ということであり、柳泉園組合の実情に通じている焼却炉メーカーが結局落札するのでは、とすでに噂されている。

しかも入札公告に至る経過(図表1)をみると、最大の特徴は、審議に参加しているのは柳泉園組合や行政機関、行政機関のOBなどに限定され、住民や市民団体、そしてその代表としての議員や周辺住民の参加も一切ない。

振り返って、この長期包括契約による最大の受益者は、落札する焼却炉メーカーであろう。15年の長きにわたり競争なく安定的に仕事にありつけることになる。市民への説明や議会での正々堂々とした論議をせず、本来行政の監視役として議会に送られている議員すら全体像がわからないまま、入札公告がされたという事実だけが進行し、住民の声は最初から排除されている。不透明さという点では、築地市場の豊洲移転と同様といえる。

●ごみの焼却と自治体の役割―丸投げ委託は自治体の空洞化?

築地市場の豊洲への移転も、移転間近になって豊洲での汚染対策、安全性の確認などが行われ、東京都議会では基本的な議論や点検が行われていなかったことが判明し、大騒ぎになっている。豊洲移転に関係し、築地市場の事業者や利用者住民の声を無視した巨大な箱物造りの実態が明らかになるきっかけは、重金属汚染に対して埋め立て土による汚染防止策がとられていなかった環境問題だった。

今回の自治体による丸投げである長期包括契約は、これまで自治体が行ってきたごみの処理を、民間の営利企業に委ねるという大転換を含んでいる。そのことによって、環境汚染や住民の健康を守るということに対処できるのであろうか。かなり根本的な論議が必要になると考えられる。

人間の営みのなかでごみ・廃棄物の処理は、衣食住や経済活動の結果として必ず生み出されるものであり、下水処理と並んで大きな役割を持つ。ごみ処理場は、プラスティック焼却によるダイオキシンなど有害化学物質や重金属を煙突から放出し、PM2.5なども排出する特定迷惑施設である。大気汚染防止法やダイオキシン類対策特措法上等の定めによって、定期的な測定を行い、環境への影響を防止する義務を負っている施設である。

したがって、自分の住み家のそばに焼却炉があればよいと歓迎する人はいない。ごみの処理は社会にとって必要不可欠でありながら、ごみの焼却や埋め立て処分による環境や健康への影響は、極力少なくする努力が欠かせない施設である。自治体が存在する主要目的は、住民の安全と健康の維持であり、一方、民間企業のそれは商品の開発、生産、販売、そしてサービスによって社会的な役割を果たすと同時に、企業体の存続を図ることにある。

自治体の場合、環境や住民の健康に影響を与える問題に直面した時には、採算を度外視して事に当たることが求められ、またそのような役割を持っている。その点で営利企業体とは異なる。

迷惑施設として周辺の住民に配慮しながら運営されてきたごみ処理を、民間企業に丸投げすることが法令的に可能なのか。また、そのことで住民を守ることができるのか。公害防止や環境保全の点で大きな役割を持つ自治体が空洞化することがないのか、問われている。

もう一点、廃棄物処理法では、家庭や地域の小規模事業者から排出される一般ごみは、市町村が自ら計画を立て、その計画に基づきごみ処理を行うことが定められている。つまり、ごみの処理は、社会的に必要不可欠ではあるが、その処理施設(焼却や埋め立て)周辺の住民に迷惑を与えるものなので、そのことを極力少なくするための不断の努力について、「ごみの減量化に向けての計画を立て、その計画に基づき実施すること」と定めている。地域の一般ごみの処理の役割は、その市区町村、基礎自治体の役割としている。

その規定の下、災害時に排出される災害廃棄物も一般ごみとし、基本的には地域の実情をもっとも把握している市町村の役割としている。

その市町村が、ごみの処理を民間企業者、しかも、ごみが減っては商売が成り立たない焼却炉メーカーに委ねることの是非も問われている。今、東京都三多摩地域にある柳泉園組合で進められている長期包括契約は、このような基本的な論議なしに進められない重要なテーマを含む問題と言える。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

【論点整理】

(1)基礎自治体である構成市のごみの処理の一部を担うごみ焼却組合が、その業務のほぼ全部を民間企業に委託することが、法令的に可能なのか。

(2)ごみの焼却処理は環境問題の観点からも重大問題であり、都市部における公害の発生源であるごみ焼却、清掃工場の施設運営を、巨大焼却炉メーカーに委託することの是非

(3)このような重大事を一事務組合であるごみ焼却組合だけで決めてよいのか、という自治法上の問題

【註1】:柳泉園組合クリーンポート長期包括運営管理事業
【註2】:自治法上は特別地方公共団体
【註3】:三多摩地域では「病院」「競馬」「競艇」「プラネタリウム」などの運営をする「一部事務組合」等もある。柳泉組合議会の議員は、構成市ごとに3人ずつ選ばれ、全体で9名で構成され、年間の定例議会は、3、6、9、12月議会が各1日ごとに4日間開かれる。

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