れいわ旋風を巻き起こした山本太郎の共感を集めて拡大する力

れいわ旋風を巻き起こした山本太郎の共感を集めて拡大する力

  • @DIME
  • 更新日:2019/10/20

4月に設立された政治団体が、3か月後の参院選で約228万票も集め、2人の議員を誕生させた。わずか3か月で、なぜこれほどの人と票を集めることができたのだろうか。この夏、“れいわ旋風”を巻き起こした山本太郎の共感を集める力に注目した。

No image

山本太郎
1974年兵庫県出身。「れいわ新選組」代表。1990年、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ダンス甲子園」に出場。91年『代打教師 秋葉、真剣です』で映画デビュー。『バトル・ロワイヤル』『GO』などに出演。2011年4月から脱原発活動を開始。13年に参院選に当選。19年に「れいわ新選組」を設立。著書に『僕にもできた! 国会議員』(筑摩書房)。

No image

9月に行なわれた東京・赤坂見附の「れいわ新選組」の事務所開き。支援者が詰めかけ、事務所に入りきらなかった人たちは通りのパブリックビューイングに見入っていた。

想像してほしい。いつまであなたは絶好調でいられるだろうか?

■3か月で寄付金4億円、集めた票は約228万票

4月10日。まだ新元号発表の余韻が残る中、山本太郎氏が「れいわ新選組」を立ち上げた。それまで所属していた自由党から独立し、たったひとりでの旗揚げだった。

しかし3か月後の参院選に向けて9人を擁立。東京・新宿から始まった街頭演説の様子はSNSで拡散され、選挙戦最終日の新宿西口は大勢の人で埋まった。

立ち上げからの3か月間で、集まった寄付金は4億円に上る。そして参院選。れいわ新選組が集めた票は約228万票。そのうち山本氏の個人票は、全立候補者の最多の99万票以上を集めた。

なぜこれほどの票を集めることができたのだろうか。

選挙戦中、ほとんどのマスメディアは、れいわ新選組の盛り上がりを取り上げることはしなかった。まだ政党として認められていなかったこともある。だから山本氏とれいわ新選組の主張は、ほぼSNSを通して拡散された。東京・新宿から始まった街頭演説は、「れいわ新選組YouTubeチャンネル」で即刻、流れた。

「政権をとりにいきたいんですよ。力、貸してくれませんか?」

「“クソ左翼”という言葉をいただきました。(中略)私は右翼でも左翼でもないフリースタイルです。だからこそ永田町の空気を読まずにひとりで旗揚げするんですよ」

再生回数は130万回を超えた。

7月21日。参院選の得票率は4.55%。れいわ新選組は、日本の公の政党になった。

No image

7月の参院選では山本太郎氏の街頭演説がYouTubeで130万回再生されるなど、SNSで注目を集めた。集まった寄付金は4億円。「電車賃を残して200円、寄付してくれた」人もいた。

■20年間の芸能生活をやめて初めて知った世界

2011年3月まで、山本太郎氏は俳優だった。芸能人として順調なキャリアを歩んできたと言っていいだろう。その男が、政治の世界に踏み込んだきっかけは、福島第一原発の事故だった。

入り口は脱原発だったが、山本氏は間もなく、労働問題、貧困問題、人権問題とテリトリーを広げていった。なぜか。

「すべての問題は根底でつながっていると気づかされたんですよ」

脱原発運動で全国の現場を訪ね歩き、関係者からレクチャーを受けながら気がついた。原発問題の根元にも貧困問題があるのだと。

「全然知らなかったんですよ。そんな世界があるなんて。ずっと芸能界にいたから。自分は安定していたから。労働問題や貧困問題を支援している弁護士や、草の根活動をされている方の話を聞いたり、現場を見たりして、この世が地獄だったんだと気づいたんです。すごい衝撃でした」

貧困など経験したことのない、芸能界で長年キャリアを築いてきた男が、貧困の現場を見て気づいた。自分だっていつ貧困になっても、おかしくない。

「今は勝ち組って人も、いつ事故で障害者になるかわからない。それは明日かもしれないし、1年後かもしれない。どんなケースであっても人間の尊厳を失わず生きていけるよう支えるのが社会保障であってほしいと考えます。日本の社会保障は、何もかも失うという前提でないと受けられません。そこからまた立ち直れ、メインストリームに戻れなんて、ハードル高すぎませんか? 全財産をなくす、ずっと手前で支援を受けられる仕組みにするべきです」

参院選では「特定枠」を利用し、2人の重度障害者を当選させた。「特定枠」とは、得票に関係なく、比例区であらかじめ決めた特定の候補者が優先して当選する仕組みだ。その枠に無名の重度障害者を、しかも2人充てるという発表は周囲を驚かせた。山本氏自身が当選するには、れいわ新選組全体で300万票以上が必要になるからだ。

「山本太郎を落とすな!」

この特定枠使用の知らせが入ると、山本氏の演説のSNS拡散はいっそう熱を帯びていった。彼自身は、この選択の意図をこう語る。

「一番立場が弱い人、例えば、重度障害者が人間の尊厳を奪われずに生きていける社会なら、それはおそらく誰も切り捨てられない社会だと思う」

■消費税を増税した分、大企業は減税されている

山本氏の政策は、社会的弱者の救済をメインに据える。これを不安視する人は多い。そしてこう聞く。その財源はどこにあるのか?

これについて山本氏は「法人税に累進課税導入」 「分離課税を廃止し、所得税を総合課税化、最高税率引き上げ」などで、約29兆円が調達できると答えている。

「シンプルな話で消費税が増税された目的を考えてみる。大企業に減税し、金持ちに減税し、減った分を消費税で補う。これが20年間、繰り返されてきたことです。それでデフレは解消しましたか? 本当にあなたの生活、豊かになっていますか? 読者の中には株などの投資で足りない給料を補う人もいるかもしれない。私はそこから税金取ろうと言っているわけじゃありませんよ。私がターゲットにしているのは富裕層。その最高税率を上げる。年収10億円、100億円稼ぐ人からって話です。どうぞ安心してください」

No image

2019年2月の参議院本会議。「総理、日本以外でデフレが20年以上つづいた国があれば教えてください」「力を合わせて好景気に向けて前に進みましょう」と訴えた。

「山本太郎、大っ嫌い」という人の力も借りなければ世の中は変えられない

■資料を読むのが苦手だった山本太郎の勉強法

山本氏の初当選は2013年7月。当時は原発問題以外のテーマ、例えば、税制や労働問題などの知識は不十分だったという。それをどのように補ってきたのだろうか。

「あまり文字を読んでこなかった人生で。台本ぐらいしか。文字の処理能力が異様に遅い(笑)。でも、苦手なことに時間を使っている余裕はありませんでした」

と振り返る山本氏の勉強は、イチからレクチャーしてくれる人を探すことから始まる。難しいのは人選だ。誰の本を読み、誰の説を採るのか。山本氏はちょっとでも方向性が重なる人を見つけてはアポを取り、レクチャーを求めてきた。

「国会の質問を作る時は、文字を読むのが得意な秘書が、膨大な資料から私が求めるエッセンスを抽出し、それを私に読んで聞かせます。私はそれを聞きまくって質問を考え、台本に仕立てます。はじめはパソコンも使わず、1枚の紙を何枚もつなぎ合わせて巻物みたいにして切った貼ったしてました(笑)」

今も山本氏は様々な専門家に積極的に話を聞きに行く。そのネットワークがあればこそ、れいわ新選組の立ち上げ直後で9人もの候補を擁立できたのである。

1㎜でも同意できる部分があるならお願いできる

“れいわ旋風”後はマスメディアも山本氏を取り上げ、反論も大いに湧いた。消費税ゼロなど耳ざわりのいいことばかり言う「左派ポピュリズム」ではないかと。

これに対して、山本氏はある番組で「人々を救うことがポピュリズムと言われるなら、私はポピュリストでかまわない」と答えている。アンチも否定しない。

「目的は世の中を変えることですから、ひとりでも多くの人の力が必要です。“山本太郎、大っ嫌い!”という人たちの力も借りなければ、世の中、変えられない。100も200もある政策の中でひとつでもいい、1㎜でもいい、同意できる部分がもしあるとしたら、その1点でもいいから力を貸してくださいとお願いする」

消費税廃止を公約の第一に挙げるれいわ新選組だが、山本氏は9月に入って、「まずは消費税5%へ減税」を掲げて野党共闘を呼びかけた。これに最初に応えたのは日本共産党だ。

「考え方が違う、相容れない部分はあるかもしれない。でも、それ以外で落としどころがあるならば、それを見つけるのが私たちの仕事」

れいわ新選組と日本共産党。支持率を合わせても3%にすぎない(時事世論調査9月版)。だが彼が注目しているのは、今や5割を超える無党派層だ。

「変えられますよ。だってこの前の参院選にも50%の人が投票していない。全員が1票を持っているんです。宝の山ですよ。この50%の人たちが手を組んだら全然違う世界になる」

最近まで、山本氏には住む家がなかった。この夏、落選して議員宿舎を出たあと、「無職だから」と賃貸を断られつづけたのだ。人はいつ無職になるかわからない。たとえそうになっても住む家はあってほしい。山本氏は今、「住まいは権利」を重要政策に掲げている。

9月後半から山本氏は街頭演説の全国ツアーを開始した。スタートは北海道。10月半ばから九州をツアー中だ。各地でボランティアを募って、街宣やポスター貼りを行っている。集まった人たちと1対1の質疑応答をする時間も長い。自説の根拠となるデータを示しながら山本氏は説明する。こうした活動が地方各地で話題と共感を呼び、拡がっていくのかもしれない。

No image

「日本では年1億円稼ぐ人の税負担率が一番重い。年収100億円の人の税率が年収2000万円の人と同じくらいなんておかしいでしょって話です」

2011・3・11以降の山本太郎年表〜芸能人から党代表になるまで〜

2011年4月10日 反原発デモ(東京・高円寺)に参加。これ以降、「反原発」「脱原発」のイベントや署名活動に参加。
5月27日 所属芸能事務所を辞める。
2012年12月 政治団体「新党 今はひとり」を立ち上げる。「被曝させない」「飢えさせない」「TPP反対」を掲げ、衆院選に東京8区から出馬、次点で落選。
2013年7月21日 参院選に東京都選挙区から無所属で出馬。当選。
2014年12月 生活の党と合流し、「生活の党と山本太郎となかまたち」を結成。
2015年7月〜9月 安全保障関連法案について徹底抗戦。採決時に「ひとり牛歩」を行なう。
2015年12月 各地で野外の炊き出しに参加。以降、毎年参加。
2016年10月 政党名を「自由党」に改称。共同代表に。
2019年4月 「れいわ新選組」を設立。代表になる。
2019年7月21日 参院選比例区で約99万票を集めるが落選(特定枠の2名が当選)。得票率が2%を超え政党として認められ、党代表に。

山本太郎の政策〜政権とったらすぐやります!〜

●消費税は廃止
●安い家賃の住まい(公的住宅の拡充)
●奨学金をチャラ
●全国一律の最低賃金1500円を政府が補償
●公務員を増やします(保育、介護、障害者介助、事故原発作業員などを公務員化)
●一次産業個別所得補償
●お金配ります〜デフレ脱却給付金・デフレ時のみ時期をみて〜
●財源は新規国債の発行(デフレ期の財政金融政策として)
●真の独立国家を目指します〜地位協定の改定を〜
(沖縄・辺野古基地建設は中止。普天間即時運用停止を含む)
●「トンデモ法」一括見直し、廃止(TPP協定、PFI法、水道法、カジノ法、漁業法、
入管法、種子法、特定秘密保護法ほか)
※れいわ新撰組HPより一部抜粋

取材・文/佐藤恵菜 撮影/横山 快 写真/朝日新聞社、れいわ新選組

※本記事は「DIME」12月号に掲載されたものを転載しています。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

政治カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
内閣官房参事官、「桜を見る会」安倍事務所からの推薦認める
歴代総理の胆力「片山哲」(1)国の舵取りなど夢想だにしなかった
三原じゅん子、総理主催「桜を見る会」逆ギレツイートでまさかの”次期入閣確定”か
“ウクライナ疑惑”で初の公聴会
桜を見る会来年中止 野党「徹底的にやらせて頂く」
  • このエントリーをはてなブックマークに追加