「今日も明日もスクランブル」で空自は自滅する

「今日も明日もスクランブル」で空自は自滅する

  • JBpress
  • 更新日:2018/01/12
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航空自衛隊のF15J戦闘機「イーグル」(資料写真)〔AFPBB News

オバマ政権末期、米国で議論となったのは、かつてのソ連を打倒した「コスト負荷戦略」(相手の費用対効果を悪化させ、勝利する)を中国にも適用し、その政策変更を強制するということであった。

我が国もこれに見習うべきとの議論があった。しかし、むしろ今の我々は中国や北朝鮮のコスト負荷戦略にいいようにされているのではなかろうか。

もちろん現在の防衛力整備の全てを批判するつもりはない。F-35の合計80機もの調達などを批判する向きがあるが、日本の防衛産業がこれと同等以上の能力の機体を即座に用意できる代替策もないことから、これは当然だろう。

しかし、総合的に現在の日本の防衛力整備は、中国や北朝鮮の1のコストに対して、10のコストを支払っているようなものと言わざるをえない。以下では、その点について問題提起を行いたい。

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スクランブルは航空自滅戦への第一歩

第2次大戦中、「航空撃滅戦」を呼号して極的な航空作戦を展開し、その結果、戦力をむやみに損耗させた軍上層部に対して、現場の軍人たちは「航空自滅戦」と皮肉ったという。今や、それと同じことが起きている。

例えば、以下の表は、沖縄方面の防空を預かる南西混成団の負担を単純化してみたものである。「負担」とは、年度ごとの「スクランブル」(対領空侵犯措置)の数をF-15戦闘機の配備数で割った数値だ。

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増加している南西混成団の負担

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52044

この数字が平成20年には2.01だったのが、平成25年以降には20以上になっている。平成28年に配備数は約40機と倍近く増えたが、負担は20.75と平成25年よりも重くなっている。平成29年度は平成28年より低いが、平成26年よりも高い。そして、抜本的な減少への動きかつ長期的なものという保証はない。習近平のさじ加減次第である。

しかも注目すべきは、2017(平成29)年5月には中国側が公船から小型ドローンを発艦させて投入してきたことである。これに対して、空自はF15戦闘機を4機投入した。今後は「海保艦艇に電波妨害装置を積載してドローンを落とす」としているが、こうした電波妨害装置では対応できないような中国が配備を進めている大型ドローンであれば、戦闘機を投じざるを得ないのだ。

スクランブルは一見、実戦経験を高めることになりそうだが、実はそうではない。スクランブルは人員を消耗させるのである。特にアラート待機は緊張状態で時間を過ごすため、パイロットの体力を消耗する。加えて、決められた訓練ができないために、むしろ練度は低下していく。

しかもスクランブルには、航空自衛隊が約100機しか保有していない近代化改修済みのF15(残りのF15はガラケー並みの性能で、まともに戦闘できない)も投じられている。つまりスクランブル対処は、豊富な物量と資金を誇る中国空軍に対して、貧弱な物量と予算の自衛隊が航空自滅戦をやっているようなものなのだ。

実際、「自滅」の兆候は出ている。2017年、那覇基地では報道されているだけでも2回の事故が発生した。そのうちの1回は、降着装置が金属疲労で故障するというもので、機体の老朽化の進行をうかがわせる。

また、元空将の廣中雅之氏も日米エアフォース協会の機関誌で、「冷戦時代には大きな抑止力となった対領空侵犯措置も、核搭載可能な長射程空対地ミサイルを装備するロシア、中国の戦闘爆撃機の配備は、航空自衛隊の対領空侵犯措置の軍事的な効果に根本的な疑問を投げかけています。(中略)航空自衛隊はより高度な戦闘能力の向上を期すために、これまで任務の中核であった対領空侵犯措置に係る体制の抜本的見直し」が必要、と発言している。廣中氏も、対領空侵犯措置の抑止効果が低下しており、あり方を見直す必要があると述べているのである。

ミサイル防衛は費用対効果に見合っているのか

こうした日本に不利な費用対効果は、挙げればきりがない。

北朝鮮専門メディア「デイリーNK」の報道によれば、北朝鮮の弾道ミサイルはスカッド5.6億円、ノドン11億円、ムスダン22億円であるという。こうしたミサイルが1発発射実験されると、防衛省・自衛隊に多大な負担がかかる。Jアラート発令によるインフラ停止等に伴う日本の経済的損害も甚大である。

そもそも「PAC3」ミサイルの展開だけでも人員が疲弊し、予算がかかる。というのは、移動には手間を要するし、用地取得に膨大な資金と手間がかかるからだ。PAC3ミサイルの発射が許され、迎撃ポイントとして最適地であり、ミサイル発射時に自由に使用できる土地はそうそう存在しない(高知と都内の場合は、防衛省自衛隊施設が存在したが)。展開予定地域の地方自治体との事前調整や、展開候補地の地権者との調整には多くの労力が割かれるという。しかも、野党の要望もあり、島根・広島・愛媛・高知のような過疎の地方への展開が近年増えている。北朝鮮が貴重な弾道ミサイルでそんなところを狙うわけがないし、仮に部品等が落下したとしても人的被害が発生するのは天文学的確率の低さであろう。

地上配備型ミサイル迎撃システム「イージスアショア」も日本を消耗させる一因である。2017年12月、イージスアショアの調達が閣議決定されたが、当初の1基800億円の説明から1000億円に膨れ上がり、佐藤正久参議院議員が指摘しているように、最終費用がさらにこれを上回ることは間違いない。運用担当の人員も当初の説明では1基100人だったが、陸自は600人が必要と見込んでいるという。だが、イージスアショアは迫撃砲や民生ドローンでレーダー類を破壊すれば簡単に機能停止に追い込める。現状では自衛隊に民生ドローンを撃墜する権限はない。つまり極論してしまえば、北朝鮮や中国の工作員が10万円で破壊することも可能なのである。

一部で空母化が取り沙汰されているヘリ空母「いずも」も同じ問題を抱えている。中国の対艦弾道ミサイルDF-21は1ユニット6~12億円、それに対していずもは1隻1200億円である。つまり中国にとっては、いずもにDF-21を100~200発撃ち込んでもお釣りがくる計算である。

尖閣諸島周辺やその他の島嶼(とうしょ)部も同様だろう。中国や北朝鮮がマグロ漁船やイカ釣り漁船などを送り込めば、日本側は貴重な海上保安庁の船舶を投入して対応しなければならない。

このように我々は、北朝鮮や、資源が無尽蔵の中国に対し、貴重で数少ない防衛力を消耗しつづけているのである。

自衛隊には全てを買う余裕はない

では、こうした状況をどのように打開すべきか。

少なくとも領空侵犯への対処については、廣中氏が指摘するように抜本的な見直しが必要だろう。

第1に、領空侵犯対処には旧式機(非近代化F-15、F-4)等の専任部隊に当たらせること、第2に既に台湾が実施しているように無人機の活用も検討すべきだろう。台湾は自国開発した無人航空機32機を台湾海峡で飛行させ、中国軍の沿岸での活動や航空機の展開への偵察活動を行っているという。我が国も中国軍機の活動や将来ありうる軍用ドローンの飛行に対して、無人機を対領空侵犯措置に直接・支援的に活用することを考え、加えて、こちら側からも偵察活動による消耗を仕掛けるべきだ。わが国での開発は事実上失敗に終わったが、「無人機研究システム」で培われた基礎技術を多いに活用し、推進すべきである。

また、ミサイル防衛については、東京と大阪以外の、蓋然性が低く被害も少ない地域は防衛の優先順位から外し、首都圏と大阪を集中的に防衛すべきだろう。日本全国に津波の防波堤を作るべきではないのと同様に、高知のように戦略的に価値のない地域へのPAC3の展開は中止すべきだ。イージスアショアの調達も半分の1基とする、もしくはより小型かつ移動式のTHAADに変更することが必要である。むしろ、サイバー攻撃能力の充実が必要だ。

漁船対応にしても、米海軍が検討しているように、無人船舶や非殺傷兵器の導入を進めるべきである。

いずれにしても、状況はかつてとは大きく異なっている。我々は、我々よりもはるかに経済的に優越した相手との消耗戦に勝たねばならず、その際は費用対効果を意識しなければならない。

図らずも米国の海兵隊戦闘研究所(Marine Corps Warfighting Laboratory)のジェフ・トムザック科学技術部副部長がこう指摘している。

「技術的革新は豊富なオプションを提供しており、あらゆるテクノロジーは、あらゆる活用ができる。しかし、それらのすべてを追求することはできない。問題は、すべてを買う余裕がなく、納税者は軍隊がすべてを買うことを望まないことだ。私の仕事は、できるだけ公平で、能力の公正な評価を提供し、投資収益が最大となる能力を勧告することだ」

けだし名言だろう。自衛隊には全てを買う余裕がなく、納税者もそれを望まない。効率的に軍拡競争を勝ち抜くことこそが重要なのだ。

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