大学アメフト界の異常な構造...日大、部内で「常識では考えられない指導」との指摘

大学アメフト界の異常な構造...日大、部内で「常識では考えられない指導」との指摘

  • Business Journal
  • 更新日:2018/05/27
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5月6日に行われた大学アメリカンフットボールの定期戦において、日本大学の選手が関西学院大学の選手に対し、後ろから危険な反則タックルをし、右ひざなどに全治3週間の怪我を負わせた問題。22日に、タックルを仕掛けた日大の宮川泰介選手が会見を開き、翌23日には日大の内田正人前監督と井上奨コーチも会見を開いた。

まず、宮川選手の会見内容、内田前監督と井上コーチの会見内容を振り返っておきたい。

22日、宮川選手は会見冒頭で深々と頭を下げたうえで、「監督やコーチからの指示があった」「コーチを通じて内田前監督から『相手のクオーターバックを1プレー目で潰せば出してやる』と言われた」と明言。また、井上コーチから「関学との定期戦がなくてもいいだろう」「相手のクオーターバックが秋の試合に出られなかったら、こっちの得だろう」と言われたことなども包み隠さず説明した。

さらに、宮川選手は「正常な判断をするべきだったと思っている」「実際に怪我をさせた自分自身が悪い」「指示があったにしろ、やってしまったのは私なわけで、人のせいではなく、やってしまった事実がある以上、反省すべき点だと思う」などと自分の非を認めつつ謝罪した。

会見後、宮川選手へのネット掲示板やSNSへの書き込みの論調としては、反則タックル自体は許される行為ではないものの、後悔の念を滲ませながら誠実な態度で謝罪したことで、監督やコーチから精神的にひどく追い詰められていたのだろうと同情の声が多くあがるようになった。

一方、その翌日に行われた内田前監督と井上コーチの会見は、結果的に火に油を注ぐような対応だったと言わざるを得ない。内田前監督は「(反則行為は)私からの指示ではございません」と語り、指示があったとした宮川選手の説明を否定。井上コーチも、「試合前に、私が『クオーターバックの選手を潰してこい』と言ったのは真実」としつつも、「思いきりスタートして、いつもと違うようなプレーをしてほしかったという意味で、怪我をさせる目的では言っていない」と、同じく反則行為の指示については否定した。

しかし、同会見で宮川選手に話したとされる言葉について、「言っていない」と説明することもあれば、あやふやに「覚えていない」と語る場面もあり、会見後のネット掲示板やSNSの書き込みを見る限り、保身に走って責任逃れしているととらえた人が多かったようだ。

●「とにかく異常」と河口氏が語る大学アメフト界の構造

いずれにしても、いまだに騒動が収束する気配を見せない同問題について、かつてNFLヨーロッパのアムステルダム・アドミラルズに所属していた日本アメフト界の第一人者である河口正史氏は、「一連の流れに憤りを感じる」と語気を強めて語る。同問題は、どうすれば本当の意味での解決に至るのだろうか。

そもそも学生スポーツにおいて、反則を犯した選手が会見を開くこと自体が異例だが、河口氏はどのように感じたのだろうか。

「確かに異例の会見でしたが、宮川選手は率直に思っていることを喋っているんだろうなと感じました。指示があったことなど、起きた出来事をすべて話し、そのうえでやってしまった自分が悪いと語ったのも本音なのでしょう。彼の発言に関しては裏を読む必要のない、本当の自分の気持ちを喋っていたのだと思います」(河口氏)

宮川選手が会見を開かなければ、大学側や監督からの説明しか世に出なかった可能性もある。

「現在の状況は、とにかく異常です。宮川選手の会見、元監督とコーチの会見、お互いに言っていることが乖離していました。立場の違いはあれど、あまりに双方が語る内容がバラバラなのです。そして、それ以前の対応の仕方にも大きな疑問を感じます。端的に言うと、出てくる“人”の順番がおかしい。なぜ先に選手が会見を開かなくてはいけなかったのか。元監督やコーチが先に表に出るべきだったと感じますし、もっと根本的なことを言うならば、最初に関東学生アメリカンフットボール連盟の責任者がきちんと表に出てきて説明すべきだったと思います。穿った見方をすると、連盟よりも日大のほうが力を持っている印象さえ受けます。すべてが無茶苦茶、すべてがいびつな構図なのです」(同)

●構造自体を正さなければ、再び同様の問題が起こる可能性も

宮川選手いわく、「相手のクオーターバックを1プレー目で潰せば出してやる」という指示があったとのことだが、アメフトで「潰す」といった言葉はよく使うものなのか、使う場合はどういう意味を持つのか。

「アメフトに限らず、コンタクトスポーツにおいて、『潰す』という言葉はよく使われます。アメフトにおいて『潰す』という言葉が出た場合は、“真正面切ってノックアウトしにいく”といった意味になるでしょう。もちろん『ノックアウト』というのも、相手選手を負傷させるということではなく、“戦意を喪失させる”というようなニュアンスになります」(同)

では、井上コーチの会見での「怪我をさせる目的では言っていない」という発言に嘘はないということなのだろうか。

「『潰す』という言葉に注目がいきがちですが、私は最大のポイントは井上コーチの発言とされている、『相手のクオーターバックが秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう』という言葉のほうにあると考えています。『潰せ』だけであれば、怪我をさせろとは捉えなかったでしょうが、5月の試合で『秋の試合に出られなかったら』と言われれば、重度の怪我を負わせることを命じられたと選手側が感じたとしてもおかしくはないでしょう。

とはいえ、選手にとって監督やコーチの指示は絶対的なものではありますが、極論を言うなら『誰かを殺してこい』と命令されて本当に殺人を犯すのかという問題でもあります。あの悪質な反則を起こしてしまったということは、やはり正常な判断ができなくなるほど、精神的に追い込まれていたということの表れなのでしょう」(同)

同様の事件が二度と起こらないように根本的な解決を図るには、今後、大学アメフト界はどうすべきなのだろうか。

「業界内の土壌自体を変えないといけないでしょう。まず、連盟側が表に出てきてないことから、連盟よりも日大が力を持っているようにも見えるため、大学アメフト界の構造自体がおかしくなってしまっているように感じます。

また、宮川選手の会見を聞くかぎり、井上コーチがある程度独断で指示したというようにも思えますが、もしその通りなら大学日本一になるチームのコーチが、世間一般の常識の中では考えられないような指導をしてしまう土壌があったということです。そういった土壌があるならば、内田前監督と井上コーチがチームから離れて新たな指導者が来ても、同じような指示を出す可能性もゼロとは言えません。ほかの大学でも同じようなことが起こる可能性もあります。

そのような異常な構造や土壌を正さない限り、また同じようなことが起きてしまう可能性があるということです。そういう意味で、きちんと正常な大学アメフト界に戻すためにも、日大のアメフト部はどんな環境だったのか、日大の中で何が起こっていたのか、それらを明確にしないことには次に進めないでしょう」(河口氏)

日大側が包み隠さず内部事情を明らかにすることが、大学アメフト界・正常化への第一歩となるということだ。
(取材・文=A4studio)

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