すべて実名!ニッポンのために金を使う「志の高いカネ持ち」80人

すべて実名!ニッポンのために金を使う「志の高いカネ持ち」80人

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/09/13
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カネを儲けて何が悪い――かつてそう嘯いた投資家がいた。何も悪くはない。堂々と儲けて大いに使えばいい、社会のために。実践する資産家はこんなにもいる。彼らが日本の未来を明るく照らす。

カネを溜め込んでも仕方がない

建設資材製造販売の山一興産社長の柳井光子氏(78歳)は来るべき超高齢化社会に向けて、少しでも一助になればと私財を投じた。

「いま盛んなビジネスはファンドなどで人のおカネを集めて投資をするような、人のふんどしで相撲をとって、カネ儲けしている人が多い。

しかも儲けても分配は少ない。おカネを溜め込んでどうするんでしょうね。死んだらおカネはもっていけない。人は裸で死ぬんですよ。一歩間違えれば、明日どうなっているかなんて、わからないじゃないですか。

私は父親を36歳の時に、母親を46歳の時に亡くしています。そのために親孝行できなかったことをずっと心残りに思ってきました。と同時に、今の社会には高齢になっても施設に入れない方が大勢いることも知りました。そこで、老人ホームの経営が私の生涯の仕事になると思ったんです」

柳内氏は'98年に茨城県潮来市に特別養護老人ホーム『福楽園』を開設。資金として私財10億5000万円を注ぎ込んだという。その後、都内と千葉県内にも特養を作り、13ヵ所の特養を含め20ヵ所の施設で福祉事業を行っている。

「いずれも社会貢献のための事業ですから会社の利益にはなりません。儲けは本業で出せばいい。社会貢献の分野で儲けてはいけないと思っているんです」(柳内氏)

名古屋で産業用ロボットなど自動生産設備の専門商社を営むダイドーの山田貞夫氏は父親の零細企業を年商1000億円に成長させた、名古屋財界の立志伝中の人物だ。

「私が入社したとき、社員は親父を入れてわずか3人でした。機械部品の加工と販売を手がけていましたが、自転車とリヤカーで商品を運ぶ、まさに零細企業です。

これでは未来がないと思い、当時最新鋭だったベアリングに目をつけ、販売会社を立ち上げて裸一貫からスタートしたのです。

ここまで大きくなれたのも、自分より取引相手を優先するというモットーを貫くことができたからだと思います。私自身は贅沢をしませんし、無駄なものはまったく買いません。社用車もなく、営業先は営業マンの車に同乗して回ります」

そんな山田氏の唯一の趣味がクラシック音楽なのだという。

「小学校5年生の時、おふくろが亡くなりました。私は長男でしたから、弟や妹の面倒も見なければなりません。遊ぶヒマもなかったときに出会ったのが、ベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調『エロイカ』です。

今まで聴いたことがない壮大な音楽に圧倒され、聴いている間だけは日々の苦労を忘れることができた。その後は本気で指揮者になりたいと思ったこともありますが、うちが貧乏ですから到底実現できません。

そのこと自体に後悔はありませんが、才能のある若者に私と同じ思いをしてほしくはない。いつか何かの形で音楽に恩返しできないか。そんな思いをずっと持ち続けてきました」

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事業が安定してきた'94年から山田氏はクラシックコンサートをチャリティで毎年開催し、来年に記念すべき25回目を迎える。'12年には「山田貞夫音楽財団」を設立。個人で所有していたダイドーの株式40億円分を寄付した。

「実はチャリティコンサートで、1曲だけタクトを振らせてもらっています。演奏者の皆さんにはご迷惑をおかけしているとは思いますが、私の唯一のわがままとお許しいただいていますし、演奏中に様々なパフォーマンスを披露するので観客の方にも意外と好評なんですよ。

昨年3月には名古屋駅近くに『ダイドーロボット館』というロボットに関する情報を提供する施設も作りました。人口減少が進む日本で人手不足に対応するために、誰かが啓蒙しないとロボットは普及しません。

だったら我々が、ということで始めました。年間3億円の赤字です。おそらく上場している会社ではできないことだと思います」

人口減少はチャンスだ

カネ儲けをして贅沢な暮らしをしたい――そう思ってビジネスに成功したところで、所詮「成り上がり」にすぎない。社会をより良くするために事業を行い、成功し、築いた富を惜しみなく世の中のために使う人が「志の高いカネ持ち」だ。

本誌は識者16名に取材を行い、有名無名を問わず、ベスト80名を選出した。その結果、1位に輝いたのが、家具チェーン店「ニトリ」を展開するニトリホールディングス会長の似鳥昭雄氏(73歳)である。似鳥氏本人がこう述懐する。

「60歳まで本業で精一杯でした。『世のため人のため』になる会社、そしてそれを成し遂げる人材を作ることが社会貢献の第一歩と思い、人材育成に力を注いできました。しかし、還暦を過ぎてからは広く社会に還元しようと決めていたのです。

まずは私が保有する400万株を似鳥国際奨学財団に寄付して、配当金をアジアの学生への奨学金に充ててきました。我が社がここまで大きくなったのも、アジアの方に製品を作ってもらったから。その恩返しをしたいと思ったのです。

年間の配当金が4億円程度になったので、昨年から日本人の学生にも奨学金を支給しています。OB・OGが交流して、いずれアジアの架け橋となるような人物が生まれるとうれしいですね」

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似鳥氏の社会貢献活動は、これだけに留まらない。東日本大震災では総額29億円を寄付した他、地元・北海道のためには「ニトリ北海道応援基金」を作り、年間1億円を拠出する。財政難に喘ぐ夕張市には企業版ふるさと納税で、4年間で5億円の寄付を決めた。

今年9月にはニトリが運営する小樽芸術村に似鳥美術館を新たにオープンさせ、所蔵する横山大観や岸田劉生などの絵画を展示する。似鳥氏が続ける。

「日本には『本物』を見られるところが少ない。だから若い人に気軽に見てもらおうと、中学生までは入館無料にしています。

事業も社会貢献も、やるからには一番になりたいですね。美術館も毎年一つくらい作りたいくらいです。こんなことを言うと、会社の人間には止められるのですが(笑)、構いません。

カネは死んでもあの世に持っていけないから、生きているうちに使いたい。北海道での活動が多いのは、自分をここまで大きくしてくれたことへの恩返しです」

もちろん、カネ持ちの道楽ではない。経営者としての似鳥氏は'03年に作成したビジョン通りに会社を成長させ、30年連続増収増益を達成した。

創業50年の今年には節目となる500店舗出店に到達する見通しだ。さらに今後5年間で1000店舗を目指す。

「日本は人口が減っていくし、少子高齢化で社会に閉塞感があると言われています。

しかし、いつの時代も社会は問題を抱えているんです。そして、問題の背後にはチャンスが隠れている。ニトリは主婦の不平や不満、不便を探して、それを便利に変えていくことでここまで成長してきました。

生活上にある問題を見つけて、それを解決する方法を考えれば、チャンスは誰にでもある。ビジネスも社会貢献も、考えていることは同じですね。

日本人の暮らしを欧米並みに豊かなものにしたいという思いから始めたニトリですが、これからのメインは中国になるでしょう。

中国の人口は14億人ですから、単純計算で日本の10倍の店舗を構えられる。中国で徹底的にビジネスを拡大させて、それをまた社会に広く還元したいですね」

オーナー社長だからできること

ビジネスで大儲けすることよりも、成功の先にある社会貢献に人生と莫大な富を賭す。これがオーナー経営者とサラリーマン社長との決定的な差だ。

いくら優秀な経営者でも、雇われである以上、会社の利益を本業以外につぎ込むことは株主の手前許されないからだ。

早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏が解説する。

「もちろん、社会貢献活動は様々な企業が行っています。とはいえ、オーナー企業のほうがやりやすいのは事実でしょう。

オーナー企業では数年で社長が交代することはありませんので、経営者は長期的な視点を持って経営判断を下しやすい。2~3年後の業績よりも30~40年後も会社が栄えていてほしいという観点から経営を考えます。

そうすると、数十年先の世の中を考え、現在の社会問題が解決されないとマーケットが拡大されないという考え方にもなる。逆に言えば、貧困問題が解決されて豊かになったら、自社製品が売れるかもしれないという発想になるんです」

2位には、日本電産会長兼社長の永守重信氏の名前が挙がった。

入山氏が続ける。

「今年3月には京都学園大学の工学部新設のために、100億円以上も寄付しています。もちろん業績も絶好調。『全部使ってあの世に行く』と発言している通り、全資産を社会のために使うという考え方なのでしょう」

実際、永守氏本人は昨年、本誌のインタビューにこう語っている。

「財産はたしかに作りましたが、おカネには興味ありません。これまでのように医療施設などに寄付を続けていきたいですし、若い研究者は資金がないので、そういうものに助成もしていきたいですね。私自身には車一台と、住む家が一軒あれば充分ですよ」

3位に名を連ねたのは、ベネッセホールディングス名誉顧問の福武總一郎氏(71歳)。父親から福武書店を引き継ぎ、ベネッセコーポレーションとして急成長させた中興の祖だ。企業メセナにも熱心で、芸術活動を手厚く支援してきた。

「日本の政治に不満を持ち、ニュージーランドに移住してしまいましたが、日本社会への恩返しは忘れていません。とくに地方での美術館づくりに熱心で、ふるさと納税の旗振り役も買って出ています。

福武さんといえば、瀬戸内海でのアート活動の支援が有名ですが、教育にも熱心で、東京大学にも16億5000万円を寄付し、『情報学環・福武ホール』が本郷キャンパスに建設されています」(S&Sインベストメンツ代表・岡村聡氏)

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作家の楡周平氏は、カプコン会長の辻本憲三氏(76歳)を高く評価する。

「辻本さんは夜間高校を卒業後、駄菓子屋を開業したのが事業のスタートです。綿菓子の機械に子供が列をなす姿を見て、自ら綿菓子製造機の行商を始めました。

その後、スペースインベーダーのレンタル業で財を成し、ゲーム開発の道に入ります。面白くないものを作ったら終わりだと考えていて、もの作りへの姿勢が一貫しています。

その姿勢は'90年代から米カリフォルニアで取り組んでいるワイナリー事業でも同じです。個人資産を100億円以上注ぎ込んで、土壌を入れ替えることもしました。その後、最高峰のワイン醸造家を招いて、最高品質のワインができた。

それをワイン醸造家が驚くほどの低価格で提供しています。辻本さんにしてみれば、いくら最高の品質でも人々の手が出なければ意味がないのです。最高のものを作りつつ、価格を抑える。辻本さんの凄さはこの両立を実現していることでしょう」

事業は「大善」のためにある

10位にランクインしたヨークベニマル会長の大高善興氏(77歳)は、東北地方を中心にスーパーを214店舗展開する。大高氏が心を大きく痛めたのは、やはり東日本大震災だった。

大高氏本人が語る。

「'11年3月11日以降、福島県では子供たちが放射能の恐怖から屋外で遊ばないようになりました。子供のうちに体を動かして遊ぶことは非常に重要です。このままでは、福島の子供たちの10年後、20年後の未来が心配になったんです。

そこで、東北最大級の屋内遊戯場『ペップキッズ』を設立。'11年12月のオープン以来、5年間で延べ150万人が来場しています。建設資金は5億円。私個人とヨークベニマルからの出資が中心となり、賛同者からの寄付によって賄いました」

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一族でヨークベニマルを経営してきた大高家は、自社の従業員のみならず、青少年の育成にも並々ならぬ意欲を注ぐ。

大高氏が続ける。

「創業者である父は、『事業は大善のために貢献するべきで、青少年の育成こそ、商業や社会が発展する鍵である。そのためにおカネを使え』という信念を持ち、それを実践してきた人でした。

私はたまたまオーナー一族の人間ですから、株式も創業家として持っています。そこで、創業者の意志を継いで、'85年にヨークベニマル文化教育事業財団を設立し、両親の残した遺産と前社長(善二郎氏、'06年死去)が相続した分を合計した40億円を基本財産としています。

運用で生まれた5000万円を使って、これまで福島県内の高校生の海外研修を支援してきました。こうした事業を100年でも200年でも続けてほしいというのが、創業者である父の願いなんです」

志をもって事業に邁進し、得た利益を社会に還元する。彼らがニッポンを引っ張っているのだ。

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選者(五十音順・敬称略):磯山友幸(経済ジャーナリスト)・入山章栄(早稲田大学大学院准教授)・植木靖男(証券アナリスト)・岡村聡(S&Sインベストメンツ代表)・長田貴仁(経営学者)・小沼正則(絆アセットマネジメント社長)・恩地祥光(レコフ会長)・片山修(経済ジャーナリスト)・加谷珪一(経営コンサルタント)・楠木建(一橋大学大学院教授)・佐高信(評論家)・鈴木孝之(プリモリサーチジャパン代表)・田中秀臣(経済評論家)・楡周平(作家)・橋本久義(政策研究大学院大学名誉教授)・藤本誠之(SBI証券客員マーケットアナリスト)

「週刊現代」2017年9月16日号より

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