『この声をきみに』の自分ファースト男が厄介すぎる

『この声をきみに』の自分ファースト男が厄介すぎる

  • 週刊女性PRIME
  • 更新日:2017/10/11
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テレビを見ていて「ん? 今、なんかモヤモヤした……」と思うことはないだろうか。“ながら見”してたら流せてしまうが、ふとその部分だけを引っ張り出してみると、女に対してものすごく無神経な言動だったり、「これはいかがなものか!」と思うことだったり。あるいは「気にするべきはそこじゃないよね〜」とツッコミを入れたくなるような案件も。これを、Jアラートならぬ「オンナアラート」と呼ぶことにする。(コラムニスト・吉田潮)竹野内豊と麻生久美子。8月31日に行われたNHKドラマ『この声をきみに』制作発表会見

オンナアラート#1 NHKドラマ『この声をきみに』

配偶者に対する不満というのは、実に些末(さまつ)なことだったりする。男性は基本的に妻に対する愚痴をこぼすことを恥と思っているのか、あまり大きな声では言わなかったりする。

一方、女性は夫に対する愚痴が出るわ出るわ。ちょっとつつくと、シンガポールのマーライオンのように、口から猛烈な勢いで流れ出てくる。もちろん、それを夫には伝えていない。夫も気づくはずがない。些末なことでも、積もり積もって鍾乳洞のようにカッチカチに固まっている。

「家事や育児に非協力」という恨みは、かなり根深くなるようだ。そういう心模様がドラマに出てくると、私の中のオンナアラートが激しく鳴り出すのである。

NHKドラマ『この声をきみに』を見ていると、非常にわかりやすい。主人公を演じるのは竹野内豊。大学で数学を教える准教授だが、講義が群を抜いてつまらないため、学生たちからは不人気。

妻のミムラと子どもたちとは別居状態で、弁護士を通してしか会えない状況。基本的にはコミュ障で、自分の妄想の世界に入り込みがち。見かねた大学側から話し方講座へ行かされ、そこで出会ったのが講師をしていた麻生久美子。

ひょんなことから、麻生が教えている朗読の会に参加することになった竹野内が、夫として、父として、何が必要か気づいていく……というような物語だ。

2枚目の竹野内がダメな男を演じるギャップ萌え……なんて話ではない。そこはどうでもいい。竹野内の何がダメか、目をかっ開いて観なくても、じかに肌に伝わってくるのだ。

竹野内のダメポイントが目白押し

まず、一つめ。

自分の妄想の世界に入り込み、人の話を聞かない、人の気持ちを慮(おもんぱか)るはずもない。一方的に自分の話を一気に話しまくり、相手に反論どころか相づちさえ打たせない。無愛想で無頓着、人の気持ちを逆なでするのも得意。これは夫や父である前に、ひとりの人間としてどうかという点でもある。

そして、二つめ。

金さえ稼げばいいと思っている。俺が食わせてやってるんだモードを発動しまくり、家事育児に一切協力しない。妻がてんてこまいの状況にあっても、決して助けることなく、漫然と自分の生活信念を貫く。

セリフや説明にはなかったが、明らかに竹野内は「朝食は和食系で魚を食べる」と決めているようで、妻に一度に洋食と和食を作る手間をかけさせている。子供が食卓で牛乳をこぼしても、ふこうともせず、叱ろうともせず、自分だけ優雅に朝食をとっているのだ。

まだまだある。三つめ。

子どもの誕生日なのに、自分の脳内の数学的新発見に浸り、祝おうともせず、席につこうともしない。どんなに無神経でも、大人はどうするべきかぐらいはわかるものなのに。自分優先、自分ファーストにもほどがある。

これらの悪行に、妻が怒りを通り越して諦観を覚え、「夫の声も聞きたくない」と感じて家を出るに至るまで、竹野内は気づかない。気づかないどころか、「俺が何か悪いことをしたか?」とぼやく。

ミムラの弁護士(千葉雅子)が竹野内に言ったセリフ、「奥様が出て行った理由がわからないことが一番の問題なのでは?」がすべてを表している。

そこがダメなんだよ、という点がてんこもり。おそらく女性視聴者は指折り数えることができるはずだ、竹野内のダメなところを。しかも両手では足りない。もちろん、ドラマでは竹野内が自分の欠点に気づいていき、反省していく。

なぜか麻生に対しては素直に心情を吐露する竹野内。「僕は人生を変えたい」「この1週間あなた(麻生)の声を忘れられなかった」「君(麻生)の声は落ち着くんだ」と、弱みを見せていくのである。

ここでもうひとつのオンナアラートが鳴る。麻生の立場に立ってみると、無駄に二枚目の男から腹の内を見せられたら、ちょっとグッとくるではないか。自分ファーストの男はこれだから厄介なのだ。その素直さを妻にぶつけろや、周りの女に甘えてんじゃねーぞと。

そして、妻のミムラに対しても、小姑のようにモノ申したくなる。「そんなダメ男を選んだのは自分」と。製造物責任法じゃないけど、ダメ男をうっかり掴(つか)んで夫にしてしまった自分にも、反省すべき点があると思われる。人を呪わば穴二つ、なのである。

宮沢賢治や中原中也の作品を朗読し、空想シーンを美しいファンタジーで描く、パッと見は「NHKが得意なゆるふわドラマ」に見えるのだが、内実は大変なことになっている。

要するに、オンナアラート鳴りっぱなしの問題作なのだ。

吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/

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