蓮舫だけじゃない! あなたの隣にも二重国籍者が...?

蓮舫だけじゃない! あなたの隣にも二重国籍者が...?

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  • 更新日:2016/10/21
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米国の大学に通う女子学生が所有する米国と日本の旅券。この1年でどちらかの国籍を選ぶ必要があり、悩んでいる(撮影/編集部・山本大輔)

民進党の蓮舫代表をめぐり臨時国会でも議論となっている二重国籍。グローバル化を背景に50万人以上もの重国籍者がいるとされる。国籍についての意識や制度は時代に合っているか。

「米国籍がなくなるかもしれない。新たに留学ビザをとる必要が出てくるが、卒業が遅れることなく手続きができますか」

米国東部の州立大学で相談窓口を訪ねた2年生の女子学生(20)が質問すると、米国人スタッフは、困った表情で答えた。

「そういう相談は初めてなので、対応しかねる」

女子学生は日本人の両親が米国滞在中に誕生した。同国生まれなら自動的に国籍を認める米国と、親とのつながりで国籍を認める日本の両方の国籍を持つ。

進学した米国の大学では、米国人として留学ビザは必要ない。一方で、日本の国籍法は重国籍者に対し、22歳に達するまでに国籍の選択義務を課している。選択期限である22歳の誕生日前日が大学卒業前に来るため、悩んでいるという。

●各国で異なる国籍観

米国籍を選べば教育の問題は解消するが、日本にいる家族とのつながりにかかわる日本国籍の放棄はしたくない。

「今更なぜ国籍を変えなきゃいけないの? とても疑問だけど、法律がそうなら仕方がない。ただ、すでに二つの国で生活をしているんです。一つだけを選ぶのは、そんなに簡単なことじゃない」

日本の米国大使館担当者には、こう言われたという。

「米国で生まれた人は基本的に一生、米国籍がある。だから、それは日本側の問題です」

グローバル化に伴って日本国籍を有する両親の間に生まれても二重国籍になるケースが目立ち始めている。

重国籍は、異なる法制度を持つ各国にまたがる複雑な問題で、日本の法律だけで全てを管理するのは難しい現状がある。

その国での出生で国籍を付与する「出生地主義」(米国、カナダなど)や、家族との血のつながりを重視する「血統主義」(日本、韓国など)に加え、国際結婚や養子縁組、子どもの認知により、後からでも国籍を与える国も少なくない。逆にブラジルのように自国の国籍放棄が事実上難しい国も存在する。

●政治家だけの問題か

入り乱れる各国制度の上に二重国籍の問題はあって、これを認めるかどうかの議論には、歴史や地域情勢、価値観などに基づく国籍のとらえ方が大きく影響している。

「日本人の意識は『国籍=忠誠』の傾向が強いです」

移民などに詳しい国士舘大学の鈴木江理子教授(社会学)は指摘する。

台湾との二重国籍を指摘された民進党の蓮舫氏の場合は、重要閣僚に就く可能性がある場合の安全保障の問題などが挙げられた。国籍を持つ二つの国の対立時にどちらにつくのかという忠誠の問題で、特に野党第1党の党首となれば、重要な問題であることは間違いない。

10月4日には自民党の小野田紀美参院議員が米国との二重国籍を公表し、米国籍の放棄手続きを進めていると説明。6日には安倍晋三首相が参院予算委員会で、重国籍者が首相や外相、防衛相などの外交・安全保障を担う閣僚になることができる現状の「問題点を整理し、しっかりと研究したい」と述べるなど、政治問題化している。

ただ、鈴木教授は、二重国籍は政治家に限定した議論というよりも、広く一般市民の生活にかかわるテーマだとみる。安全保障などへの対応は、重国籍者の首相や閣僚就任を禁ずるなど個別に対応できると話す。また、蓮舫氏の問題も「国籍=自身のルーツ(アイデンティティー)」というとらえ方で考える。

「国会議員として『蓮舫』と名乗っているのなら、台湾人の父を持つという自身のルーツに、もっと自信を持ってもらいたかった。公的な立場にいる彼女が誇りを持って語ることができれば、台湾にルーツを持つたくさんの人たちの励みになったはずです」

●国境を超える家族

さらに教授は、「国籍=家族のあり方」でもあると強調する。

「グローバル化が進展する中で、国境を越え、国籍国ではない国で『外国人』として生活し、学び働く人が増えている。時に出会いも国境を超え、その結果、家族の形成自体が国境を超える時代になっています」

両親が他国にいる時に生まれた子どもが二重国籍となる場合に加え、外国人との国際結婚により、その子どもも含めて二重国籍となる人たちも増えている。

鈴木教授によると、2015年の日本の統計では、30組に1組が国際結婚で、外国と日本の両方のルーツを持つ子どもたちが珍しくなくなっている。それだけに国籍に対する考え方や国内法は、時代を反映しきれていないと指摘する。

「全てに二重国籍を認めるのは難しいとしても、家族の形成に伴うものについては認めるべき。そうした問題にまずは向き合うべきです」(鈴木教授)

移民社会を見据えた戦略的な見方もある。

民進党の初鹿明博衆院議員は人口減少やグローバル化などを背景に、優秀な人材の取り合いが世界で加速するとみる。米経済誌フォーブスによる今年の米国の長者番付上位400人の1割が移民。五輪メダリストが別の国籍で再びメダルをとるなど、国益重視の人材獲得合戦はすでに始まっている。

そうした人材に選ばれるための環境づくりが重要と初鹿氏。

「人材確保において単一国籍にこだわる国と重国籍でもいい国とどっちが有利かです」

●放置された国籍法

二重国籍について改めて丁寧に議論する時が来ている。

国籍法や出入国管理法が専門の山脇康嗣弁護士もそう考える一人だ。

「当然、重国籍者の増加は予想されていたはず。これまでの国会の議論では、重国籍を容認するかも含めて検討しましょうとあるのに、放置されているのはおかしい」と首をかしげる。

その上で、議論をしないにもかかわらず、現行法がしっかりと履行されていない現状があると問題提起する。

日本の重国籍者は40万から50万人いるとされる。ただ、海外に出ていく日本人や国内に来る外国人の増加を考慮すると、すでに50万人を超えている可能性が高いと山脇弁護士は推測する。この中には、国籍の選択義務を果たさずに、二重国籍を維持している人も相当数含まれているという。

国籍法では、出生からの重国籍者には22歳に達するまでに、国際結婚など後天的に重国籍を得た人は2年以内に国籍を選ぶ義務がある。選ばない場合、法相が催告し、1カ月以内に日本国籍の選択がなければ、日本国籍を剥奪(はくだつ)できるが、実際には催告も剥奪も一度も行われたことがない。

「異なる国籍の両親の間に生まれれば、両方の国に愛着を持つのは自然な感情で、一定期間で必ず一方を選ぶのは酷な面がある。日本国籍の剥奪は、本人のみならず親族など関係者の生活にも極めて重大な影響が及ぶ」(山脇弁護士)

こうした配慮が法務省にあるという。

「ならば議論して国籍法を変えればいい。議論せずに行政府の勝手な判断で、法を放置したままにするのはおかしい」

そして議論には、犯罪者による重国籍の悪用の危険性や、他国でテロなどに巻き込まれた時の国民(邦人)保護、兵役、犯罪者引き渡しなど二国間の「義務の衝突」といったデメリットも含まれるべきだと主張する。

山脇弁護士は現状、重国籍を容認する状態にはないと考えているが、「国際結婚も増えているし、将来的には分からない」。

だからこそ、蓮舫氏の問題で焦点があたった機を生かし、二重国籍についての議論が深まることに期待している。(編集部・山本大輔)

※AERA 2016年10月24日号

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