『デイ・アフター・トゥモロー』は大成功作だ!ローランド・エメリッヒ監督の素晴らしさを、その作品群から語る!

『デイ・アフター・トゥモロー』は大成功作だ!ローランド・エメリッヒ監督の素晴らしさを、その作品群から語る!

  • シネマズ
  • 更新日:2017/10/13

本日10月13日、金曜ロードShow!にて“あの”ローランド・エメリッヒの監督作『デイ・アフター・トゥモロー』が地上波放送されます。

エメリッヒ監督はこの映画でディザスター・ムービー(災害映画)の第一人者として世界中に知られるようになり、その決して上等とは言えない作品の特徴も含め、映画ファンに愛されるようになっていきました。

設定が大味でツッコミどころが多い

人物描写が浅い

とにかく大迫力シーンに力を入れる

緊急時に間の抜けたギャグを入れる

話運びが「はい、この人はこうなるんで、こうなります」な感じでどこか事務的

僕たちは、そんな“エメリッヒ節”が溢れている映画が大好きです。ここでは、そのエメリッヒ監督の作品群を振り返り、彼がどのような発展と成長を遂げたのかを、分析してみましょう。

1:『ユニバーサル・ソルジャー』(1992年)

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エメリッヒ監督のハリウッド進出作で、『エクスペンダブル2』にも出演しているジャン=クロード・ヴァン・ダムの主演作です。まだ地球規模の破壊はしておらず、家屋をマシンガンで壊したり、肉弾戦でとりあえず戦ったりと、非常におとなしいもの。B級アクション映画のテイストに溢れまくっている良作でした。吹替版で観ると、大塚芳忠と大塚明夫という“W大塚”の掛け合いが堪能できて耳が幸せです。

物語は、善良な戦士が美女とともに逃げつつ、追いかけてくる最強の戦士を迎え撃つという、前年に公開されたばかりの『ターミネーター2』にそっくりなものだったりします。この“テーマや設定が大ヒットした映画とカブる”というのも、エメリッヒ監督作品にはよくあることですので、覚えておいてください。

2:『インデペンデンス・デイ』(1996年)

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『ユニバーサル・ソルジャー』で評価されたエメリッヒは、次に5500万ドルという巨費を投じたファンタジーSF『スターゲイト』でも成功を収め、いよいよ歴史に残る超大作『インデペンデンス・デイ』を手がけることになります。

その製作費は7500万ドル。CG技術がまだ発展途上であったため、随所にミニチュアの模型を採用した破壊シーンを作り上げ、結果的にアカデミー賞では視覚効果賞を受賞。言うまでもなく、興行的にも大成功を収めることができました。

「ウワー!宇宙船でけー!」「ビームでビルが丸ごとふっ飛ばされたー!」という“これまで観たことのない映像”に観客は熱狂し、何かを喪失した人々がヒーローになっていく過程も意外と丁寧であり、同時に「宇宙人を素手で殴って倒せるのかよ!」などのツッコミどころも楽しいと、今日に至るまで存分に愛された作品と言っていいでしょう。

3:『GODZILLA』(1998年)

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日本で誕生したゴジラがハリウッドで映画化! ということで当時は大注目を集めていましたが、いざ公開されると酷評の嵐。特に批判が集まったのはゴジラの造形で、「これはゴジラじゃなくてトカゲ(イグアナ)だ!」の大合唱。最低映画を決めるラジー賞では、最低リメイク賞と最低助演女優賞を受賞するという、不名誉なことになってしまいました。

個人的には、ゴジラ作品としてはともかく(ここ重要)、モンスターパニック映画としてはかなり楽しめましたし、テンポもよくてアクションのバリエーションも豊か。興行的にも存分に成功を収めていますし、黒歴史のように扱われてしまうのはちょっと気の毒に思います。

なお、当初は『スピード』のヤン・デ・ボンが監督を務める予定でしたが、用意された原典に近いデザインのゴジラや、怪獣の対決シーンの製作に予算がかかりすぎるという理由で、降板させられてしまいました。エメリッヒ監督は優秀なスタッフやキャストのマネージメントが上手いようで、(膨大な)予算内で作品を仕上げることも、ハリウッドで重宝された理由の1つなのでしょう。

4:『デイ・アフター・トゥモロー』(2002年)

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歴史戦争ものとして存外よく出来てきた『パトリオット』を手掛けた後、ついにエメリッヒ監督はこの映画を作り上げます。地球(北半球)を氷漬けにしてしまうという大スケールの災害の描写が注目を集め、1億2500万ドルの製作費に対して、全世界の興行収入は5億4400万ドルを突破。エメリッヒを“災害映画の第一人者”と誰もが認めざるを得ない状態になりました。

Blu-rayに収録されているオーディオコメンタリーを観てみると「日本のシーンで降っていた雹のほとんどはニセモノ」「35秒のシーンのために一面雪景色のセットを作った」「白い息のほとんどはCG」「オオカミに1匹につき100万ドルかかっている」など、製作における苦労と工夫がたっぷりと語られていました。今観ても、5番街に流された船がやってくるという荒唐無稽さ、氷漬けになったニューヨークを俯瞰して観るシーンのなど、やはり圧巻です。

一方、科学考証的にはめちゃくちゃなようで、映画の試写会に招かれた科学者グループがそのナンセンスさをむしろ楽しんでいたとか、本国のYahooレビユーで“科学的に不正確な映画トップ10”の1つとして挙げられたいたこともあったのだとか。それも含めて愛おしい作品です。

5:『紀元前1万年』(2008年)

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数あるエメリッヒ作品の中でも特にトホホ感の強い1本で、そのアイデアと話運びの凡庸さもさることながら、作中の移動距離や季節感はどうなっているんだとか、問題の解決方法も「それでええんかい!」と盛大にツッコめるなど、もはや一周回って楽しくなってくる作品です。毛の1本1本まで作り上げたというマンモスやサーベルタイガーのCG、ピラミッドを俯瞰で観た画は確かにものすごいので、それだけでも観る価値があるでしょう。

ちなみに、パッと見のルックスや物語が、2006年のメル・ギブソン監督作『アポカリプト』にそっくりだったりします。そういえば、自身の監督作『スターゲイト』の焼き直しっぽいところや、『300(スリーハンドレッド)』っぽいシーンもあったような……深くは考えないようにしましょう。

6:『2012』(2009年)

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「隕石が地球に墜落する映画はとっくの昔にある、自分も地球に宇宙人をやって来させたり、地球を氷漬けにしたりもした。それなら、もう、地球の内部からグッチョングッチョンに壊すしかないだろ!」ということで作られたのがこの『2012』です(※注:筆者の想像です)。マヤ文明の予言をベースにしているあたり、前述した『アポカリプト』にその題材で先を超されちゃったことがよっぽど悔しかったのでしょう(※注:筆者の想像です)。

製作費はついに2億ドルを超え、映画の破壊において「これ以上は絶対に無理!」なレベルのディサースターシーンがてんこ盛り。「科学的な考証などどうでもいい!」と言わんばかりに破壊の限りを尽くすので、スガスガしい気持ちでいっぱいになれるでしょう。

一方、話運びのほうは相変わらずも雑で、劇中で起こるハプニングはいちいちいい加減、ラストも「マジでそれでええんかい!」とちょっとイラつきながらツッコまざるを得ないなど、エメリッヒならではの“無神経さ”も大いに炸裂していました。

※次のページではエメリッヒ監督作でも随一の快作を紹介!

7:『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)

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『2012』という超大スペクタクルの後、エメリッヒは落ち着きを取り戻すかのように『もうひとりのシェイクスピア』という比較的小規模な作品を手がけます。続くこの『ホワイトハウス・ダウン』にいたっては、タイトルどおりほぼホワイトハウスの中だけで展開、(舞台の広さという意味での)スケールダウンが図られました。

個人的に、この『ホワイトハウス・ダウン』がエメリッヒ監督の中でも随一の快作! “テロリストに巻き込まれた男が限られた場所で奮闘する”という物語は『ダイ・ハード』らしくて燃えますし、ケレン味の効いた演出もワクワクさせてくれます。それでいて、「そこが爆発するの?」「ペンは剣より強しってそういう意味じゃねえだろ!」など、エメリッヒ印のツッコミどころがあるのもたまりません。あと、子役の女の子(主人公の娘)がカワイイ!

ちなみに、同年に公開された『エンド・オブ・ホワイトハウス』と、盛大に企画がカブってしまったりもしました。そちらは興行的に成功したにも関わらず、『ホワイトハウス・ダウン』は全米初登場4位にとどまり、やや期待はずれの結果に……なんとなく、こういう“間の悪さ”がエメリッヒ監督作にはあるような気がします。

8:『ストーンウォール』(2015年)

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実際のゲイ解放運動(に関わる暴動)を描いた映画なのですが、批評サイトRotten Tomatoesではたった10%の評価、興行的にも大惨敗をしてしまい、しばらくエメリッヒ監督のフィルモグラフィーからも抹消されていた(日本のWikipediaにもしばらく載っていなかった)ほどの黒歴史扱いをされてしまった作品です。

ここまで評価が低くなってしまったのは、ひとえに架空の人物を主人公に据えてしまったことが理由です。歴史上の事実にフィクションを組み込むのはよくあることですが、実際は黒人とトランスジェンダーたちが起こした暴動を、“誰でもない”白人が起こした、と脚色してしまうのは、不誠実さを感じてしまうのも致し方がないでしょう。なお、エメリッヒ自身はゲイであることを公言しており、自身を登場人物に投影したいがために、この主人公を作りあげたところもあるそうです。

その事実の脚色はともかく、鬱屈した日々を過ごす若者たちの青春ドラマとして、物語はまっとうに仕上がっています。周りを傷つけてばかりいる主人公にやや感情移入しにくかったり、「ここでこんなこと言うかな?」と思ってしまうセリフがあるなどの問題はありますが、若手俳優たちの熱演のおかげであまり気になりません。LGBTではない人に向けたメッセージも多分に込められていますし、ゲイに偏見を持たない妹との交流にもグッと来るものがあります。低評価を気にせずに、観てみると良いと思いますよ。

ちなみに、日本語吹替版で主人公を演じていたのは、大人気声優の梶裕貴!日本のアニメや、ボーイズラブものが好きな人にもおすすめしたいとろです。

9:『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』(2016年)

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そんなわけで、興行的な意味で『ホワイトハウス・ダウン』はやや失敗、『ストーンウォール』で大失敗をしまったエメリッヒは、進退窮まる状態になってしまいます。そんな時に持ち上がったのが、『インデペンデンス・デイ』の20年ぶりの続編という企画。エメリッヒはもともと続編を作ることが好きではなかったのだそうですが、この状況ではもう乗らざるを得なくなったのでしょうね。

出来上がった映画は、確かに20年前から格段に進化したCGをふんだんに使い、しかも宇宙船が地球の1/3をすっぽり覆うほどにデカくなるという、とてもわかりやすいスケールアップが図られました。ところが……登場人物の活躍が事務的に流れるので何の感情も湧かない、緊急時にしょうもないギャグを入れる、ツッコミどころ満載、設定がガバガバでちっともハラハラしないなど、ダメなほうのエメリッヒ節は変わっていない、いや、むしろパワーアップしていました。

画は大迫力のはずなのに、あっという間に記憶から消えさえってしまうというこの特徴は、あの『トランスフォーマー』シリーズを超えて、映画史上ナンバーワンと言っても過言ではないでしょう。

ここまで来ると、スラムダンクの安西先生のように「まるで成長していない……」と心配になる一方で、「変わらなくて良いものもあるんだな」「まるで実家のような安心感だ」と、ほっとしてしまうレベルに達します。エメリッヒ監督は、もうこれでいいんじゃないでしょうか。

まとめ:『デイ・アフター・トゥモロー』こそが一番の成功作だ!

こうしてエメリッヒの監督作品を振り返ってみると、『デイ・アフター・トゥモロー』こそが、(評価面と興行面を足して考えれば)氏の作品の中で最も成功していると言っていいのではないでしょうか。“ハリウッドの破壊王”のキャリアの全盛期に作られ、映像技術も、俳優たちの熱演も最高峰、でも作品としてはちょっと物足りない、そんなところも含めて、『デイ・アフター・トゥモロー』は愛さざるを得ない映画なのです。

ちなみに、『デイ・アフター・トゥモロー』のBlu-rayに収録されているオーディオコメンタリーを観てみると、エメリッヒ監督は「この役者が素晴らしかった!」「最高の仕事をしてくれたよ!」と脇役を含めた俳優やCGを作り上げたスタッフを褒め称えており、良い人なんだなあ……とほっこりしますよ。

おまけ:タイトルの意味は「あさって」ではなかった!

余談ですが、『デイ・アフター・トゥモロー』の製作を務めたマーク・ゴードン氏によると、タイトルは“あさって”ではなく、“運命”と“希望”という意味を込めているのだとか。また、この映画で起きることは決して未来の話ではなく、明日、あるいはあさってにでも起きるかもしれないという現実感を与えたい、という意図があったことも、このタイトルを付けた理由だったのだそうです。

エメリッヒ監督も、「本作は悲観的ではなく、希望を残している内容です。今からでも(地球温暖化問題の)現状を変えていこうとすれば、良い方向に持って行くことはできるということを伝えたい」と、その作品の志の高さを語っていました。

前述の『ストーンウォール』も、差別をされていたLGBTの人々の歴史を知ってほしい、少しでも良い方向に向かって欲しい、という彼なりの信念を感じました。いやあ……やっぱりエメリッヒ監督は良い人だなあ……これからも、大破壊をしてくれる、そしてエメリッヒ節の効いた映画を期待しています!

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(文:ヒナタカ)

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