欧州におけるポピュリズムにどう対処すべきか

欧州におけるポピュリズムにどう対処すべきか

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  • 更新日:2017/11/14
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英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのスティーブンスが、欧州のポピュリズムに対抗するためには主流の政治が不公平な現状の弁護を止め、政治家の企業家転出を止める等新たな公私の境界線を敷く「社会市場経済」が必要だと10月12日付の同紙で述べています。要旨は以下の通りです。

(iStock.com/denisik11/leolintang/3D_generator)

かつて、ソ連との核戦争の危機は永遠に続き、民主主義と市場経済は繁栄をもたらし続けると思っていた。しかし共産主義は経済失敗のために崩壊した。ソ連崩壊後の欧州は世界のモデルになった。

今の不安定な状況を一部の者は東西、南北間のパワーシフトの所為にする。しかし危険は内側にあり、欧州自身が民主主義をひっくり返すかもしれない。

何故政治に対する信頼が崩壊しているかは、世論調査の質問を見れば分かる。子供達に一層良い生活を期待することができるかとの質問に、多くの有権者はノーと答えるだろう。今まで想定してきた前進は終わってしまったのだ。

このように考えると世界は暗くなる。何故今の苦難や不正を我慢しなければならないのか。少数者だけが力と富を子供達に引き継ぐことができることになれば痛みは一層鋭くなる。かかる悲観主義への転落は循環的なものであるとの見方もある。楽観論者は経済成長と所得の増大、失業の解消により問題は是正されると考える。現にユーロ圏の成長は持ち直し失業は縮小している。グローバリゼーションとデジタル技術の恩恵が偏在的なことはリーマン・ブラザーズ問題の前からあったとの分析もある。平均賃金が停滞する一方で、金融界は1990年代以降富を増大させた。これが、移民の増大の影響と相俟って希望の代わりに怒りを喧伝するポピュリストに扉を開くことになった。

他の者は今や民主主義は独裁的な国家資本主義により滅ぼされる存亡の危機に直面していると言う。しかしこれは経験済みのことだ。戦後の欧州指導者は1930年代に市場の行き過ぎにより民主主義と市場の均衡が崩壊したことから教訓を学んだ。今日の政治家は過去の経験に学ぶべきだ。富と機会の分配がひどく不公平である現状の弁護は益々ポピュリスト達を元気づける。信頼回復のためには、今日の時代に相応しい民主主義と資本主義との間の関係を創造することが必要である。コービンのような社会主義論やルペンのような右派は答えにならない。国家社会主義は既にダメだとの結果が出ている。

公私の境界線を変えねばならない。エリート達は何時から政治家が公職の後真直ぐ企業役員室に移ることを許すようになったのか自問すべきだ。中央銀行総裁が米国の投資銀行に自分を売り込み、企業トップは自分が欲しいだけの報酬を取っている。公私の境界を引き直す一つの方法は不労利益を求めてきたビッグ・ビジネスを取り締まり、グーグルやアップル等にもっと税金を払わせ、移民により賃金が下がることを止め、職業訓練を強化することだ。

多くの欧州人は怒っている。より公平な均衡とともに政治が少なくとも自分達の側に立っているとの感覚が必要となる。それは「社会的な市場経済」だとも言えるだろう。

出 典:Philip Stephens‘How to beat populism in Europe’(Financial Times, October 12, 2017)
https://www.ft.com/content/507c084a-add6-11e7-aab9-abaa44b1e130

眼識にとんだ論評です。ポピュリズムへの対処には民主主義と資本主義(経済)の間の一層衡平な均衡が必要だと主張します。筆者は民主主義や資本主義に代わるものを求めている訳ではなく、「均衡」を求めています。ポピュリズムは世界が直面する問題ですが、この論評は多分に欧州特有の議論をしています。特にEU離脱問題で将来への展望を開けず苦悩する英国の状況が滲んでいるような気もします。なお筆者は現在ベルリンで研究中です。

筆者は公私の境界線を引き直す、いわば「社会的市場経済」が必要だと主張します。政治家が大企業に再就職すること(ブレアやシュレーダー等のことか)やグーグル等への課税が低すぎると厳しく批判しているのは興味深いです。

ポピュリズムは先進国病のようにも見えます。しかし冷戦の終了やグローバリゼーションの浸透がポピュリズムの背景にあるとすれば、今のアジアは大分状況が違います。アジアでは未だ冷戦の残滓が続きます。北朝鮮は核・ミサイル開発で地域の緊張を高め、中国は新しい覇権国として増大する力を投影し、アジアは欧州のように平和的とは言えません。しかし日本もポピュリズムに陥らないように注意していく必要があります。そのためには、①政治が国民の状況に敏感になること、②国民に将来のビジョンを与え目的の共有意識を提示すること、③雇用を大事にすることが重要ではないでしょうか。

欧州では1970年代盛んにユーロ・ペシミズムということが言われました。今欧州は多くの重要な課題を抱えていますが、悲観的に過剰反応することも良くありません。冷戦の終了とグローバリゼーションは基本的に良いことだったことに議論の余地はありません。グローバリゼーションは、例えばアフリカを少なくともマクロ的に見れば裕福にしていますし、民主主義を広めることにも成功し、政権交代はより円滑に行われるようになっています。

ポピュリズムが英国のEU離脱を押し進めました。大陸との関係1960年代やサッチャーの1980年代の昔からあった問題であり驚くべきことではありません。驚くべきは、あれ程巧みな政治力を持っていた英国が政策のマネジメントをひどく誤ったということではないでしょうか。政府の対応は冷静な判断よりも多分に衝動的でした。国民投票を武器に党内を纏めようとしたキャメロンの判断が甘かったのです。寧ろあの時保守党が分裂を選び、選挙をした方が余程英国民の長期的利益になったのではないでしょうか。フィナンシャル・タイムズ紙を始め多くの者がポピュリズムに負け悔しい思いをしていることに同情します。

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