【JR脱線事故13年】悲しみを背負った街-目撃者の現場住民も「関係者」 家の前で電車が...僧侶ら思い聞き取る

【JR脱線事故13年】悲しみを背負った街-目撃者の現場住民も「関係者」 家の前で電車が...僧侶ら思い聞き取る

  • 産経ニュース
  • 更新日:2018/04/17

平成17(2005)年4月に兵庫県尼崎市で起きたJR福知山線脱線事故を、現場の周辺住民らがどう受け止めているかを調べる聞き取り調査が進んでいる。事故を目撃したり負傷者の救助に当たったりした住民は多く、悲嘆に近い感情を抱えている人もいるという。25日で事故から13年。研究者らは「時間が経過した今だからこそ、語ることできる思いがある」と話している。

調査を行っているのは、天理医療大の助教、山本佳世子さん(37)=死生学=と同市の西正(さいしょう)寺副住職、中平了悟さん(40)。山本さんは、平成22年の上智大グリーフケア研究所の設立当初から7年間、研究員を務めた経験がある。昨年3月、中平さんが西正寺で行った社会問題を考えるイベントで講師を務めたことを機に、聞き取りを始めた。

イベントのテーマは「『街が背負う悲しみ』とそこで暮らす私たちの心」。電車が衝突した現場のマンションをどうするかが議論されていた時期だったが、当事者でないと議論に加われなかった。イベントでは現場近くの住民として事故にどう向き合っているかを改めて語り合ったという。

https://www.youtube.com/watch?v=YtoGGZocpSo

山本さんらはすでに参加者19人のうち7人から事故当時の体験や心理状態を聞き取っており、今後は対象者を増やして論文にまとめる。山本さんは「周辺住民はケアの対象者としてはこれまで見落とされがちだった」と指摘。中平さんは「遺族や負傷者に遠慮して思いを語ることができなかったが、(事故に)向き合ってきた住民がいることを知ってもらいたい」と話している。

目撃者として何ができるか

聞き取り調査に協力した団体職員の北側利彦さん(60)は、ベランダから線路を挟んで現場を見渡せるマンションの5階に住んでいる。

平成17年4月25日午前9時半ごろ、北側さんは勤務先で妻(57)からの電話を受けた。「家の前で電車が…」。呆然(ぼうぜん)とした声で事態を察し、早退した。

規制線の内側に入っていた自宅に近寄れず、やっとの思いで戻ると、信じられない光景が広がっていた。脱線車両が衝突した向かいのマンションは、金属の塊がへばりついているように見えた。

妻は、洗濯物を干しに出ていたベランダで事故の一部始終を目撃し、119番通報もしていた。ガラガラという騒音とともに折り重なる車両。次々と外に投げ出される乗客たち。ショックが強すぎた。

その日から生活は一変した。洗濯物はできるだけ部屋で干し、ベランダに出ることがなくなった。日常でもカーテンは閉ざしたまま。被害者対策を行うJR西日本の担当者がつき、今でもやりとりがある。

同じように事故を目撃したほかの住人たちはマンションから引っ越していったが、北側さん一家は残った。「目撃者として何かできることが、まだあるかもしれない」。事故から逃げたくないという妻の思いを尊重したからだ。

西正寺のイベントで、参加者にこうした話を打ち明けると、不思議と心が安らいだ。ほかにもつらい思いを胸のうちに秘めている人がいることも分かり、遺族や負傷者だけでなく、地域住民も事故を語り継いでいくべきではないかと考えるようになった。北側さんは言う。

「ほかの人たちが脱線事故のことをどう思っているのか。予期せぬ事態をどう受け止め、どんな人生の一歩を踏み出そうとしているのか。自分も知りたいし、語りたい」

【用語解説】JR福知山線脱線事故

平成17(2005)年4月25日午前9時18分ごろ、兵庫県尼崎市のJR福知山線塚口-尼崎間の急カーブで7両編成の上り快速電車が脱線し、線路脇のマンションに激突。乗客106人と運転士が死亡、562人が重軽傷を負った。遺族らの悲しみや喪失感を支える「グリーフ(悲嘆)ケア」が注目され、日本初の教育研究機関としてグリーフケア研究所が21年4月、現場近くの聖トマス大(当時)で設立された。研究所は翌22年に上智大へ移管され、東京と大阪を拠点に活動している。

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JR福知山線脱線事故の現場付近。保存・整備が進んでいる=平成30年3月、兵庫県尼崎市(本社ヘリから)

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